イメージフォーラム・フェスティバル2024


 

幅広い映像表現を紹介する国内有数の映像祭として知られるイメージフォーラム・フェスティバルが、本年度の全プログラムを発表。10月12日から「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」をはじめとする各種プログラムをシアター・イメージフォーラムなど都内3会場で上映する。

1987年にはじまり38回目の開催となる本年度の総合テーマは「交差する視線 ドキュメンタリーという物語」。画一的な歴史の記述に対し疑問を投げかけ、見られるたびに見るものの中に多義的な解釈を生むドキュメンタリーが有する、「真実」を伝えるということだけではなく、「真実」と伝えられるものを解体し、また別の複数の「真実」の可能性に注目する。

「交差する視線」の下に特集されたプログラムでは、ジョナサン・ベレルが利益追求の企業原理と抑圧的な軍事独裁政権の共犯関係の歴史を風景映画の手法を通じて炙り出そうと試みた『コーポレート・アカウンタビリティー』(2020)、パレスチナという土地の多様な民族コミュニティーの音楽の現在を描いた『魔法が私に流れ込んで来る』(2010)を含むジュマナ・マナによるパレスチナ/イスラエル、アラブ/ユダヤについての通り一遍の解釈を拒むドキュメンタリー2編、身体をテーマにパフォーマンス、ダンス、映像作品をハイブリッドに扱う映画祭「ジャンピング・フレームズ——香港国際舞踏映像祭」からのベストセレクション、さらに、女優のティルダ・スウィントンが美術批評家としても知られる作家・詩人のジョン・バージャーの下を訪れ、共に過ごす親密な時間を映像に納めた『ジョン・バージャーと4つの季節』(2016)などが上映される。

そのほか、超絶的な撮影技術で知られるアレクサンドル・ラローズや、300本以上の映像作品を手がけ、トリッキーかつミニマルな作風が魅力のダヴォリン・マルツの作品を日本で初めて上映するプログラムや、実験的なアニメーションで知られる石田園子と木船徳光による作家ユニットIKIF、『2001年宇宙の旅』の特殊効果アドバイザーも務めた合成技術のパイオニア、パット・オニール、グラフィックデザインのみならず幅広い表現活動を展開した粟津潔を取り上げる「フィルムメーカーズ・イン・フォーカス」など、映像表現の多彩さに触れることのできるプログラムが並んだ。

 


ジョナサン・ベレル『コーポレート・アカウンタビリティー』2020年


ジュマナ・マナ『魔法が私に流れ込んで来る』2016年


ティルダ・スウィントン+コリン・マッケイブ+バルテク・ヅィアドーシュ+クリストファー・ロス『ジョン・バージャーと4つの季節』2016年

 

東アジアの国際間における相互の交流と刺激によって、これからの芸術表現を模索し、メディア環境を含めた社会のあり方について考える場の創出を目指す公募枠「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」には、日本、中国、香港、マカオ、台湾、韓国といった対象地域から442作品が寄せられた。ビデオレターの体裁をとりながら、中国における核実験及びその視覚イメージを検証するジャン・ズムの『Tへの手紙:核の中で私たちが繋がっている』(2023)、フローレンス・ラムチャン・ジーウンが女性のジェンダーと身体にまつわる痛みの記憶と香港の運動の苦しみの記憶を重ねた『私があなただったら』(2024)、持田敦子のアートプロジェクト「解体」を青山真也が記録した『「解体」映像記録』(2024)、新型コロナウイルスのパンデミックに伴うロックダウンの中、異国の地アメリカで学ぶ作者デイジー・ズイェン・ジャンとその学生寮の掃除人として働くコロンビアからの移民女性のささやかな交流を情感豊かに描いた『彼女は渡った』(2024)、音楽の鳴り響く6畳ほどの狭い部屋にたむろする中国の若者たちの姿を捉えたジン・ジャンの『共和国』(2023)など、一次審査、二次審査を経てノミネートされた15作品が5つのプログラムで上映される。

 

イメージフォーラム・フェスティバル2024
http://www.imageforumfestival.com/2024/
東京会場
シアター・イメージフォーラム|2024年10月12日(土)– 10月18日(金)
ヒューマントラストシネマ|2024年10月15日(火)
SHIBUYA SKY|2024年10月4日(金)、10月11日(金)、10月12日(土)、10月17日(木)

名古屋会場
愛知芸術文化センター12F アートスペースA|2024年11月2日(土)– 11月4日(月・祝)
※タイムテーブルは公式ウェブサイトを参照

京都会場
出町座|2024年11月8日(金)– 11月14日(木)
※タイムテーブルは劇場(出町座)のウェブサイトを参照
https://demachiza.com/

 


ジャン・ズム『Tへの手紙:核の中で私たちが繋がっている』2023年


デイジー・ズイェン・ジャン『彼女は渡った』2024年


ジン・ジャン『共和国』2023年

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