レポート:「Audio Base Camp #1 はじめてのガチ聴き」

▼「Audio Base Camp #1 はじめてのガチ聴き」終了!
9月2日(金)から4日(日)にかけて「Audio Base Camp #1 はじめてのガチ聴き」が開催され、全日程が終了しました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。
御手洗優
本イベントは、アーティストでサウンドエンジニアの大城真を監修に迎え、国内でも最高レベルの音響環境と言われるYCAMのスタジオAに、ライブ・コンサート向けの大規模かつ高品質なスピーカーをセッティングし、特定のテーマに沿った録音物を楽しむリスニングイベンで、今回が初の開催となりました。インターミッションでは、DJによるパフォーマンスもホワイエで行われ、多くの人たちが音楽を楽しむ様子が見られました。
御手洗優
初日の9月2日は「民謡をたずねて~山口篇」と題し、DJユニット俚謡山脈が民謡の魅力や山口の民謡「男なら」や「平家踊」などをはじめとする、さまざまな地域の民謡の音源を実際にながしながら紹介していきました。「踊るだけでなく、音楽としても聴いてほしい、そういう意味で本イベントのタイトル”ガチ聴き”はぴったりだ」と語り、民謡をDJするようになったきっかけや、民謡をアーカイヴした先人たち、書籍についても紹介しました。
俚謡山脈
その後、坂田律子によるオートバイの排気音、pianolarecords店主でconatalaレーベルを主宰する國友洋平による初期の電子音楽や民族音楽、フィールドレコーディングなどのミックス、谷内栄樹によるムード音楽やジャズ・コーラス、アジアンポップスなどがDJされていきました。観客は、スピーカーの前に佇んだり、寝転んだり、場内を歩きまわったりと、それぞれのスタイルで音に没入していきました。

2日目の9月3日は、音楽・出版レーベルを主宰し、店舗なども経営する田口史人による「レコード寄席 ビニール盤事始」からはじまりました。観客は田口の地声が聴こえる範囲に座り、そこで語られていくレコードの歴史や文化、ポータブル・プレイヤーやスタジオに設置された高性能なスピーカーに耳を傾けました。
田口史人
そして、音楽プロデューサーでエンジニアの日永田広による「『音の始原を求めて〜NHK電子音楽スタジオ作品集』から学ぶこと—作曲者とエンジニアの役割分担」。日永田は、NHK電子音楽スタジオのエンジニアの仕事を掘り起こしています。その中の黛敏郎作曲「オリンピック・カンパノロジー」をはじめとする、数々の傑作を大音量でながしながら、同スタジオの制作背景を解説していきました。
日永田広
その後の、大分のRA’S DEN RECORDSオーナーの御手洗優によるエチオピアのレコードによるDJ、DJ威力による衝撃のパフォーマンスでは、独自の世界観に観客は心酔し、俚謡山脈による爆音の民謡によるDJでは、聞き入る人も踊る人もそれぞれがその時間と空間を堪能しました。
俚謡山脈
最終日の9月4日は、民俗祭祀採音者/エッセイストの宮里千里が「琉球弧の祭祀と神謡」と題し、宮里が、70年代のはじめから奄美諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島で構成される琉球弧を巡って録音し、これまでに集めてきた沢山の民俗祭祀の音の記録の一端を観客に公開しながら、祭祀の解説や録音時のエピソードを語りました。
宮里千里
1992年からフィールド・レコーディングによるインスタレーション作品を多数発表してきたアーティスト、角田俊也による「フィールド録音から見えてきたこと」では、角田がフィールド・レコーディングをはじめたきっかけを語り、「録音する対象は、出会った時に気になったものだ」と続けました。そして、浮標の空気震動の音、公園に置かれたボトルなど、録音した場所や物の写真を交えて作品について解説しました。
最後のセクション「リスニングスタイルのDJとは?」では、今回パフォーマンスしたDJたちによる座談会が行われました。本イベントの監修を勤めた大城真は企画意図として、「音を深く聞く」というコンセプトがあったと語ります。参加したDJたちはレコードを買うときの基準や本イベントの感想などを語ったり、今回かけそびれたレコードなどかけるといったような試みを行いました。
向かって左から大城真、谷内栄樹、坂田律子、國友洋平、御手洗優
YCAMでは今後もサウンドインスタレーション作品の展示や、コンサートなどのイベントを開催していく予定ですので、ぜひご期待ください。
写真撮影:谷康弘

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