MOTアニュアル2024 こうふくのしま @ 東京都現代美術館

 

MOTアニュアル2024 こうふくのしま
2024年12月14日(土)-2025年3月30日(日)
東京都現代美術館 企画展示室3F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/13、2/24は開館)、年末年始(12/28-1/1)、1/14、2/25
展覧会企画:楠本愛(東京都現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2024/

 

東京都現代美術館では、現代美術の一側面を切り取り、問いかけや議論のはじまりを引き出す展覧会企画として継続的に開催してきたMOTアニュアルの第20回展として、「MOTアニュアル2024 こうふくのしま」を開催。清水裕貴、川田知志、臼井良平、庄司朝美の4名のアーティストを、その最新作とともに紹介する。

通信技術や交通手段の発達により、日々膨大な情報に否応なくさらされ、どこへでも移動しやすくなったことで、「今ここに立っている」という身体感覚を持つことが困難となる傾向が顕著になる中で、本展は、自分自身の足元が何によって形をなし、どこにつながっているのかをあらためて問う行為を通じて、私たちの身体が置かれる場への気づきを引き出し、進むべき方向を探るひとつの手だての獲得を目指す。副題にある「しま」は、4名の作家が拠点を置く「日本」の地理的条件に対する再定義を示唆。この太平洋北西部の島々を、他の陸地から切り離されて海に浮かぶ「閉じられた地形」ではなく、地殻変動を経て海上に現れた地表の起伏であり、海底では他の大陸や島と地続きに連なる「開かれた地形」として捉え直すことで、水面下での見えざるつながりを確かめるための別の視座を提示する。本展では、日本の社会が戦後その大半を失ったところから再建し、経済発展を根拠とする幸福と繁栄への道を歩み、1990年代以降は低迷と停滞が続いているといったリニアな語りにおいて、複数の要因が絡み合う対立や葛藤が、しばしば解消されないまま見落されてきた点に着目。身辺の汲みつくせない出来事や状況を個々の視点から見直し、形を与えようとするアーティストたちとともに、もつれ合う世界の複雑さをいかに引き受けるのかという問いに向き合っていく。

 


清水裕貴《大連の海岸》2024年


川田知志《築土構木》(部分)2024年 京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル「川田知志:築土構木」展示風景 撮影:来田猛

 

清水裕貴(1984年千葉県生まれ)は、水にまつわる土地の歴史や伝承のリサーチをもとに、写真とテキストを織り合わせて架空の物語を創作している。近年は、海水や藻によってネガを劣化させる手法を用いたり、テキストを読み上げる音声を取り入れたりすることで、より重層的な物語の構成を試みている。近年の主な個展に「浮上」(PGI、東京、2024)、「眠れば潮」(PURPLE、京都、2023)など。主なグループ展に「とある美術館の夏休み」(千葉市美術館、千葉、2022)、「千葉ゆかりの作家展 百年硝子の海」(千葉市民ギャラリー・いなげ/旧神谷伝兵衛稲毛別荘、千葉、2021)。主な受賞歴に2011年1_Wallグランプリ、2016年三木淳賞。2018年新潮社R18文学賞大賞を受賞し、近年は小説も発表する。本展では、写真とテキストで構成されたインスタレーションから、中国の大連と東京湾岸を舞台にした物語を発表する。

川田知志(1987年大阪府生まれ)は、伝統的なフレスコ技法を軸とする壁画の制作・解体・移設を通じて、日本社会の基盤を支える構造や仕組みとその変化を捉えようとする。近年は、陶磁や琺瑯といった素材を用いた壁画にも取り組み、公共の建築物と壁画の関係性にも関心を寄せている。近年の主な個展に「川田知志:築土構木」(京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル、京都、2024)、「彼方からの手紙」(アートコートギャラリー、大阪、2022)。主なグループ展に「味 / 処」(神奈川県民ホールギャラリー、神奈川、2023)、「ホモ・ファーベルの断片―人とものづくりの未来―」(愛知県陶磁美術館、愛知、2022)。主な受賞歴に、2019年平成30年度京都市芸術新人賞、2020年TOKYO MIDTOWN AWARD 2020準グランプリ。本展では、戦後の日本社会を特徴づける都市部と郊外の風景を主題として、全長約50メートルの壁画を制作。1月下旬まで、展示室での壁画制作を予定している。

 


臼井良平《Isle》2024年 Courtesy of the Artist and MUJIN-TO Production ©Ryohei Usui 撮影:宮島径


庄司朝美《24.8.13》2024年

 

臼井良平(1983年静岡県生まれ)は、2011年頃より、身近にあるプラスティック容器などをガラスの彫刻に置き換え、既存のものと組み合わせて構成するシリーズ「PET(Portrait of Encountered Things)」を発表している。些細な日常を切り取り、異なる空間で再現した作品は、普段は意識することのない出来事や状況に目を向ける契機となる。近年の主な個展に「路上の静物」(無人島プロダクション、東京、2022)、「Solid, State, Survivor」(無人島プロダクション、東京、2020)。主なグループ展に、「驚異の細密表現展 江戸・明治の工芸から現代アートまで」(横須賀美術館、神奈川、2024)、「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンヘ」(岐阜県現代陶芸美術館、岐阜、ほか巡回、2019-21)。本展では、日常の些細なものや状況を再現したインスタレーションを通じて、見る者に新たな視点を提示する。

庄司朝美(1988年福島県生まれ)は、半透明のアクリル板やカンヴァスを支持体に、絵の具を置いては拭き取るという行為を重ねて絵画を制作する。絵筆を介して身体の境界を拡張するように生み出されるというイメージの世界では、裸の人物、亡霊、鳥や動物といったさまざまな存在が交錯し合っている。近年の主な個展に「10月、から騒ぎ」(Semiose、パリ、2024)、「足のない歩行」(gallery21yo-j、東京、2023)。主なグループ展に「Body, Love, Gender」(Gana Art Center、ソウル、2023)、「顕神の夢」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川、ほか巡回、2023-24)。主な受賞歴に2015年トーキョーワンダーウォール賞、2019年FACE2019グランプリ。2020年令和2年度五島記念文化賞美術新人賞を受賞し、2022年にジョージアにて1年間在外研修を行なう。本展では、描くこと/見ることの身体性を強く意識させる絵画により、作品内外の世界を結びつけようと試みる。

会期中には、アーティストトークや手話通訳のプログラムなどの開催を予定。参加方法・詳細は、公式ウェブサイトにて順次公開。

 


同時開催

坂本龍一 | 音を視る 時を聴く
2024年12月21日(土)-2025年3月30日(日)
東京都現代美術館 企画展示室1F/2Fほか
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/RS/

MOTコレクション 竹林之七妍/小さな光/開館30周年記念プレ企画 イケムラレイコ マーク・マンダース  Rising Light/Frozen Moment
2024年12月14日(土)-2025年3月30日(日)
東京都現代美術館 コレクション展示室
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-241214/

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