Yuriko Terazaki, Chetham’s Library #1, 2024, black color pencil on paper
Photo: Keizo Kioku
この度ギャラリー小柳では、2024年8月24日(土)から9月27日(金)の会期にて寺崎百合子の個展「Every step we take, each story we unfold 時を数えて」を開催いたします。ギャラリー小柳で2017年の「Arks for Learning 図書館」展以来6回目の個展となる本展では、歴史ある図書館や大聖堂の階段を描いた新作を中心に展示いたします。
寺崎は、人の手によって作られ、長い月日の積み重ねられたものを描いてきました。権力の象徴や文化の依り代としての階段、劇場、楽器、人の知識と物語を納めた書物、そしてそれに触れてきた人々の気配を黒い色鉛筆の線を重ねながら表現しています。描き込まれたモチーフの細部を色鉛筆がこれ以上のらないほど緻密に重ね暗闇を描くことによって、場所そのものが辿った時の経過を表しています。
本展では、英国のチータムズ図書館やウェルズ大聖堂などを描いた作品を発表いたします。
チータムズ図書館は、マンチェスターに1653年に開館した英語圏における最も古い公共図書館で、織物商人として成功したハンフリー・チータムによって開設されました。人々に無料での利用を提供していましたが、当時書物は貴重であったため一冊ずつ鎖で繋がれ、閲覧のみできるようになっていました。後年の増書に伴い、今では当時を記念する展示としての棚以外は鎖に繋がれていません。寺崎は《Chetham’s Library #1》でその鎖に繋がれた書物を、長い年月を経てわたしたちに受け継がれ親しまれてきた本というかたちを描き留めるべく、またその月日の時を想い、この棚を描きました。
15世紀に建てられたウェルズ大聖堂図書館も、今もなお鎖で繋がれた書物を所蔵しています。寺崎は若い頃、この大聖堂に石積みの長い階段があることを建築写真家のフレデリック・ヘンリー・エヴァンズの作品《A Sea of Steps》(1903年)で知りました。以来、いつかはこの階段を自分の眼で見、その石段を登ってみたいと願っていました。2019年の渡英によってその願いが叶い、この絵は作成されました。
エヴァンズの作品では、光が差し込む聖堂内の石積みのうねる階段を繊細な濃淡で表し、奥の扉までひと続きに見える角度から捉えています。寺崎の《Wells Cathedral》(2021年)は同じ角度から捉えながら階段の行方は暗闇に沈み、階段がどこに繋がっているのか、何処へと人々をいざなっているのかわかりません。わかるのは、幾百年の長い年月の幾百幾万の人々の一歩一歩が刻まれた、人々のあゆみの痕跡だけです。
【展覧会概要】
展覧会名:寺崎百合子|Every step we take, each story we unfold 時を数えて
展覧会会期:2024年8月24日(土)- 9月27日(金)
[プレビュー&レセプション:8月23日(金)17:00-19:00]
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:日/月/祝祭日
会場:ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F
Tel: 03-3561-1896
Email: mail@gallerykoyanagi.com
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