須田悦弘|補作と模作の模索

須田悦弘《菫》2023年 Photo: Hiroshi Sugimoto

 

須田悦弘|補作と模作の模索

2023年4月8日­(土)- 6月24日(土)

11:00–19:00

*日 / 月 / 祝日休廊

*ロンドンギャラリー白金と同時開催

 

この度、ロンドンギャラリー白金とギャラリー小柳は、須田悦弘による個展「須田悦弘 補作と模作の模索」を、2023年4月8日(土)から6月24日(土)の会期で開催するはこびとなりました。本展はロンドンギャラリーとギャラリー小柳の初めての共同企画展となります。

須田悦弘は1969年、山梨県生まれ。現在は東京に拠点をおいています。本物と見紛うほど精緻な草や花の木彫をつくり、それを思いがけない場所に設置して空間全体をインスタレーションとする作品を制作しています。部屋の片隅や、壁や床のわずかな隙間に配された須田作品は、見る者の視点を大きく転換し、空間に対する眼差しを研ぎ澄まさせるのです。

杉本博司が名付けた展覧会タイトル「補作と模作の模索」が示すように、本展では今まで須田が制作してきた作品群を自然を模する作品、すなわち「模作」と呼び、それらに加え、近年注目を集めている須田の「補作」の仕事を紹介いたします。

須田が初めて自身の作品を古美術と共に展示したのは、2000年に大倉集古館で開催された「拈華微笑—仏教美術の魅力」展でのことでした。ロンドンギャラリー創設者の田島充が企画し、杉本博司が会場構成を手がけたこの展覧会で、須田は国宝《普賢菩薩騎象像》の展示ケースの中に1本の「雑草」を忍ばせたのです。以降、須田は萬野美術館(2002)、正木美術館(2008)、サンフランシスコ・アジア美術館(2012)などで古美術と絡めて作品を展示してきました。

今回の展覧会では、杉本博司が選んだ骨董の器にあわせて須田が作品を制作します。青磁の花入には青い枝を伸ばす白梅を、硝子のジンボトルには凛とした菫を。須田は作品を設置する場をインスタレーションに転じてきましたが、今回の作品群では器が作品の場となるのです。杉本が投げかけたお題に須田がどのように答えるのか、二つの展覧会場でご覧ください。

影響を受けた作家を問われ運慶や快慶、尾形光琳や酒井泡一ら琳派の絵師たちを挙げる須田にとって、仏像や神像の失われた部分を検証してつくり出し、古色を施す技術を研究する「補作」の取り組みは、作家の創作において大きな位置を占めるまでになりました。杉本博司の依頼で小鹿の像に角、鞍、榊、そして雲を補作した《春日若宮神鹿像》(鎌倉時代、小田原文化財団蔵)を皮切りに、田島充の依頼による平安時代の《随身坐像》や唐時代の《婦人立像》への補作などを次々に手がけていきます。

今回、ロンドンギャラリー白金では、ロンドンギャラリー所蔵の仏教美術や古美術の須田による補作の作例、ギャラリー小柳では杉本博司のコレクションおよび小田原文化財団所蔵の補作の作例を展覧いたします。

1993年、銀座1丁目から4丁目のコインパーキングで《銀座雑草論》を展示した作家デビューから30年にあたる本年、ロンドンギャラリー白金とギャラリー小柳とで開催する二つの展覧会で須田悦弘の現在をご高覧いただければ幸いでございます。

 

 

Copyrighted Image