ゲルハルト・リヒター「PATH」

ゲルハルト・リヒター Gerhard Richter

PATH

2019年4月20日 – 6月1日

 

 

《PATH》[Editions CR: 176], 2018, pigment print with scratches, 23 x 15 cm(image), 33.5 x 25.5 cm(frame), ed. 19/25 (c) Gerhard Richter , courtesy of WAKO WORKS OF ART

 

 

 

ワコウ・ワークス・オブ・アートではこの度、2019年4月20日(土)から6月1日(土)まで、60年に渡り現代美術界を牽引し続けるドイツ人作家ゲルハルト・リヒターの、新作エディション作品と大型のガラス立体作品による、2年ぶり11度目の個展『PATH』を開催いたします。

 

本展の中心となるのは、世界初公開となる25点の最新エディション作品《PATH》(2018)です。インクジェット写真の上に、ひっかき傷によるスクラッチ痕を施したこの作品は、作家とギャラリーとの四半世紀に渡る関係が契機となり制作されたものです。初めてリヒターが日本で個展を開いた1993年(ゲルハルト・リヒター展、ワコウ・ワークス・オブ・アート)から、数えて25年となった2018年に、全25点のエディション作品として制作されました。本展ではドイツに残した1点を除く、24点を一挙に展示いたします。1960年代から油彩画を中心に制作活動を開始したリヒターは、その活動初期である1965年に最初のエディション作品《dog》を発表し、以来、最新作の本作に至るまで176シリーズのエディション作品を発表しています。

 

《PATH》は、すべて同じ風景写真を印刷した25点のインクジェットプリントの上に、1点ごとに異なるストロークでスクラッチ痕を施した、ユニークエディション作品です。ベースとなるのは、作家がイタリア北部にある保養地マッジョーレ湖の湖畔で撮影した、森の小径の風景写真です。

インクジェットプリントを引っ掻くという制作方法は、エディション以外の作品も含め、リヒターの制作史上、本作で初めて用いられる表現です。美しい緑の風景を印刷した顔料インクの下から、ひっかき傷を介して、支持体の素材そのものとまっさらな白さが表出し、イメージの存在のあり方を問いかけ始めます。

油彩画作品の中では、これまでも絵の具を削ぐ・削るといった手法が繰り返し試みられてきました。特に近年、2014年以降のアブストラクト・ペインティングでは、細い切っ先で絵の具を削り、カンバスを暴き出すという作業は顕著に用いられています。

また、イメージやその再現を問いかける事のできる写真、そして表象の歴史と関係の深い風景というふたつの主題は、作家にとって重要なモチーフであり続けてきました。

このように、《PATH》はエディションでありながらもペインティング作品との関連性が色濃い作品です。リヒターが生涯に渡り追求するイメージそのものへの問いかけが、インクジェットプリントの上、紙と顔料インクという新しい関係性の中で実践されています。

 

また本展では同じ展示空間で、2012年の当画廊での個展『New strip paintings and 8 glass panels』で発表した大型のガラス立体作品《8 Glass Panels》(2012)を特別再展示いたします。光を反射しそして透過させるガラスという素材は、写真と同様に、イメージの実態を問う手がかりのひとつとして、リヒターの中で重要な素材として扱われて来ました。周囲に展示されるインクジェットプリントと、ガラス作品の関係を介して、イメージの表出と消失という複合的な問いかけが、空間の中で可視化されます。

 

60年に渡る制作活動を経て今もなお、ゲルハルト・リヒターが追求する最新のイメージ/仮象のあり方を、是非この機会にご高覧下さい。併せて、会場と公式オンラインストアにて、《PATH》全25点と日本未公開のアーティストプルーフ7点の図版を掲載した、展覧会カタログ「Gerhard Richter PATH」を発売いたします。

 

※展示点数などは事前に予告なく変更となる場合がございます。ご了承下さい。
※日月祝は休廊日にあたります。大型連休中は休廊日にあたりますので、ご来廊の際はご注意下さい。

 

ゲルハルト・リヒター Gerhard Richter

1932年ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ。ケルン在住。東ドイツで美術教育を受けたが、西ドイツ旅行中に出会った抽象表現主義に強い影響を受け、ベルリンの壁ができる半年前にデュッセルドルフへ移住。1964年にミュンヘンとデュッセルドルフで初の個展を開催し、1972年のヴェネチア・ビエンナーレを皮切りに、ドクメンタ(5、7、8、9、10)等、多数の国際展に参加。1997年、第47回ヴェニス・ビエンナーレ金獅子賞を受賞。同年、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。近年では、2011年から2012年にかけ、ロンドン、ベルリン、パリで大回顧展を開催。2013年、ミュンヘンのレンバッハハウスで「アトラス」展開催。2014年、スイスのバイエラー財団美術館の個展ではみずからが展示構成をおこない、高い評価を受けた。日本では、2005年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で初の回顧展を開催したほか、2016年には、初のパーマネントスペースが瀬戸内海の愛媛県にある豊島(とよしま)にオープンしている。

 

 

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