田中憲一《野牛1》1987年作(写真提供:熊本地震 田中憲一の画を救う会)
熊本地震復興祈念 田中憲一作品・レスキュープロジェクト報告展
2025年2月4日(火)-2月16日(日)
熊本県立美術館分館 4階展示室3
https://branch.museum.pref.kumamoto.jp/
開館時間:9:30–18:30(土日祝は17:15まで/最終日は16:30まで)
休館日:月(祝日の場合は翌日)
主催:熊本地震 田中憲一の画を救う会
「平成28年(2016年)熊本地震」で全壊した同県御船町出身の画家、田中憲一(1926–94)のアトリエ兼自宅から作品を救出し、その修復活動に取り組む「熊本地震 田中憲一の画を救う会」の主催する「熊本地震復興祈念 田中憲一作品・レスキュープロジェクト報告展」が、熊本県立美術館分館4階の展示室3で開催される。
田中憲一(1926-1994/熊本県御船町生まれ)は、中学や高校で美術教師として熱心に教鞭を執りながら創作活動を続け、晩年は御船町で仲間を集め地域の歴史や文化を掘り起こし、芸術文化活動を牽引した。1994年逝去。1996年に町民と教え子が協力して代表作50点による遺作展「田中憲一画業40年展」を熊本県立美術館分館で開催。『田中憲一作品集』も編纂され、御船町のアトリエには、その出品作を含む150点余りの作品が郷土の文化振興のために残された。
2016年4月14日と16日、震度7の地震が続けて2度も襲うという未曽有の災害で、震度6弱を観測した御船町では、田中憲一の住宅とアトリエが全壊。地震から約1ヶ月後に自らの住まいや職場が被災した地域住民とボランティアが集まり、倒壊したアトリエの瓦を剥ぎ穴をあけ、家屋の下敷きになった作品を救出した。そこに地元美術の研究者が駆け付け、熊本出身の絵画保存修復家の岩井希久子、大学の研究者などの専門家、町内外のボランティアも集まり、本格的な「田中憲一作品レスキュープロジェクト」が始まる。2019年にはプロジェクトの経過報告として、岩井希久子と岩井貴愛の公開修復を含む展覧会「絵のお医者さんがやって来たー岩井希久子・熊本 地震被災作品・公開修復展」を御船町恐竜博物館 交流ギャラリーで開催した。
アトリエより作品の救出(写真提供:熊本地震 田中憲一の画を救う会)
《海の骸B》を修復中の岩井希久子(写真提供:IWAI ART保存修復研究所)
《海の骸B》を修復する岩井希久子・貴愛(写真提供:IWAI ART保存修復研究所)
本展では、約8年間に及ぶ活動を経て被災直後に願った代表作の修復・保存を無事に達成するにあたり、岩井が修復した油彩作品18点と岩井が導入した新しい技術「脱酸素密閉」を施した2包などを展示する。また、自然災害による被害に対してどんなことができるのかを示す熊本でのロールモデルを紹介すべく、展覧会のみならず『レスキュープロジェクト報告書』の刊行とシンポジウムの開催も予定。シンポジウム「御船の美術品レスキュープロジェクトから学ぶもの」には、岩井とともに、美術批評家の椹木野衣が登壇。椹木はART iTの連載「美術と時評」にて、2019年末に「熊本地震 田中憲一の画を救う会」の活動を取り上げている(「美術と時評88:回復のための想像力 ー 被災と修復」)。そのほか、会期中には展示会場にて展示企画者が作品を紹介、解説するギャラリー・トークも複数回開催予定。
関連イベント
シンポジウム「御船の美術品レスキュープロジェクトから学ぶもの」
2025年2月8日(土)18:00–20:30(受付:17:30-)
登壇者:岩井希久子(絵画保存修復家)、椹木野衣(美術批評家、多摩美術大学教授)ほか
コーディネーター:才士真司(プロデューサー・岡山大学特任准教授)
会場:熊本県民交流館パレア10階ホール(熊本市中央区手取本町8-9 鶴屋百貨店東館)
※入場無料
ギャラリー・トーク
2025年2月4日(火)、8日(土)、9日(日)、11日(火)、15日(土)15:00-15:45
会場:熊本県立美術館分館 4階展示室3
「公開修復展」にて(写真提供:IWAI ART保存修復研究所)