Viva Video! 久保田成子展 @ 新潟県立近代美術館


久保田成子《デュシャンピアナ:階段を降りる裸体》1976年 Photo by Peter Moore
Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation; © Estate of Shigeko Kubota

 

Viva Video! 久保田成子展
2021年3月20日(土)- 6月6日(日)
新潟県立近代美術館
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/
開館日時:9:00-17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、5/3は開館)

 

新潟県立近代美術館では、前衛芸術家集団「フルクサス」での活動やヴィデオアートにおける先駆的な試みにより国際的に活動した久保田成子の大規模個展『Viva Video! 久保田成子展』が開催される。

日本国内では約30年ぶり、没後初となる本展は、ニューヨークの久保田成子ヴィデオ・アート財団の全面的協力の下、復元されたヴィデオ彫刻のほか、作家自身が保管していたドローイング、資料などを中心に、国内美術館の所蔵作品や遺族からの借用品を含め、初公開資料も数多く出品される。その名は知られつつも、いまだその現代美術への貢献が十分に評価されているとは言い難い久保田成子について、本展では初期から晩年までの創作活動を時系列で紹介し、最新研究に基づいた新たな作家像を提示する。

比較的自由な家庭環境に育った久保田成子(1937-2015、新潟県生まれ)は、彫刻家を志し、東京教育大学(現・筑波大学)で学ぶために上京し、卒業後は東京の前衛美術のコミュニティに参加する。しかし、女性アーティストの活躍の場が限られていることに失望した久保田は、塩見允枝子とともに1964年にニューヨークへと移住を決意する。本展は、1963年の内科画廊での初個展の資料とともに、同時代のグループ音楽、ハイレッド・センター、オノ・ヨーコ、ナムジュン・パイクらとの関係を紹介しながら、渡米前の東京時代の久保田の足跡を明らかにする第1パートからはじまる。続くパートでは、フルクサスでの活動や、最初の夫である作曲家デヴィッド・ベアマンを含むソニック・アーツ・ユニオンとの関わりなど、ニューヨークを拠点とする国際的なアーティストたちとの交流をたどる。ニューヨークに渡った久保田はフルクサスの代表であるジョージ・マチューナスと協働し、さまざまなプロジェクトに関わりながら、《フルックス・ナプキン》(1965)や《フルックス・メディシン》(1966)を制作、また、1965年の「パーペチュアル・フルックス・フェスト」では、パフォーマンス《ヴァギナ・ペインティング》を発表している。

 


Shigeko Kubota Portrait © Tom Haar, 1972, Courtesy of Tom Haar and Shigeko Kubota Video Art Foundation


久保田成子《三つの山》1979 年 Photo by Peter Moore, Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation; © Estate of Shigeko Kubota

 

第3パートでは、1970年代に入り、生涯のパートナーとなるナムジュン・パイクとの共同生活から、ソニーのポータパックを入手し、ヴィデオを使った作品制作に取り組む時期を扱う。ひとりでヨーロッパを旅しながら撮影したヴィデオによる日記《ブロークン・ダイアリー:ヨーロッパを一日ハーフインチで》(1972)や、メアリー・ルシエなどの女性アーティストとのコラボレーションを紹介。続く、第4パートでは、マルセル・デュシャンとの出会いから生まれた代表作「デュシャンピアナ」シリーズが一堂に会す。同シリーズのひとつ、《デュシャンピアナ:階段を降りる裸体》(1976)は、階段を歩く女性ヌードモデルの動きを木製の階段の中に設置された4台の小型モニターに映し出したもので、ニューヨーク近代美術館がはじめて収蔵したヴィデオ彫刻作品。また、この時期に久保田はドクメンタ6(1977)にも参加し、国際的な評価も高まっていく。5番目のパートでは、1980年頃から水やモーター、プロジェクションによる動きといった要素を取り入れ、ヴィデオ彫刻が空間的にも時間的にも拡張していく過程を紹介する。天井から下向きに吊るされた3台のモニターと、揺れ動く水で満たされたステンレス製の巨大な水槽で構成された《河》(1981)は、鑑賞者を複数の視点からの相互作用と思索に誘う。また、1991年の冬季オリンピックで銀メダルを獲得したフィギュアスケート選手、伊藤みどりをモデルにした《スケート選手》(1993)やパイクの故郷の墓をモチーフにした《韓国の墓》(1993)など、日本初公開のヴィデオ彫刻も出品。1991年にはニューヨークのアメリカン・ミュージアム・オブ・ザ・ムービング・イメージで回顧展が開かれ、同展の一部は原美術館(1992)など、国際巡回した。96年にパイクが脳卒中で倒れてからはサポートのため、作家としてのキャリアを中断。パイクがリハビリする姿を映像で記録した《セクシャル・ヒーリング》(1998)を2000年に発表。パイクの死後、2007年にマヤ・ステンダール・ギャラリーで開催した『パイクとともに歩んだ人生』が生前最後の個展となった。

会期中には、生前の久保田をよく知る金沢21世紀美術館長の島敦彦と、美術家の吉原悠博によるスペシャルトークイベントなどの関連イベントを開催。吉原は本展の締めくくりに、久保田とパイクが30年あまりを共に制作し、生活したソーホーのロフトを題材に、久保田と交流のあった人物たちのインタビューをコラージュした映像作品を展示する。なお、展覧会公式図録は5月下旬に河出書房新社より刊行予定。本展は、新潟県立近代美術館を皮切りに、国立国際美術館(2021年6月29日〜9月23日)、東京都現代美術館(2021年11月13日〜2022年2月23日)への巡回を予定している。

 


久保田成子《河》1981年 Photo by Peter Moore, Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation; © Estate of Shigeko Kubota


久保田成子《韓国の墓》1993年 Installation View (Maya Stendhal Gallery, 2007) Photo by Ian C. Roberts

 

関連イベント
スペシャルトークイベント
ゲスト:島敦彦(金沢21世紀美術館長)、吉原悠博(美術家、写真館主) 
2021年5月2日(日)14:00-15:30
会場:新潟県立近代美術館 講堂
定員:35名(要事前申込、申込順)、聴講無料(※要観覧券)
※申込方法など、詳細は下記URLを参照。
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/event/kubota_sptalk/

美術鑑賞講座
「映像美術の誕生」
講師:藤田裕彦(新潟県立近代美術館学芸課長)
2021年4月17日(土)14:00-15:30
会場:新潟県立近代美術館 講堂
定員:35名(要事前申込、申込順)、聴講無料
※申込方法など、詳細は下記URLを参照。
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/event/2021_lecture01/

美術鑑賞講座
「新潟から世界へ ヴィデオ・アーティスト 久保田成子」
講師:濱田真由美(新潟県立近代美術館主任学芸員)
2021年5月15日(土)14:00-15:30
会場:新潟県立近代美術館 講堂
定員:35名(要事前申込、申込順)、聴講無料
※申込方法など、詳細は下記URLを参照。
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/event/2021_lecture02/

映画鑑賞会
『ウォールデン』
2021年5月22日(土)13:00-16:00(途中休憩あり)
会場:新潟県立近代美術館 講堂
定員:35名(要事前申込、申込順)、参加無料(※要観覧券)
※申込方法など、詳細は下記URLを参照。
https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/event/2021_movie01/

担当学芸員によるギャラリートーク
2021年3月28日(日)、4月25日(日)、6月6日(日)各回14:00-
会場:新潟県立近代美術館 企画展示室
申込不要、参加無料(※要観覧券)

 


久保田成子《ナイアガラの滝》(部分) 1985年 Photo by Peter Moore, Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation; © Estate of Shigeko Kubota


久保田成子《デュシャンピアナ:自転車の車輪1、2、3》と《三つの山》の展示風景(原美術館、1992年)撮影:内田芳孝 Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation; © Estate of Shigeko Kubota

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