第18回「shiseido art egg」@ 資生堂ギャラリー


大東忍《不寝の夜》2025年 木炭、キャンバス 撮影:加藤 健

 

第18回「shiseido art egg」
大東忍展|2025年3月5日(水)-4月6日(日)
すずえり(鈴木英倫子)展|2025年4月16日(水)-5月18日(日)
平田尚也展|2025年5月28日(水)-6月29日(日)
資生堂ギャラリー
https://gallery.shiseido.com/
開館時間:11:00–19:00(日・祝は18:00まで)
休館日:月(祝祭日にあたる場合も休館)
展覧会URL:https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/8113/

 

資生堂ギャラリーは、「新しい美の発見と創造」の活動理念に基づき、次代を切り拓く先進性を持った新進アーティストの活動支援を目的とする公募展「shiseido art egg」の入選者3名の個展を3月5日より順次開催する。18回目となる今回は、291件の応募から選ばれた大東忍、すずえり(鈴木英倫子)、平田尚也がそれぞれ約1ヶ月間の個展を行なう。

2006年に設立された「shiseido art egg」は、新進アーティストにギャラリーの門戸をひらき、数々の表現を幅広い観客に紹介してきた。審査は資生堂ギャラリーアドバイザーの伊藤俊治(美術史家/東京藝術大学名誉教授)と光田由里(美術評論家/多摩美術大学教授)、資生堂ギャラリーのキュレーターが担当し、作品の制作テーマ、クオリティ、「資生堂ギャラリーならではの空間特性を活かして何をどのように表現しようとしているのか」の3点をポイントに行なわれた。

審査員所感として、伊藤は「アートの世界では美術館やギャラリーは正常に復帰し、新たな形式でのアートフェスティバルも始動し、コロナなどすっかり忘れてしまったように見える」としつつも、「個々のプロポーザルを見てゆくと、四年近く続いたコロナ下の残滓はあちこちに散見される。あからさまな傷痕の表出というのではなく、精神の深部に刻まれた影響が滲み出てくるように作品全体を覆っている」と語った。光田は「初期のshiseido art eggでは新たな素材、独自の見せ方で提示される立体、絵画作品がしばしば選出されていた印象」だったが、今回は映像への傾斜が見られたとし、内容に関しては「作家個人の私的な領域を切り開いたテーマは今回では後退しつつあり、オルタナティヴな世界を想定するプランが目立った」とコメントを残した。

すべての個展終了後には、新しい価値の創造を最も感じさせたアーティストに「shiseido art egg賞」が贈られる。本年度の審査員は、建築家の永山祐子、美学者の星野太、美術家の村山悟郎が務める。

 


大東忍《不寝の夜》2025年 木炭、キャンバス 撮影:加藤 健

 

大東忍(1993年愛知県生まれ)は、見知らぬ過疎地や住宅地を歩き、祖先を供養する行事でもある「盆踊り」を踊ることで、そこに佇む気配を読み取り、風景の中に残る人々の営みや在処を探求している。 2019年に愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域を修了。近年の主な展覧会に「藪から藪へ」(YEBISU ART LABO、愛知、2024)、「漂着する思考 ー新屋浜をめぐる現代作家との対話ー」​(秋田市文化創造館、2024)、「VOCA展2024 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2024)、「TOKAS-Emerging 2023『風景を踏みならす』」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、2023)、「MIMOCA EYE / ミモカアイ」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2022)など。本展では、木炭画と映像をゆるやかに接続しながら、色彩を失ったモノクロの空間の中に、時間をかけて紡いできた風景の物語を描く。

 


すずえり《toypiano sokubaikai》2022年 水道橋Ftarriでのパフォーマンス 撮影:砂田紗彩 共演:遠藤ふみ

 

すずえり(鈴木英倫子)(神奈川県生まれ)は、ピアノや自作の電子回路などを連動させた装置を用いてインスタレーションや即興演奏を手がけ、音やそれを媒介する通信技術の表象に物語性を見出そうとしてきた。武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業後、2007年に岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]を卒業。 現在は東京大学大学院情報学環・学際情報学府先端表現情報学コースに在籍している。近年の主な展覧会に「OPENSITE 8 移動について」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、2024)、「My Scenery」(Wall alternative、東京、2024)、「どうぐをプレイする Tools for Play」(NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]、東京、2022)など。主なパフォーマンスや活動に「mœrs festival 2024」(メールス、ドイツ、2024)、「The Process」(Harvestworks、ニューヨーク、2023)などがある。本展では、Wi-FiやGPSなど現代に欠かせない通信技術の礎を開発した、発明家でハリウッド女優のヘディ・ラマーに焦点を当て、ピアノや電球を通信機器と接続したインスタレーションなどを展開し、通信と社会の関わりについて考える。

 


平田尚也《十把一絡げ #1 (cap) 》2023年 PLAプラスティック

 

平田尚也(1991年長野県生まれ)は、デジタルテクノロジーの進展により、身体そのものの仮想化が進み、アバターが一般化しつつある今日において、身体性やアイデンティティを探求している。2014年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業。主な展覧会に「Moonlit night horn」(Satoko Oe Contemporary、東京、2024)、「リニューアルオープン記念特別展 Before/After」(広島市現代美術館、2023)、「山形ビエンナーレ」(山形県山形市中心市街地、2022)、「さかしま」(Satoko Oe Contemporary、東京、 2021)など。本展では、人格を認めざるを得ないような高度なAIが誕生した未来では、アバターの正体は人間であるのか、AIであるのかという思考の下、「身体という表面に宿る魂の在りか」を探る。

 

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