2024年9月7日より、アーティスティック・ディレクターにニコラ・ブリオーを迎え、「PANSORI: A Soundscape of the 21st Century(パンソリ:21世紀のサウンドスケープ)」をテーマに掲げる第15回光州ビエンナーレが光州ビエンナーレホールを中心に市内各所にて開幕する。
アジア有数の国際展として知られる光州ビエンナーレは、1995年に5.18光州民主化運動の精神を受け継ぎ、新しい文化的な価値を国際的に発信する現代美術の場として設立された。これまでにオクウィ・エンヴェゾーやマッシミリアーノ・ジオーニ、マリア・リンドらがキュレーションを手がけ、前回のアーティスティック・ディレクターのイ・スッキョンは、現在開催中の第60回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館での毛利悠子の個展に同館初の国外出身キュレーターに抜擢されている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて、2020年に開催予定だった第13回展を2021年に延期して以来、奇数年の開催が続いたが、今回より再び偶数年の開催となり、同じく韓国を代表する国際展である釜山ビエンナーレとの同年開催に戻った。
30周年の記念すべき今回のビエンナーレ「PANSORI: A Soundscape of the 21st Century」は、30カ国から72人/組のアーティストが参加し、個人住宅から地球全域まで、私たちが暮らす「空間」に焦点を当て、現代社会の複雑さを描き出していく。また、ランドスケープ(風景)はサウンドスケープでもあるという考えの下、音楽を含む聴覚的なものと視覚的なものとを繋ぐ物語の構築を目指す。17世紀に遡る朝鮮の伝統的な口唱芸能「パンソリ」を、「パン(場、広場)」に鳴る「ソリ(音、声、謡)」、音と空間の関係性を象徴するもの、従属的立場にある者の声が現れる空間として捉えることで、身のまわりに存在するさまざまな生体との対話を通じて「空間」を探究するアーティストの実践とともに、パンソリの精神の再創造を試みる。
メイン会場となる光州ビエンナーレホールには、「ラーセン効果(フィードバック効果)」「ポリフォニー」「プライモーディアル・サウンド(原始音)」という音の現象を参照した3つのセクションが設けられる。最初の「ラーセン効果(フィードバック効果)」では、あらゆるものが隣接性、伝染性、即時性を持つ反響室(エコーチャンバー)となった惑星を取り上げる。そこでは世界が人類の活動で飽和することにより、人間と人間、種と種の関係がますます濃密になっていく。続く「ポリフォニー」では、複雑性に着目し、私たちが多焦点かつ多層的な世界に暮らしていることを認めることで、世界を複数の声がそれぞれ独立に動きながら、全体としてのまとまりを形成するものとして認識していく。そして、「プライモーディアル・サウンド(原始音)」では、宇宙と分子の世界という広大な非人間的世界を探究する。そのほか、メイン会場以外にも光州市内の文化施設、オルタナティブ・アートスペース、公共空間、カフェ、公園、店舗など、さまざまな会場でアートプロジェクトを展開予定。
また、2018年に国内外の美術機関とのネットワークの拡張、形成を目的に新しい試みとして始まったパビリオン・プロジェクトには、31のパビリオンが参加。初参加となる日本パビリオンは、福岡市/Fukuoka Art Next(FaN)の主催の下、批評家で文化研究者の山本浩貴がキュレーターを務め、「私たちには(まだ)記憶すべきことがある」を展覧会タイトルに、内海昭子(会場:Culture Hotel LAAM)と、山内光枝(会場:Gallery Hyeyum)が作品を発表する(会場マップは公式ウェブサイトのこちらのページを参照)。
なお、光州ビエンナーレ財団は30周年を記念した展覧会「Madang: Where We Become Us」を今年4月よりヴェネツィアでビエンナーレ関連企画として開催している。同展では、ナムジュン・パイク、カチョー(アレクシス・レイバ・マチャド)、キム・アヨン、チョン・ソジョン、シルビー・キムの作品を紹介している。
第15回光州ビエンナーレ
「PANSORI, A Soundscape of the 21st Century」
2024年9月7日(土)-12月1日(日)
光州ビエンナーレホール、市内各所
https://www.15gwangjubiennale.com/
アーティスティック・ディレクター:ニコラ・ブリオー
参加アーティスト
サーダン・アフィフ|Saâdane Afif
ハシーブ・アーメド|Haseeb Ahmed
デニズ・アクタシュ|Deniz Aktaş
ノエル・W・アンダーソン|Noel W. Anderson
アンドリウス・アルチュニアン|Andrius Arutiunian
ケヴィン・ビーズリー|Kevin Beasley
ウェンディマゲン・ベレテ|Wendimagegn Belete
ビアンカ・ボンディ|Bianca Bondi
ドラ・ブドール|Dora Budor
ピーター・ブヘンハウト|Peter Buggenhout
アンジェラ・ブロック|Angela Bulloch
アレックス・セルヴェニー|Alex Cerveny
チェン・シンハオ|Cheng Xinhao
チェ・ハヌル|Choi Haneyl
ガエル・ショワンヌ|Gaëlle Choisne
アンナ・コンウェイ|Anna Conway
ビンタ・ディアウ|Binta Diaw
ジョン・ダウェル|John Dowell
ヘイデン・ダナム|Hayden Dunham
リアム・ギリック|Liam Gillick
ロリス・グレオー|Loris Gréaud
マティアス・グローベル|Matthias Groebel
マシュー・アンジェロ・ハリソン|Matthew Angelo Harrison
マルゲリータ・ユモー|Marguerite Humeau
アガタ・インガルデン|Agata Ingarden
チョン・ヘジュ|Hye Joo Jun
チョン・ヒョンサン|Jun Hyoung San
キム・ヒョンスク|Kim Hyeong Suk
キム・ジャイ|Kim Jayi
キム・ヨンウン|YoungEun Kim
ドミニク・ノウルズ|Dominique Knowles
アニエシュカ・クラント|Agnieszka Kurant
クォン・へウォン|Hyewon Kwon
ネッタ・ラウファー|Netta Laufer
ブリアナ・レザーバリー|Brianna Leatherbury
イ・イェリン|Yein Lee
オスワルド・マシア|Oswaldo Maciá
ミラ・マン|Mira Mann
シンシア・マルセレ|Cinthia Marcelle
ウラジスラフ・マルコフ|Vladislav Markov
ボー・メンデス|Beaux Mendes
ミリアム・ミヒンドゥ|Myriam Mihindou
ナ・ミラ|Na Mira
サーディア・ミルザ|Saadia Mirza
デイヴィッド・ヌーナン|David Noonan
カーチャ・ノヴィスコーワ|Katja Novitskova
ジョゼファ・チャム|Josèfa Ntjam
エメカ・オグボウ|Emeka Ogboh
フリーダ・オルパボ|Frida Orupabo
リディア・ウラメン|Lydia Ourahmane
パク・ミミ|Mimi Park
フィリップ・パレーノ|Philippe Parreno
アモル・K・パティル|Amol K. Patil
ハリソン・ピアース|Harrison Pearce
ルーシー・レイヴン|Lucy Raven
タビタ・レザール|Tabita Rezaire
マリナ・ラインガンツ|Marina Rheingantz
マリナ・ローゼンフェルド|Marina Rosenfeld
マックス・フーパー・シュナイダー|Max Hooper Schneider
フランク・スキュルティ|Franck Scurti
ジュラ・シュスト|Jura Shust
ソン・スミン|Soomin Shon
ソフィア・スキダン|Sofya Skidan
アナスタシア・ソスノーヴァ|Anastasia Sosunova
ヤコブ・クスク・スティーンスン|Jakob Kudsk Steensen
スン・テウ|Sung Tieu
ジュリアン・エイブラハム・“トガー”|Julian Abraham “Togar”
アンメイク・ラボ|Unmake Lab
ユーヤン・ワン|Yuyan Wang
アンベラ・ウェルマン|Ambera Wellmann
キャンディス・ウィリアムス|Kandis Williams
フィリップ・ザッハ|Phillip Zach
過去10年のテーマとキュレーター
2023年(第14回)「soft and weak like water」
イ・スキョン
2021年(第13回)「Minds Rising, Spirits Tuning」
デフネ・アヤス、ナターシャ・ギンワラ
2018年(第12回)「Imagined Borders」
クララ・キム、 クリッティヤー・カーウィーウォン、クリスティン・キム、リタ・ゴンザレス、ヨン・シム・チョン、イーワン・クーン、 デイヴィッド・テ、 マンソク・キム、ソンウ・キム、ジョンオク・ペク、 ムン・ボム・ガン
2016年(第11回)「The Eighth Climate (What does art do?)」
マリア・リンド
2014年(第10回)「Burning Down The House」
ジェシカ・モーガン