Anicka Yi, Installation view: 7,070,430K of Digital Spit, Kunsthalle Basel, Basel, 2015 Courtesy 47 Canal, New York, and Kunsthalle Basel, Basel, Photo: Philipp Hänger
2016年10月20日、ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム財団とヒューゴ・ボスは、ヒューゴ・ボス賞2016をアニカ・イに授与した。11人目の受賞者となったイには、賞金100,000ドル（約1037万円）と、ニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館での個展の機会が与えられる。
アニカ・イ（1971年ソウル生まれ）は、先端技術や科学を利用することで、視覚のみならず、嗅覚をはじめとするあらゆる感覚を導入した作品を制作している。今回の審査でも、そのような彼女独自の先見性や芸術生産の新しい可能性の生成という試みが高く評価された。蜂蜜やグリセリンソープ、油で揚げた花といった素材を扱った彫刻作品やインスタレーションを発表していたイは、2014年にMITのレジデンスに参加し、専門的な知識を持った研究者たちと交流を深め、バクテリアの活動を制作過程に取り入れるなど、不安定な素材を扱う方法を開発していく。昨年のクンストハレ・バーゼル、MITリスト・ヴィジュアルアーツセンター、ザ・キッチン（ニューヨーク）の３つの個展に続き、今年はカッセルのフリデリチアヌム美術館で大規模な個展を開催した。そのほか、第11回光州ビエンナーレ（2016）、第９回台北ビエンナーレ（2014）、第12回リヨン・ビエンナーレ（2014）といった国際展や、セラルヴェス現代美術館（ポルト、2015）、シンケル・パビリオン（ベルリン、2014）、ノースマイアミ現代美術館（2013）、スイス・インスティテュート・コンテンポラリーアート（ニューヨーク、2013）などの企画展に参加。日本国内では、2012年にMISAKO & ROSENの企画展『○○』に出品。現在開催中の岡山芸術交流2016では旧後楽館天神校舎跡地にて、バクテリアの活動を取り入れた作品を発表している。
Anicka Yi, Installation view: 11th Gwangju Biennale, 2016 Photo: ART iT
ヒューゴ・ボス賞は1996年に設立された世界有数の美術賞で、年齢、性別、国籍、制作手法を問わず、現代の文化生産における革新的な制作活動を展開するアーティストに与えられる。創設20周年の節目の年となった今回、アニカ・イのほか、タニア・ブルゲラ、マーク・レッキー、ラルフ・レモン、ローラ・オーウェンス、ワエル・シャウキーが最終候補にノミネートされた。また、審査委員はグッゲンハイム美術館のキュレトリアルスタッフや、そのほかの美術機関のディレクター、キュレーターが担当し、今年はキャサリン・ブリンソン（ソロモン・R・グッゲンハイム美術館キュレーター）、ダン・バイヤース（ICAボストン・マニオンファミリー・シニアキュレーター）、エレナ・フィリポヴィッチ（クンストハレ・バーゼル・ディレクター／チーフキュレーター）、ミシェル・クオ（アートフォーラム・インターナショナル編集長）、パブロ・レオン・デ・ラ・バラ（ソロモン・R・グッゲンハイム美術館グッゲンハイムUBSマップキュレーター、ラテンアメリカ）が務めた。
ヒューゴ・ボス賞：http://www.guggenheim.org/hugo-boss-prize
歴代受賞者および最終候補（太字が受賞者）
2016｜アニカ・イ
タニア・ブルゲラ、マーク・レッキー、ラルフ・レモン、ローラ・オーウェンス、ワエル・シャウキー
2014｜ポール・チャン
シーラ・ゴウダ、カミーユ・アンロ、ハッサン・カーン、シャーリーン・フォン・ハイル（スティーヴ・マックイーンはアカデミー賞ノミネートのため規定により辞退）
2012｜ヤン・ヴォー
トリシャ・ドネリー、ラシード・ジョンソン、モニカ・ソスノヴスカ、トリス・ヴォナ・ミッチェル、邱志傑（チウ・ジージェ）
2010｜ハンス＝ペーター・フェルドマン
曹斐（ツァオ・フェイ）、ナターシャ・サドル・ハギーギアン、ローマン・オンダック、ワリッド・ラード、アピチャッポン・ウィーラセタクン
2008｜エミリー・ジャシール
クリストフ・ビュッシェル、パティー・チャン、サム・デュラント、ヨアヒム・コースター、ローマン・シグネール
2006｜タシタ・ディーン
アローラ＆カルサディーヤ、ヨン・ボック、ダミアン・オルテガ、アイダ・ルイロヴァ、ティノ・セーガル
2004｜リクリット・ティラヴァニ
フランツ・アッカーマン、リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー、ユルーン・デ・レイケ＆ウィルム・デ・ローイ、サイモン・スターリング、ヤン・フードン
2002｜ピエール・ユイグ
フランシス・アリス、オラファー・エリアソン、八谷和彦、ク・ジョンア、アンリ・サラ
2000｜マリイェティツァ・ポタルチュ
ヴィト・アコンチ、マウリツィオ・カテラン、エルムグリーン&ドラッグセット、トム・フリードマン、バリー・ル・ヴァ、ツンガ
1998｜ダグラス・ゴードン
ホァン・ヨンピン（黄永砅）、ウィリアム・ケントリッジ、イ・ブル、ピピロッティ・リスト、ローナ・シンプソン
1996｜マシュー・バーニー
ローリー・アンダーソン、ジャニン・アントニ、蔡國強（ツァイ・グオチャン）、スタン・ダグラス、森村泰昌