倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 @ 京都国立近代美術館


倉俣史朗《硝子の椅子》1976年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office

 

倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
2024年6月11日(火)-8月18日(日)
京都国立近代美術館
https://www.momak.go.jp/
開館時間:10:00–18:00(金は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし7/15、8/12は開館)、7/16、8/13
展覧会担当:宮川智美(京都国立近代美術館研究員)
展覧会URL:https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionarchive/2024/459.html

 

京都国立近代美術館では、1960年代から90年代にかけてインテリアデザインの領域で活躍し、銀座の商業施設「三愛ドリームセンター」の店内設計や、素材の特性を利用した家具のデザインなどで知られる倉俣史朗の25年ぶりの京都での大回顧展「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」が開催されている。

倉俣史朗(1934-1991/東京生まれ)は、時代とともに素材と表現を変貌させたデザインで国際的に高い評価を受けている。高度経済成長とともに変化し続ける都市を舞台に、当時はまだ曖昧な認識しかなかったインテリアデザインの領域で活動。華やかで移り変わりの激しい商業空間を永続性のない幕間劇にたとえ、透明なアクリルの棚やショーケースなどを用いて透明感や浮遊感に満ちた空間を設計した。その一方で、商品化を前提としない家具を次々と発表。特に素材の特性を活かした椅子は倉俣の代表作となっている。1976年には板硝子を貼り合わせ最小限の構造を突き詰めた《硝子の椅子》、1985年にはヨセフ・ホフマンをオマージュした椅子にスチールワイヤーを巻きつけ燃やしワイヤーのみを残した《ビギン・ザ・ビギン》、1986年にはフレームが浮き上がるように暗闇で点灯する椅子《ヨセフ・ホフマンへのオマージュ Vol. 2》、1988年には造花のバラが浮遊するアクリルブロックの椅子《ミス・ブランチ》など、倉俣が「言葉で語れない部分を形で言おう」と制作した家具は、世界各地で保管され受け継がれている。イメージに合う素材を開発し画一的な利便性から解放されたデザインは、アートにも接近する表現で、日常に遊び心と本質的な問いを持ち込んだ。

倉俣は幼少期に駒込の理化学研究所内で育ち、第二次世界大戦中には疎開先で過ごした。戦後は桑沢デザイン研究所に通い、株式会社三愛などに務めたのち、1965年にクラマタデザイン事務所を設立する。67年に横尾忠則らとインテリアデザインを協働し脚光を浴び、その後も「変型の家具」シリーズにより国際的な認知を獲得。81年にはイタリアデザイン界の巨匠エットレ・ソットサス(1917-2007)が中心となったイタリアのデザイン運動「メンフィス」に参加している。1991年に心不全により死去。没後5年を経た1996年にソットサスが展示構成を手がけた展覧会「倉俣史朗の世界」を原美術館で開催。同展はメキシコ現代美術センター、サンフランシスコ近代美術館、ニューヨーク大学グレイ・アートギャラリー&スタディセンター、モントリオール装飾美術館、パリ国立装飾美術館、オーストリア応用美術館、京都国立近代美術館を巡回。2011年にソットサスとの二人展「倉俣史朗とエットレ・ソットサス展 夢見る人が、夢見たデザイン」が21_21 DESIGN SIGHT(東京)、2013年に個展「浮遊するデザイン—倉俣史朗とともに」が開かれた。香港のM+には、倉俣がインテリアデザインを手がけた新橋の寿司屋「きよ友」が当時のまま移築、再現されている。

 


倉俣史朗《椅子の椅子》1984年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office


倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 石橋財団アーティゾン美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office

 

本展では、初期作品から代表作の家具、スケッチのほか、友人への書簡や創作の源泉ともいえる夢日記、愛蔵の書籍やレコードなどの初公開資料200点以上を展示。プロローグ「浮遊への手がかり」では独立前の三愛時代の仕事を収めたスクラップブックなどを紹介し、その後年代に沿った4章構成で、倉俣の言葉にもとづくテーマごとに作品を展示している。第1章「視覚より少し奥へ 1965–1968」では《引出しの家具》、《ピラミッドの家具》、第2章「引出しのなか 1969–1975」では《変型の家具 Side 1》、《ランプ(オバQ)[小]》、第3章「引力と無重力 1976–1987」では《硝子の椅子》、《トウキョウ》、《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》、第4章「かろやかな音色 1988–1991」では《ミス・ブランチ》、《アクリルサイドテーブル #2》などを取り上げている。エピローグ「未現像の風景」では、これまであまり公開されてこなかった田中信太郎宛書簡やイメージスケッチ「夢日記」などを紹介。倉俣自身の言葉を辿りながら年代順に業績を代表作で回顧するとともに、56歳で急逝した倉俣の足跡をたどる。

 


倉俣史朗《変型の家具 Side 1》1970年 青島商店エムプラス蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office


倉俣史朗《ランプ(オバQ)[小]》1972年 個人蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office

 

関連イベント
インスタLIVE解説
2024年6月12日(水)18:30– ※既に終了
解説:五十嵐久枝(インテリアデザイナー)、宮川智美(京都国立近代美術館研究員・本展担当者)
アーカイブURL: https://www.instagram.com/momakyoto/reel/C8HNO76y5UV/

記念講演・対談「倉俣史朗──その時代と表現」
2024年6月22日(土)14:00–16:00 ※既に終了
講師:沖健次(インテリアデザイナー、元東京造形大学教授)
聞き手:橋本啓子(近畿大学教授)
会場:京都国立近代美術館1階講堂
定員:先着80名(当日11時より整理券配布)
参加費:無料

感覚をひらくワークショップ:ふれる、かたる、想像する 倉俣史朗のデザイン
2024年6月30日(日)13:30–16:30
会場:京都国立近代美術館
定員:30名
参加費:無料 ※要展覧会観覧券
対象:どなたでも(見えない・見えにくい方も歓迎)
協力:視覚に障害のある人とつくるアートプロジェクト実行委員会
※事前申込制 ※申込締切につき受付終了
詳細は公式ウェブサイトを参照
https://www.momak.go.jp/Japanese/education/2024/459_event.html

トークセッション 菊地敦己×西澤徹夫「デザインと表現」
2024年7月13日(土)14:00–15:30
登壇者:菊地敦己(グラフィックデザイナー)、西澤徹夫(建築家)
会場:京都国立近代美術館1階講堂
定員:先着80名(当日11時より整理券配布)
参加費:無料

 


倉俣史朗《イメージスケッチ「夢日記」》1980年代 クラマタデザイン事務所蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office

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