再開館記念「不在」 ―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル @ 三菱一号館美術館


ソフィ・カル氏ポートレート Sophie Calle Photography : Yves Géant

 

再開館記念「不在」 ―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
2024年11月23日(土)-2025年1月26日(日)
三菱一号館美術館
https://mimt.jp/
開館時間:10:00–18:00(祝日を除く金曜・第2水曜・会期最終週平日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし11/25、12/30、1/13、1/20は開館)、年末年始(12/31、1/1)
展覧会URL:https://mimt.jp/ex/ls2024/

 

2023年4月からの長期休館を終えた三菱一号館美術館では、「再開館記念『不在』―トゥールーズ゠ロートレックとソフィ・カル」を開催する。リニューアル・オープン後初の展覧会となる本展では、同館のコレクションそして展覧会活動の核をなすアンリ・ド・トゥールーズ゠ロートレックの作品に改めて注目し、ソフィ・カルとの協働を通じて、美術館活動に新たな視点を取り込み、今後の発展に繋げていくことを目指す。

ソフィ・カル(1953年パリ生まれ)は、見知らぬ人々を自分の部屋を招き、自分のベッドで眠る様子を撮影したものにインタビューを加えた《眠る人々》(1979)や、拾ったアドレス帳に載っていた人物にその持ち主についてのインタビューを行ない、日刊紙リベラシオンに連載した《アドレス帳》(1983)など、自分自身や他者の個人的な体験を基にした物語性の高い写真と言葉を組み合わせた作品で知られる。また、生まれつき目の見えない人々に美のイメージを問いかけた《盲目の人々》(1986)をはじめ、盲人に焦点を当て、美術の根幹に関わる視覚や認識について深く考察する作品群も継続して発表している。

高校卒業後に大学へは進学せずに約7年間、中国やアメリカ合衆国、メキシコなどを放浪し、パリへ戻ってきた70年代後半以降より作品の発表を開始する。以後、「The Birthday Ceremony」(テート・ギャラリー、ロンドン、1998)や「Have you seen me」(ポンピドゥーセンター、パリ、2003)など、各国の主要美術館にて個展を開催。2007年には、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレでフランス館代表のアーティストに選出された。近年の主な展覧会に、「À toi de faire, ma mignonne」(ピカソ美術館、パリ、2023)、「Because—The Blind」(アート・インスティテュート・オブ・シカゴ、2022)、マルセイユの5つの博物館で開催した「Five」(2019)、「Sophie Calle and her guest Serena Carone」(パリ狩猟自然博物館、2017)など。日本では、「最後のとき/最初のとき」(原美術館、豊田市美術館、長崎県美術館に巡回、2013-2015)、「ソフィ・カル展」(豊田市美術館、2003)、「限局性激痛」(原美術館、東京、1999)など。また、日本語に翻訳された著書に『本当の話』(野崎歓訳、平凡社、1999)がある。

 


アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《メイ・ミルトン》、1895年、
リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵


アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《アリスティド・ブリュアン》、1892年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵

 

本展は、開館10周年記念展として2020年に企画された「1894 Visions ルドン、ロートレック」の開催に際し、ソフィ・カルの招聘を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け見送りとなっていた現代アーティストとの協働というプロジェクトの再展開となる。

協働に際して、カルは彼女自身が長年にわたって考察を巡らせてきた「不在」を主題として提案。本展では、自身や家族にまつわるテキストと写真によって構成された《自伝》(2013-)、1990年にボストンの美術館で起きた絵画の盗難事件に端を発した《あなたには何が見えますか》(2013)、テキストを刺繍した布をめくると写真が現れる《なぜなら》(2018)、ピカソ(作品)の不在を示す《監禁されたピカソ》(2023)など、代表的なシリーズを発表する。また、三菱一号館美術館が所蔵する画家オディロン・ルドンによるパステル画の代表作《グラン・ブーケ(大きな花束)》から着想した《グラン・ブーケ》(2020)を初公開。さらに、《フランク・ゲーリーへのオマージュ》(2014)や、2019年に渋谷スクランブル交差点の街頭ビジョンで公開した映像作品《海を見る》(2011)なども出品し、本展はその多様な創作活動を一望する貴重な機会となる。

一方、トゥールーズ゠ロートレックは「人間だけが存在する。風景は添え物に過ぎないし、それ以上のものではない。」という言葉に象徴されるように、生涯にわたって人間を凝視し、その心理にまで踏み込んで、「存在」それ自体に迫る作品を描き続けた。本展では、フランス国立図書館から借用した版画作品を含む計136点を出品し、「時代の記録者」としてのロートレックの作品を、「不在」とその表裏の関係にある「存在」という視点から見直していく。

 

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