福島県の児童をハラ ミュージアム アークにお迎えして

東京・原美術館/群馬・ハラ ミュージアム アークより

原美術館は、ブルームバーグL.P.の協賛により、昨年6月から原美術館と品川駅を結ぶ無料ミニシャトルバス「ブルンバッ!」(*1)を毎週日曜に運行しています。「ブルンバッ!」はこれまでも通常運行に加えて、美術鑑賞の機会に恵まれない方々を美術館にご招待するための交通手段として、またアートバス自体を楽しんでいただく企画(*2)においても活躍しています。

去る5月の土曜日、東日本大震災を受け、群馬県東吾妻町および渋川市内で避難生活を送られている方々より児童を中心に、ハラ ミュージアム アークと伊香保グリーン牧場にご招待する目的で、「ブルンバッ!」を群馬県内で特別運行しました。

3月11日以降、美術館としてどのような社会貢献が可能かを模索してまいりましたが、奈良美智チャリティー大判カードセット発売(*3)に続く取り組みの一つとして、「ブルンバッ!」特別運行の案が、当館のスタッフから挙げられたのは4月のある日でした。調べていく内に、福島第一原発事故の影響により南相馬市より避難を余儀なくされた数百名の方々が、群馬県東吾妻町の温泉施設において生活されていることがわかりました。慣れない土地であることに加え、交通手段が乏しくほとんど外出をされていないと伺い、調整を重ね、渋川市内に避難されている数名を加えた83名の方々のための日帰りバスツアーが実現しました。

通常は小型マイクロバスの「ブルンバッ!」ですが、今回は大型バス2台にデザインの一部を使用して運行する運びとなりました。朝、東吾妻町の避難所と渋川市の集合場所で皆様をお乗せし、ハラ ミュージアム アークに到着。参加者の皆さまには、学芸員のギャラリーガイドとともに、あるいは自由に、現代美術ギャラリーや古美術のための特別展示室「觀海庵」で作品を鑑賞していただきました。


ハート形の作品は、ジャン=ミシェル オトニエル「Kokoro」(2009年)

アニッシュ カプーアや狩野探幽らの作品が展示された和の空間「觀海庵」、現代美術ギャラリーでは草間彌生の「ミラールーム(かぼちゃ)」(1991年)が子供たちに特に人気があったようです。またオラファー エリアソンによる屋外常設作品「Sunspace for Shibukawa」(2009年)では、晴れの日のみ鑑賞可能な虹色の光が参加者をお迎えしました。


草間彌生「ミラールーム(かぼちゃ)」(1991年)にて


オラファー エリアソン「Sunspace for Shibukawa」(2009年)

アークに隣接する伊香保グリーン牧場では、バーベキューランチの後、シ―プドッグショーを見学、ヒツジに触れたり、ソフトクリームを味わったり・・・。日本テレビの番組でおなじみの「DASH村」(福島県浪江町)から牧場に避難中のヤギ4匹(ヒツジ2匹はその日はお休み中)に「俺と同じ。大変だったなあ」と語りかける男性も。また、牛を処分しなくてはならなかったこと、地震の時揺れが大きくて怖かったことなどを、少しずつ私たちに話してくださる方もいらっしゃいました。


「DASH村」から避難中のヤギ

その日は朝から30度を超す夏日。海風の涼しい南相馬市の方々にとって内陸の渋川はとても暑く感じられたようです。案じるスタッフに「それでもこうやって僕達を連れてきてくれたこと、そして将来、美術館に行ったあの日は暑かったね、と思い出せることが大事なんです」「いつも眠れないのだけど、今夜はみんなぐっすり眠れるでしょう」と伝えてくださった大人の方々の言葉が胸に響きました。

皆様にお付き合いいただいたことで、スタッフも学ばせていただくことの多い一日でした。またアートが心のためのものであることを改めて感じた体験でもありました。小さな一歩のように思えますが、私たちは、企画してきた展覧会やイベントをできる限り開催し、美術館の灯を消さないことが大切だと考えています。これからも多くの方々に、美術館という場で普段できない体験をしていただき、心の豊かになるひとときを過ごしていただければと願っております。

毎週日曜、品川駅と原美術館を結ぶ「ブルンバッ!」はいよいよ6月12日(日)、一年間の運行を終了します。なお「ブルンバッ!」のアートワークを手がけた鈴木康広による「募金箱 『泉』」の設置と特別展示、トークショウを予定しております。詳しくはこちらへ。

(*1) アートバス「ブルンバッ!」は、若い作家にアートワークを依頼することで若手作家支援を行なっています。2008年度は田尾創樹、2010年度は鈴木康広が制作を担当しました。

(*2) 目黒区内の児童養護施設・老人ホームの利用者を原美術館にご招待、また東京都済生会中央病院付属乳児院へ出向き、乳児達にアートバスの楽しさを体験して頂きました。

(*3) 奈良美智×原美術館「My Drawing Room」チャリティー大判カードセットをミュージアムショップで販売中。利益全額を被災地復興支援のためジャパン・プラットフォームに寄付いたします。詳細はこちらへ。

[概要]
アートバス「ブルンバッ!」に乗って美術館と牧場に行こう!
~渋川市と東吾妻町で避難生活をおくられている児童をご招待~
開催日:2011年5月21日(土)
開催場所:ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市金井2855-1 Tel.0279-24-6585)
伊香保グリーン牧場 (群馬県渋川市金井2844 Tel. 0279-24-5335)
主催:原美術館、伊香保グリーン牧場
協賛:ブルームバーグL.P.
協力:日の丸自動車興業株式会社
後援:群馬県中部県民局、渋川市、東吾妻町、伊香保温泉観光協会

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原美術館へのアクセス情報はこちら
ハラ ミュージアム アークはこちら

東日本大震災被災地復興支援『奈良美智×原美術館「My Drawing Room」チャリティ大判カードセット』ミュージアムショップで販売中。

「Be Alive! ―原美術館コレクション」
2011年1月14日[金]―6月12日[日]

プロジェクト「ミカリーン トーマス:母は唯一無二の存在」
2月17日[木]―6月12日[日]

次回展覧会「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」
6月25日[土]―8月28日[日]

鈴木康広特別展示とトーク/「募金箱 『泉』」公開記念
2011年6月26日[日]―7月1日[金](特別展示)
6月26日[日](トーク)

原美術館はTwitterで情報発信中!(アカウント名: @haramuseum)
http://twitter.com/haramuseum

美術館の割引券一覧iPhoneアプリ「ミューぽん」参加。
http://www.tokyoartbeat.com/apps/mupon

原美術館ウェブサイト
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp

別館 ハラ ミュージアム アーク
「宇・宙(コスモス)-原美術館コレクション」、ほか
3月19日[土] -6月26日[日]

ハラ ミュージアム アークの開館時間に一部変更が生じております。詳しくはこちらをご覧ください。

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