共棲の間合い -「確かさ」と共に生きるには- @ 東京都渋谷公園通りギャラリー


 

共棲の間合い -「確かさ」と共に生きるには-
2024年2月10日(土)-5月12日(日)
東京都渋谷公園通りギャラリー
https://inclusion-art.jp/
開館時間:11:00–19:00
休館日:月(2/12、4/29、5/6は開館)、2/13、4/30、5/7
企画担当:河原功也(東京都渋谷公園通りギャラリー学芸員)
展覧会URL:https://inclusion-art.jp/s/kyouseinomaai

 

東京都渋谷公園通りギャラリーでは、住む、暮らす、生活する、共に行なうことを起点に、生活と芸術の境界を揺るがし、問いかける表現を試みてきたアーティストの作品や活動を紹介する展覧会「共棲の間合い -「確かさ」と共に生きるには-」を開催する。

身近な家族との関係に迫るパフォーマンス、ある食料品に対する愛着、近隣地域のゴミ拾い、日常の出来事から生まれた詩、現代の住居や生活様式を問い直す試みなど、本展で紹介する折元立身、酒井美穂子、スウィング、村上慧の表現には、それぞれにとって最も親密で、確かなものが共棲している。そこには、言葉にしにくい個と個の間柄、大きなものに文脈化することのできない日常の間合いを大切にする態度が表れていると言えるのではないだろうか。本展では、彼らの「確かさ」に表現を通じて触れることで、鑑賞者それぞれにとっての「確かさ」とはなにかを反芻する機会を共有する。なお、本企画では展覧会をより深く楽しむためのウォーミングアップ企画を1月13日から1月28日および2月3日に東京都渋谷公園通りギャラリーで開催した。

 


折元立身《パフォーマンス:パン人間電車の旅》1992年 作家蔵 提供:アートママファウンデーション

 

折元立身(1946年神奈川県生まれ)は、顔にパンを巻き付け街中に繰り出すパフォーマンス「パン人間」や自身の母の介護を作品とする「アート・ママ」など、生活と芸術の境界を揺るがす表現を通じて、コミュニケーションのあり方を愛とユーモアを交えて問いかけてきた。2001年の第49回ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、数々の国際展に参加、2008年にはサンパウロ美術館で大規模な回顧展が開催されるなど、国際的な評価も高い。近年の主な個展に「生きるアート 折元立身」(川崎市市民ミュージアム、2016)、「折元立身:昔と今」(尾道市立美術館、2018)。本展のウォーミングアップ企画では、折元が自宅トイレ内にヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の有名な三連祭壇画《快楽の園》を拡大コピーしてコラージュ、設置したインスタレーション作品《ボッシュ・トイレ・ミュージアム》の再現展示を試みた。本展では、代表作「パン人間」や「アート・ママ」シリーズの作品ほか、1970年代に活動したニューヨーク時代のオブジェと、日本初公開の新作オブジェを並べて展示する。また、2月10日には「パン人間」のパフォーマンスも予定。

酒井美穂子(1979年滋賀県生まれ)は、1996年から滋賀県甲賀市にあるアートセンター&福祉施設「やまなみ工房」に所属している。酒井は28年以上、どこであってもだれと居ようとも、即席麺「サッポロ一番しょうゆ味」を片時も放さず、それを食べるわけでもなく、ただ握り、ビニールの擦れる音を聞き、微かな反射を眺めつづけてきた。近年の展示には、「無意味、のようなもの」(はじまりの美術館[福島]、2018)などがある。ウォーミングアップ企画では、「やまなみ工房」を取材したドキュメンタリー『地蔵とリビドー』(監督/笠谷圭見)の特別上映とやまなみ工房施設長の山下完和によるアフタートークを実施。本展では、酒井が日々欠かさずに握ってきた1,000個を超えるインスタントラーメンによって、壁一面を覆う過去最大規模のインスタレーションの展示を行なう。

 


酒井美穂子《酒井美穂子・本人》2015年 提供:やまなみ工房


スウィング 2022年 撮影:Narita Mai

 

スウィングは、2006年より京都にて活動を開始した、障害のある人ない人およそ30名が働く福祉施設で、既存の仕事観や芸術観にとらわれない自由な仕事や表現活動を基軸とした事業を行なっている。2008年より15年にわたって月1回ペースで実施している清掃活動「ゴミコロリ」、絵画や詩やコラージュの創作活動「オレたちひょうげん族」のほか、展覧会の実施やフリーペーパーの出版、ラジオ「Swing鼻クソRADIO」配信など、自主的な発信を伴う活動は多岐にわたる。近年の展示に「Swing×成田舞×片山達貴 展覧会『blue vol.2 ― 捨てられないものが物語ること』」(THEATRE E9 KYOTO[京都]、2022)などがある。ウォーミングアップ企画では、清掃活動「ゴミコロリ」の実施と同活動を含む「Swing鼻クソRADIO」の収録を行なう。本展では、「ゴミコロリ」の初期から現在までの記録写真や、創作活動から生まれた絵の数々、大きく刷りだした詩作を読むブースなど、 独自の発信を続けているスウィングの世界観を展開する。

村上慧(1988年東京都生まれ)は、2014年より、自作の発泡スチロール製の家を持ち運びながら国内外で移動生活を試みるプロジェクト「移住を生活する」を行ない、既存の住居や生活様式を問い直してきた。「住むことのパターン」を展開している村上は近年、落ち葉の発酵熱や気化熱の冷房効果を利用するなど、電気を使わない冷暖房空間の開発に取りくんでいる。近年の主な展示に「村上慧 移住を生活する」(金沢21世紀美術館、2020-21)、「TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展」(寺田倉庫、東京、2024)などがある。 ウォーミングアップ企画では滞在制作に取り組み、本展では近年新たに取り組んでいるプロジェクトより、落ち葉の発酵熱を活用した体験型のインスタレーション作品を発表する。

 


村上慧《2018年8月30日石川県金沢市》2018年 作家蔵 撮影:TAMURA Can

 

関連イベント
折元立身による「パン人間」パフォーマンス
2024年2月10日(土)14:00–15:00
パフォーマンス:折元立身
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室1・2、交流スペース
※無料、事前申込不要、出入り自由

トークイベント「山あり谷あり、それぞれの道のり」 ※手話通訳付き
2024年3月2日(土)14:00–15:30(開始10分前までの来場を推奨)
ゲスト:木ノ戸昌幸(スウィング代表)、山下完和(やまなみ工房施設長)※対談形式
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
定員:20名(事前申込、先着順)※無料
申込フォームは2月12日(月)12:00頃に公式ウェブサイトにて公開

ギャラリートーク(本展担当学芸委員による作品解説)※手話通訳付き
2024年3月16日(土)14:00–14:30
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
※無料、事前申込不要、出入り自由

筆談鑑賞会 ※手話通訳付き
2024年3月30日(土)14:00–16:00(開始10分前までの来場を推奨)
ファシリテーター:小笠原新也(耳の聞こえない鑑賞案内人)
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
定員:10名(事前申込、先着順)※無料
申込フォームは2月12日(月)12:00頃に公式ウェブサイトにて公開

トークイベント「土という場所」 ※手話通訳付き
2024年4月4日(木)16:00–17:30(開始10分前までの来場を推奨)
ゲスト:村上慧(出展作家)、藤井一至(土の研究者)※対談形式
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
定員:20名(事前申込、先着順)※無料
申込フォームは2月12日(月)12:00頃に公式ウェブサイトにて公開

スウィングメンバーによる似顔絵ワークショップ
2024年4月6日(土)14:00–16:00(開始10分前までの来場を推奨)
ゲスト:Q(スウィング、出展作家)、XL(スウィング、出展作家)
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
※無料、事前申込不要、出入り自由

トークイベント「折元立身の生きるアートとは?」 ※手話通訳付き
2024年5月12日(日)14:00–15:30(開始10分前までの来場を推奨)
ゲスト:深川雅文(インディペンデント・キュレーター)※河原功也(本展企画担当学芸員)との対談形式
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
定員:20名(事前申込、先着順)※無料
申込フォームは2月12日(月)12:00頃に公式ウェブサイトにて公開

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