光州ビエンナーレ2020のテーマが決定


Sketch for Gwangju Biennale 2020, Graphic Identity WORKS Seoul

 

2019年9月28日、光州ビエンナーレ財団は来年9月に開幕する光州ビエンナーレ2020のテーマと、参加アーティストの一部を発表した。アーティスティックディレクターのデフネ・アヤスとナターシャ・ギンワラが掲げるテーマは「Minds Rising, Spirits Tuning」の下、既に複数の参加アーティストが光州を訪れ、新作のリサーチをはじめている。

1995年に5.18光州民主化運動の精神を受け継ぎ、新しい文化的な価値を国際的に発信する現代美術の場として設立された光州ビエンナーレ。2015年には文化複合施設、光州国立アジア文化殿堂(ACC)が開館し、前々回より光州市ビエンナーレホールとともに主要会場のひとつとなっている。2017年にキム・ソンジョンがビエンナーレ財団理事長に就任し、ビエンナーレによる新作委託(GBコミッション)や国外の美術機関と連携(パビリオン・プロジェクト)といった新たな試みを展開している。専門を異にする11名のキュレーターが、個別に7つの展示を企画した前回と異なり、13回目となる光州ビエンナーレはデフネ・アヤスとナターシャ・ギンワラのふたりのアーティスティックディレクターが指揮をとる。さまざまな地域でその歴史や状況を見つめ直す複合的な文脈や領域横断的な枠組みから成る挑戦的な企画を手がけてきたアヤスとギンワラは、支配的な技術体系や西洋的思考に基づく技術の語彙に留まることなく、正統的ではない系譜をもさかのぼり、複数の起源や影響を肯定的に仮定することで、複数であること(プルーラリティ)の優位性を追求し、「超知性」が頻繁に議論される時代に、「마음(こころ)」とはどうあり得るのかを検討していく。

デフネ・アヤス(1976年イスタンブール生まれ)は、オランダ、中国、アメリカ合衆国、ロシアなどの文化機関や研究構想におけるディレクターやキュレーターを歴任し、現在はモスクワのV-A-C財団のキュレーターを務めている。代表的なキャリアとしては、2012年から2017年まで、ロッテルダムのヴィット・デ・ウィットのディレクターを務め、アリ・ベンジャミン・マイヤーズ、エリック・ボードレールなどとの野心的なプロジェクトや、パオラ・ピヴィやチウ・ジージェ、AAブロンソンとの長期的なプロジェクトで高い評価を受け、昨年、その活動をまとめた『Blessing and Transgressing: A Live Institute (2012–2017)』が出版された。2015年には第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ・トルコ館のキュレーターとしてサルキスの個展を企画。そのほか、中国とその他のアジア地域をリサーチし、展覧会企画や舞台制作を手がけるNPO「Arthub Asia」や、オスマン帝国時代のリサーチを手がける「Blind Dates Project」の設立に携わり、ニューヨークのパフォーマにも創設キュレーターのひとりとして関わっている。また、2010年の第8回光州ビエンナーレでは出版アドバイザーも務めている。

ナターシャ・ギンワラ(1985年アフマダーバード生まれ)は、数々の国際展のキュレーションに携わると同時に、数々の媒体で現代美術や視覚文化に関わる文章を発表し、現在はベルリンのグロピウス・バウのアソシエイト・キュレーターを務めている。2017年にはキュラトリアル・アドバイザーとして、ドクメンタ14のキュラトリアルチームに参加し、関連出版物『South as a State of Mind』にも寄稿した。また、2019年のスリランカのコロンボスコープではアーティスティックディレクター、2017年のベルギー、メッヘレンのコントゥール・ビエンナーレ8ではキュレーター、2014年の第8回ベルリン・ビエンナーレではアーティスティックチームの一員を務めている。そのほか、『Hello World. Revising a Collection』(ハンブルガー・バーンホフ現代美術館、2018)、『Riots: Slow Cancellation of the Future』(ifa Gallery、ベルリン、シュトゥットガルト、2018)、『Corruption: Everybody Knows…』(e-flux、2015)、第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ関連企画『My East is Your West』(2015)、などを企画。また、「リズム」をテーマに展開するプロジェクト「The Museum of Rhythm」を、台北ビエンナーレ2012、ポーランド国立ウッチ美術館(2016)に出品している。

また、光州ビエンナーレが前回より国際的なネットワークを構築する目的ではじめたパビリオン・プロジェクトには、現在のところ、ポーランドのアダム・ミツキェーヴィチ研究所、台湾のC-LAB、オーストラリアのアートスペース、オランダのライクスアカデミー、ベルギーのGluonの参加が決定している。ビエンナーレ開催期間に、各国美術機関が自国や韓国を拠点とするアーティストによるサテライト展を企画し、異文化間での交流や討論を生み出す場を、光州市内の歴史的、文化的ロケーションを会場に展開する。

 

光州ビエンナーレhttps://gwangjubiennale.org/

光州ビエンナーレ2020「Minds Rising, Spirits Tuning」
2020年9月4日(金)-11月29日(日)
https://gwangjubiennale.org/
アーティスティックディレクター:デフネ・アヤス
ナターシャ・ギンワラ

 


 

参加アーティストリスト(第1弾発表分のみ)
パシタ・アバド|Pacita Abad
コラクリット・アルナーノンチャイ|Korakrit Arunanondchai
セシリア・ベンゴレア|Cecilia Bengolea
チェン・インルー[陳瀅如]|Yin-Ju Chen
チョウ・ヒュンテク|Hyuntaek Cho
ヴァギナル・デイヴィス|Vaginal Davis
パトリシア・ドミンゲス|Patricia Domínguez
シアン・デイリット|Cian Dayrit
ジョン・ジェラード|John Gerrard
ソニア・ゴメス|Sonia Gomes
トラジャル・ハレル|Trajal Harrell
リン・ハーシュマン・リーソン|Lynn Hershman Leeson
ゴズデ・イルキン|Gözde Ilkin
サンドン・キム|Sangdon Kim
シルビー・キム|Sylbee Kim
リリアン・レイン|Liliane Lijn
キャンディス・リン|Candice Lin
エモ・デ・メデイロス|Emo de Medeiros
アナ・マリア・ミラン|Ana María Millán
キラ・ノヴァ|Kira Nova
フェルナンド・パルマ・ロドリゲス|Fernando Palma Rodríguez
オウティ・ピエスキ|Outi Pieski
アンジェロ・プレッサス|Angelo Plessas
ガラ・ポラス・キム|Gala Porras-Kim
ジュディ・ラドゥル|Judy Radul
サヘジ・ラハール|Sahej Rahal
ジェイコルビ・サッターホワイト|Jacolby Satterwhite
アレクサンドラ・スハレヴァ|Alexandra Sukhareva
シセル・トラース|Sissel Tolaas
セシリア・ビクーニャ|Cecilia Vicuña
シェン・シン|Shen Xin

 


 

過去のテーマとキュレーター

2018年(第12回)「Imagined Borders」
クララ・キム「Imagined Nations / Modern Utopias」
クリッティヤー・カーウィーウォン「Facing Phantom Borders」
クリスティン・キム、リタ・ゴンザレス「Art and the Global Post-Internet Condition」
ヨン・シム・チョン、イーワン・クーン「Faultlines」
デイヴィッド・テ「Returns」
マンソク・キム、ソンウ・キム、ジョンオク・ペク「The Art of Survival: Assembly, Sustainability, Shift」
ムン・ボム・ガン「North Korean Art: Paradoxical Realism」
2016年(第11回)「The Eighth Climate (What does art do?)」
マリア・リンド
2014年(第10回)「Burning Down The House」
ジェシカ・モーガン
2012年(第9回)「ROUNDTABLE」
ナンシー・アダジャニア、ワッサン・アル=クダイリ、片岡真実、キム・ソンジョン、キャロル・インファ・ルー、アリア・スワスティカ
2010年(第8回)「10,000 LIVES」
マッシミリアーノ・ジオーニ
2008年(第7回)「On the Road / Position Papers / Insertions」
オクウィ・エンヴェゾー(共同キュレーター:キム・ヒュンジン、ランジット・ホスコテ)
2006年(第6回)「Fever Variations」
キム・ホンヒ(チーフ・キュレーター:ウー・ホン、チーフ・プログラマー:キム・サンユン)
2004年(第5回)「A Grain of Dust A Drop of Water」
イ・ヨンウ(共同キュレーター:ケリー・ブロアー、チャン・ソクウォン)
2002年(第4回)「P_A_U_S_E」
共同キュレーター:チャールズ・エッシュ、ホウ・ハンルゥ、ソン・ワンギョン
2000年(第3回)「Man and Space」
キュレーター:オ・グァンス
1997年(第2回)「Unmapping the Earth」
イ・ヨンチュル
1995年(第1回)「Beyond Borders」
イ・ヨンウ

Copyrighted Image