風景論以後 @ 東京都写真美術館


足立正生/岩淵進/野々村政行/山崎裕/佐々木守/松田政男 《略称・連続射殺魔》 1969年 デジタル(オリジナル35mm)86分
東京都写真美術館蔵

 

風景論以後
2023年8月11日(金・祝)-11月5日(日)
東京都写真美術館 B1F展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(8/31までの木、金は21:00まで、9/1以降の木、金は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日休館)
展覧会企画・構成:田坂博子(東京都写真美術館学芸員)
企画協力:平沢剛(映画研究者)
展覧会URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4538.html

 

東京都写真美術館では、1970年前後に現れた風景論をめぐる日本の写真映像表現を、資料を交えて歴史的に再考するとともに、現代の作家の表現にいたるまでの写真映像と風景の変容を、コレクションを中心に包括的に検証する展覧会「風景論以後」を開催する。

本展で対象とする風景論とは、映画批評家である松田政男の『風景の死滅』(1971)を起点としたもの。1970年前後の日本では、学生運動が衰退する一方で全国的な都市化、均質化が進み、何の変哲もない風景を国家と資本による権力そのものだとする風景論が大きく展開された。風景論を牽引した松田による本書は、風景として表象される力の諸関係とどのように対峙するかを考える上で、同時代の先鋭的な写真家、映像作家に決定的な影響を与えた。

本展では、国際的な再評価が進んでいる風景論をめぐる歴史的な映像表現を出発点に、当時の風景論およびその理論と連動した写真映像表現を再考し、現在にいたるまでの作品群を結ぶことで、風景論以後の写真映像表現の可能性を概観する。

 


今井祝雄《阿倍野筋》1977年 シングルチャンネル・ヴィデオ(オリジナル8mm)22分 東京都写真美術館蔵


清野賀子〈Emotional Imprintings〉より 1996年 発色現像方式印画 東京都写真美術館蔵

 

4章構成となる本展は、1960年代後半まで時代を遡りながら、風景に関わるさまざまな表現を紐解き、その新たな可能性を86点の作品や資料から検証する。

「1章 2000–」では、あらゆるイメージが氾濫する現代において、風景の背後に存在する目に見えないものや、かつてあったかもしれない歴史や記憶と向き合う表現を紹介。故郷の広島の広島平和記念公園とその周辺を継続して撮影し、風景の不可視な領域に挑んできた笹岡啓子と、フィクションとドキュメンタリーの区別なく、各場所や空間の細部を映像化する実験を行なってきた遠藤麻衣子の活動から、現代における風景を考察する。

「2章 1970–2010」では、写真や映画の領域で、非商業的かつ個人に向かう表現が数多く生み出された時代の表現に目を向ける。17歳で参加した具体美術協会で発表を重ね、1970年代頃から大阪の居住地周辺における日常的な風景の記録を開始した今井祝雄、1990年代に入ってから写真を撮り始め、人の気配を残した匿名的な風景を撮影した清野賀子、2000年代に拠点を移した伊丹で、生活に根ざした風景に目を向けたシリーズを撮影する崟利子を取り上げる。

「3章 1968–1970」では、1968年に起こった無差別の連続射殺事件の犯人が、生まれてから事件までに見たであろう景色のみで構成され、風景論が生み出される具体的な契機となった足立正生、佐々木守、松田政男らによる映画《略称・連続射殺魔》と、60年代後半から70年代にかけて、多木浩二らと同人誌『PROVOKE』を創刊、風景論の理論化で重要な役割を果たし、『風景の死滅』の表紙に写真が使用された中平卓馬の作品を展示する。

「4章 風景論の起源」では、風景論で大きな役割を果たした大島渚《東京战争戦後秘話》、若松孝二《ゆけゆけ二度目の処女》などの映像作品、アーカイヴ写真や印刷物を詳細に紹介することで、その議論と時代を再検証していく。また会期中には、出品作家による関連イベントや、風景論をめぐる映画上映を行ない、展覧会の主軸となる風景論を多角的に紹介する。

 


中平卓馬《無題》1968-1969年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵


若松孝二《ゆけゆけ二度目の処女》(抜粋版)1969年 ©若松プロダクション

関連イベント
担当学芸員によるギャラリートーク
2023年8月11日(金・祝)14:00–
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
参加費:無料(要チケット提示)

担当学芸員によるギャラリートーク(手話通訳付き)
2023年9月8日(金)、11月3日(金・祝)各日14:00–
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
参加費:無料(要チケット提示)

出品作家によるアーティストトーク
2023年8月25日(金)18:00–20:00
笹岡啓子(出品作家)、倉石信乃(明治大学教授、近現代美術史・写真史)
会場:東京都写真美術館1階ホール
参加費:無料(要入場整理券)
定員:190名(整理番号順入場/自由席)

2023年9月30日(土)15:00–17:00
遠藤麻衣子(出品作家)他
会場:東京都写真美術館1階ホール
参加費:無料(要入場整理券)
定員:190名(整理番号順入場/自由席)

2023年10月9日(月・祝)13:00–15:00
今井祝雄(出品作家)、平沢剛(本展企画協力)
会場:東京都写真美術館1階ホール
参加費:無料(要入場整理券)
定員:190名(整理番号順入場/自由席)

出品作家による上映:崟利子
2023年8月26日(土)
会場:東京都写真美術館 1Fホール
定員:190名
料金:当日券(1プログラムにつき)500円
※全席指定/各回定員(190名)入替制/立ち見不可/事前予約不可
※崟利子(出品作家)、とちぎあきら(フィルムアーキビスト)をゲストに迎えたアフタートークがある上映回もあり。詳細は公式ウェブサイトを参照

出品作家による上映:遠藤麻衣子
2023年8月27日(日)
会場:東京都写真美術館 1Fホール
定員:190名
料金:当日券(1プログラムにつき)500円
※全席指定/各回定員(190名)入替制/立ち見不可/事前予約不可

風景論をめぐる映画特集:平沢剛(キュレーター、本展企画協力)
2023年8月24日(木)、10月6日(金)、10月7日(土)、10月8日(日)、10月9日(月・祝)、10月12日(木)、10月13日(金)
会場:東京都写真美術館 1Fホール
定員:190名
料金:当日券(1プログラムにつき)500円
※全席指定/各回定員(190名)入替制/立ち見不可/事前予約不可
※山崎裕(出品作家、撮影監督)、後藤和夫(出品作家、映像作家)をゲストに迎えたアフタートークがある上映回もあり。詳細は公式ウェブサイトを参照

Copyrighted Image