Ho Tzu Nyen, 2024 Image courtesy of Singapore Art Museum
2025年4月23日、光州ビエンナーレ財団は2026年開催予定の第16回光州ビエンナーレのアーティスティック・ディレクターに、シンガポール出身のアーティスト、ホー・ツーニェンが就任すると発表した。
光州ビエンナーレは、1994年に5.18光州民主化運動の精神を受け継ぎ、日本からの解放である光復50周年を記念すべく、新しい文化的な価値を国際的に発信する現代美術の場として創設された(第1回の開催は1995年)。これまでにオクウィ・エンヴェゾーやマッシミリアーノ・ジオーニ、片岡真実(※複数名による共同キュレーション)、イ・スキョンなどがアーティスティック・ディレクターを務め、前回はニコラ・ブリオーを迎え、「PANSORI: A Soundscape of the 21st Century(パンソリ:21世紀のサウンドスケープ)」をテーマに掲げて開催している。
光州ビエンナーレ財団は第16回展のアーティスティック・ディレクターの選考にあたり、芸術による変革の力に焦点を当てたホー・ツーニェンの企画案を評価し、世界的な不確実性の時代に切望される原動力の喚起を目指すアプローチに光州ビエンナーレの新たな方向性を指し示す可能性を見出した。2018年の第12回展にアーティストとして参加した経験を持つホーは今回の任命を受け、アーティストではなくアーティスティック・ディレクターとして光州に再び戻ることができた喜びを表すとともに「このビエンナーレは、過去20年間にわたり私を鼓舞し突き動かしてきたエネルギーや命題、実践、アイディアを結集したものになります。それは芸術的変容の実践と光州の民主的な変革の遺産をいかに共鳴させるかを探究する機会となるでしょう。単一のメッセージを伝えるのではなく、私たち全員が共有し形作る変革のための複数の命題を生み出すことを目指していきます」と抱負を語った。
ホー・ツーニェン(1976年シンガポール生まれ)は、既存の映像、映画、アーカイブ資料など幅広い映像資料や文献を参照、再編成することで東南アジアの地政学を織りなす力学や歴史的言説の複層性を抽象的かつ想起的に描き出してきた。2011年には第54回ヴェネツィア・ビエンナーレのシンガポール館の代表を務め、その後も第10回上海ビエンナーレ(2014)、シャルジャ・ビエンナーレ14(2019)など数々の国際展に参加。2023年にはシンガポール美術館で大規模回顧展「Time & the Tiger」を開催。現在、ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM]にて同名の個展を開催している。日本国内でも第3回福岡アジア美術トリエンナーレ(2005)をはじめ、キャリア初期より現在に至るまで数多くの展覧会に参加。近年はあいちトリエンナーレ2019、「ヴォイス・オブ・ヴォイド−虚無の声」(山口情報芸術センター[YCAM]、2021)、「百鬼夜行」(豊田市美術館、愛知、2021)、「エージェントのA」(東京都現代美術館、2024)などで立て続けに印象的な仕事を残している。また、2019年に国立台湾美術館で開かれた第7回アジア・アート・ビエンナーレでは、シュウ・ジャウェイ[許家維]とともに共同キュレーションを手がけ、アジアをめぐる探究を自身の制作を通じて繰り返し扱ってきた複数のテーマと密接に結びつく地理的枠組みを通して試みた経験を持つ。
光州ビエンナーレ:https://gwangjubiennale.org/