Contemporary Australia: Optimism

2008.11.11-2009.2.22
ギャラリー・オブ・モダン・アート(ブリスベン)

文:マイケル・フィッツジェラルド


Vernon Ah Kee, Who let the dogs out (detail), 2008
Applied vinyl, Site-specific work for Contemporary Australia: Optimism Courtesy the artist

2008年2月13日、ケヴィン・ラッド新首相は、アボリジニの子を母親から隔離する過去の政府の施策について「盗まれた世代」に謝罪した。楽観主義という国の新精神をこれほど如実に表した出来事はなかっただろう。

9ヶ月後に、クイーンズランド・アート・ギャラリー(QAG)が、その国家的ムードの検証を試みた。同館が主催し、高い評価を得ているアジア=パシフィック・トライエニアルをモデルとした新シリーズ展第1回は、60名を超える参加作家と12の委嘱作から成る。街の文化復興の輝かしいシンボルたる新館用に特注したかのようだ。

社会の木鐸となると同時に「楽観主義」というテーマを衛星航法装置として用いるという難題は、QAGの有能な学芸員、ジュリー・エウィントンの手に委ねられた。軸となるのは「確信、責任、抵抗、行動」。観客は、多くの作家が採用した色彩の豊かさとスケールの大きさに惹かれたかもしれないが、入口ロビーにあるヴァーノン・ア・キーのテキスト作品が示すように、秘められた思いは心温まるものではない。3階までそびえる「Who let the dogs out」(08年)では、これまではミニマルだった原住民作家の美学が、作品中の分身Red Hatのもとに叙事詩的な規模にまで達する。人種的偏見に対処した国家のみが前進し得る、というメッセージは明快だ(繰り返し綴ると「red hat」は「hatred=憎しみ」と読める)。

多くの参加作家にとって、相反するテーマは不滅の確信というより継続的な刺激となっている。カーペンターズが1970年代に自宅に建造した日本庭園を再現したダレン・シルヴェスターの映像や、スコット・レッドフォードによるルート66の標識の気の利いた引用は、過去への思慕の内に未来への希望を見出した。最もほろ苦いのは、パーティ帽をかぶり、アイルランド人占い師の前で涙する姿を録画したケイト・マーフィーの自我像だ。エウィントンはオーストラリアの豊かな諧謔みを引き出して、涙と笑いが紙一重であることを実によく際立たせている。超人気コメディ番組『Kath and Kim』の作者でもある参加作家、ジェーン・ターナーが皮肉っぽく言うように「笑いの中に涙がある」。

今日の際どい状況を首尾よく捉えた本展において、冷笑と感傷の組み合わせではトニー・アルバートの「Sorry」(08年)が傑出している。中古品屋から救済してきたキッチュなアボリジニの工芸品で作ったテキスト壁画は、原住民作家の手になるからこそ、もろ刃の辛辣さを帯びている。「Sorry」は『Optimism』と同様に、複雑な感情に力強く共鳴している。

※このレビューは『ART iT』23号にも掲載されています。

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