アートバーゼル香港2025


Lu Yang, DOKU the Creator (2025) Courtesy of the artist and de Sarthe

 

2025年3月28日から30日の3日間にわたり、世界42カ国・地域から240軒のギャラリーが参加するアジア屈指のアートフェア「アートバーゼル香港」が香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催する(内覧会は26日、27日)。

M+のファサードに大々的に投影されるアートバーゼルとM+との共同委嘱作品(提供:UBS)を担当するのは、昨年の東京都現代美術館での個展も記憶に新しいホー・ツーニェン。AIによる映像の再構成とアルゴリズムを用いたリアルタイムの編集プロセスを通じて、香港映画史を新たな文脈で紡ぎ直す新作《Night Charades》を発表する(M+では同作の発表に合わせて、ホーの過去作の上映プログラムを3月に開催予定)。さらに本年度は「ディスカバリー」部門に新進アーティストの支援を目的とするMGMディスカバリーズ・アートプライズが新設。賞金5万米ドル(アーティストと出展ギャラリーで分配)とマカオでの展示機会が提供される同賞の最終候補には、P21(ロンドン)から出品するシン・ミン、Sweetwater(ベルリン)から出品するカエデ・オジョ、Tarq(ムンバイ)から出品するサジュ・クンハンが挙げられている。

 


Katsumi Nakai, Untitled (1982-84) Courtesy of Ronchini


Mohamed Ahmed Ibrahim, My Garden’s Details No. 1 (2021) Courtesy of the artist and Lawrie Shabibi

 

アートフェアの核となる「ギャラリー(Galleries)」部門には、世界各地から194軒のギャラリーが参加。なかでも、Ronchini Gallery(ロンドン)は大阪からミラノに移り、東西の感性が融合した表現を展開した中井克巳、Lawrie Shabibi(ドバイ)がアラブ首長国連邦の前衛芸術を代表するモハメド・アハメド・イブラヒム、Rossi & Rossi(香港)が公共彫刻をはじめとする多彩な表現で知られたイラン出身のアメリカ人彫刻家のシア・アルマジャニ、P420(ボローニャ)が文字とドローイングの関係性を半世紀近くにわたって探究したドイツ系イタリア人アーティストのイルマ・ブランクを、それぞれ個展形式で発表するとして注目が集まる。また、共同出展で参加するAlmeida & Dale Galeria de ArteとMillan(ともにサンパウロ)は、アジアとブラジルの人々の移動と文化交流をテーマに、マナブ間部ミカ・タカハシタカシ・フクシマ大竹富江ら日系ブラジル人アーティストの作品を特集。日本からはANOMALY、オオタファインアーツ、カイカイキキギャラリー、KOTARO NUKAGA、小山登美夫ギャラリー、思文閣、シュウゴアーツ、SCAI THE BATHHOUSE、タカ・イシイギャラリー、Take Ninagawa、東京画廊+BTAP、NANZUKA、日動画廊、MAHO KUBOTA GALLERY、MISAKO & ROSEN、ミヅマアートギャラリー、TARO NASU、ユミコチバアソシエイツなどが参加する。

 


Irma Blank, Ur-schrift ovvero Avant-testo 23-10-01 (2001) Courtesy: Irma Blank Estate and P420, Bologna Photo: Carlo Favero


Sin Wai Kin, Asleep (2024) Courtesy of artist, Accelerator, and Blindspot Gallery Photo credit: Jean-Baptiste Béranger

 

新進アーティストの個展形式を条件とする「ディスカバリー(Discoveries)」部門には、10年以内に設立された比較的新しいギャラリーを中心に22軒が参加。MGMディスカバリーズ・アートプライズにノミネートされた3軒のほか、スン・テウが新作インスタレーションを出品するEmalin(ロンドン)、ハナ・ミレティッチが新作の手織りのテキスタイル作品を出品するLambdaLambdaLambda(プリシュティナ)、ナ・ミラがテレサ・ハッキョン・チャのアーカイブとコラボレーションした作品を発表するPark View / Paul Soto(ロサンゼルス、ニューヨーク)などが参加する。

アートバーゼル香港の特色のひとつであるアジア太平洋地域にテーマを合わせた「インサイト(Insights)」部門には24軒が参加。Each Modern(台北)が中平卓馬、Takuro Someya Contemporary Artが山中信夫、Yutaka Kikutake Galleryが杉浦邦恵、Flowers Gallery(ロンドン、香港)が中国の急速な社会変化を写真で捉えたアーティストデュオのバードヘッドを紹介するなど、複数のギャラリーが1970年代以降のアジアにおける写真表現をテーマに展示内容を構成する。同部門には、√K Contemporary、Yoshiaki Inoue Gallery、KOSAKU KANECHIKA、YOD Galleryも参加する。

各ギャラリーがメインブース内でアジア太平洋地域やアジア・ディアスポラをテーマとした展示に取り組む「キャビネット(Kabinett)」部門には36軒が参加。東京画廊+BTAPは近藤高弘、小山登美夫ギャラリーが南谷理加の個展形式で出展。また、Crèvecœur(パリ)からは出津京子、Annely Juda Fine Art(ロンドン)からは山口勝弘大辻清司北代省三斎藤義重の作品の出品が予定されている。

 


Sung Tieu, The Opposite of Good is Good Intentions (The End One) (2024) Courtesy the artist; Emalin, London; Sfeir-Semler Hamburg/Beirut und Trautwein Herleth, Berlin Photo by Philipp Ottendörfer


Kayode Ojo, Black Tongue New Year’s Eve (New York) (2024) Courtesy of the artist and Sweetwater, Berlin


Nakahira Takuma, Untitled (1968–70/2024) Courtesy of Each Modern © Gen Nakahira

 

通常のブースに収まらない大型の作品に特化した「エンカウンター(Encounters)」部門は、キュレーションをアレクシィー・グラス・カントワーが担当し、「As the World Turns」のテーマの下、4つのプラットフォームで14点の新作を含む18点の作品を発表する。3Dモデリングやモーション・キャプチャーなどを駆使した映像作品で知られるルー・ヤン(de SartheがCOMAとの共同出展)はポップアップストアを開店。SCAI THE BATHHOUSEからヴァジコ・チャッキアーニ、MISAKO & ROSEN(The Boxとの共同出展)から廣直高が出品予定。ショッピングモール「パシフィック・プレイス」のオフサイト展示では、モンスター・チェットウィン(Galerie Gregor Staiger、Massimodecarlo、Sadie Coles HQからの共同出展)が彫刻とパフォーマンスを組み合わせた作品を発表する。

香港コンベンション&エキシビションセンターで一般に無料公開される「フィルム(Film)」部門は、地元美術機関のパラサイト(Para Site)がプログラムを構成。イザドラ・ネヴェス・マルケス(Umberto di Marinoより出展)の《Vampires in Space》(2022)に着想した「In Space, It’s Always Night」をテーマに、30名のアーティストの映像作品を7つのスクリーンで上映する。

また同時期の香港では、ピカソ美術館所蔵の60点以上のピカソ作品をM+所蔵のアジア系アーティストの作品とともに紹介するM+の「Picasso for Asia – Conversation」をはじめ、数々の展覧会が開かれる。同じくM+では、リー・ミンウェイの個展、森村泰昌シンディ・シャーマンの二人展なども開催。大館(タイ・クゥン)では、アリシア・クワデフ・シャオユアン[胡晓媛]、メーヴ・ブレナンの個展、アジア・ソサエティ香港センターでは、20代半ばで中国を離れ、台湾、ブラジル、スペインを経た後に30年近くパリを拠点に活動した女性画家フー・モジョン[賀慕群]の回顧展がそれぞれ開かれる。また、香港芸術館ではピエール゠オーギュスト・ルノワールポール・セザンヌに焦点を当てた展覧会(三菱一号館美術館に巡回)と同時に、「香港アートダイアローグ・シリーズ」の枠組みでトレヴァー・ヤンがセザンヌ作品に応答した作品を発表する。そのほか、パラサイトでは「How to be Happy Together?」と「So Wing Po: Para Site 10F Annex Commission」、CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)では「Lining Revealed – A Journey Through Folk Wisdom and Contemporary Vision」、アジア・アート・アーカイブでは「In Our Own Backyard」を開催する。

 

アートバーゼル香港2025https://www.artbasel.com/hong-kong

 


Naotaka Hiro, The Swimmer (2024) Courtesy of artist and Misako & Rosen

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