原美術館・豊久将三氏による照明のお話-2

さて、昨春リニューアルした当館照明システムのお話、いよいよ本題です。

新しく導入したシステムでは、従来のようにスポットライトで作品1点ずつに対して光を照射する方式をやめ、壁面全体を照らす「ウォールウォッシャー」方式を中心に採用いたしました。

展示室および廊下に導入された照明は、
・ ハロゲンランプを搭載した81台の光源装置
・ 光源装置より分岐させた光ファイバーケーブル
・ 光を照射する488個の先端器具
により構成されています。

先端器具は、口紅ほどの小さな突起です。角度を自在に変えられ、展示にあわせたライティングが可能です。

熱をほとんど伝えないガラス芯の光ファイバーケーブルを用いて光源を遠ざけることにより、作品が受ける熱影響を最小限に抑えることが可能になっています。また、照度や色温度の制御がしやすい、メンテナンスが簡単、省電力であるなど、このシステムには多くの利点があります。

当館の照明を手がけた照明家の豊久将三氏が大切にするのは、技術を前面に見せない光の構成。氏はシステム設計のみならず、光源や器具の開発まで自ら手がけています。いわばフルオーダーメイドで実現されたこの照明システムは、その言葉通り展示室の中で主張せず、しかしながら美しい佇まいを見せています。

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