久保田成子《ナイアガラの滝》1985/2021年 久保田成子ヴィデオ・アート財団蔵
（新潟県立近代美術館での展示風景、2021年）撮影：吉原悠博 © Estate of Shigeko Kubota
Viva Video! 久保田成子展
2021年6月29日（火）- 9月23日（木・祝）
国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/
開館時間：10:00-17:00（金曜、土曜は21:00まで）入場は閉館30分前まで
休館日：月（ただし、8/9、9/20は開館）、8/10
展覧会担当：橋本梓（国立国際美術館 主任研究員）
国立国際美術館では、ヴィデオ・アートの黎明期より、ヴィデオによる日記や映像と彫刻を組み合わせた「ヴィデオ彫刻」といった先駆的な実践を試みたことで知られる久保田成子の大規模な回顧展『Viva Video! 久保田成子展』を開催する。
日本国内では約30年ぶり、没後初となる本展は、現代美術への貢献に比して十分とは言えない久保田の評価を再検討すべく、最新の研究に基づいた新たなアーティスト像を提示することを目的としている。その遺産を保護し、発展させるために設立された久保田成子ヴィデオ・アート財団の全面的協力の下、本展では、復元されたヴィデオ彫刻のほか、アーティストによって保管されていたドローイング、資料などを中心に、国内美術館の所蔵品や遺族からの借用品も含め、初公開資料も数多く出品し、その活動全体を展覧する。
久保田成子《デュシャンピアナ：階段を降りる裸体》1975–1976/1983年 富山県美術館蔵（新潟県立近代美術館での展示風景、2021年）撮影：吉原悠博 © Estate of Shigeko Kubota
時系列に５つのパートで構成される本展は、まず、比較的自由な家庭環境で育った久保田成子（1937-2015、新潟県生まれ）が、彫刻家を志して東京教育大学（現・筑波大学）で学び、1964年にニューヨークへと渡米した時期の活動の紹介からはじまる。そこでは、1963年の内科画廊での初個展の資料とともに、同時代のグループ音楽、ハイレッド・センター、オノ・ヨーコ、ナムジュン・パイクらとの関係を紹介。続くパートでは、女性アーティストの活躍の場が限られていることに失望し、塩見允枝子とともに1964年にニューヨークへと移った久保田が、フルクサスの代表であるジョージ・マチューナスと協働しながら取り組んだ活動や、最初のパートナーである作曲家デヴィッド・ベアマンを含むソニック・アーツ・ユニオンとの関わりを紹介する。
３つ目のパートでは、生涯のパートナーとなるナムジュン・パイクとの共同生活をはじめ、ソニーのポータパックを入手したことでヴィデオを使った作品制作へと移行していった時期を扱う。４つ目のパートでは、マルセル・デュシャンとの出会いから生まれた代表作「デュシャンピアナ」シリーズが一堂に会す。同シリーズのひとつ、《デュシャンピアナ：階段を降りる裸体》（1975–1976/1983）は、階段を歩く女性ヌードモデルの動きを木製の階段の中に設置された４台の小型モニターに映し出したもので、ニューヨーク近代美術館がはじめて収蔵したヴィデオ彫刻作品。また、この時期に久保田はドクメンタ６（1977）にも参加し、国際的な評価も高まっていった。最後のパートでは、水やモーター、プロジェクションによる動きといった要素を取り入れることで、ヴィデオ彫刻が空間的にも時間的にも拡張をみせはじめた時期、そして、身体にまひを抱えたパイクを全面的にサポート、その死を看取り、自身も病と闘いながら制作した晩年の作品を紹介する。
展覧会の締めくくりには、久保田とパイクが 30 年あまりを共に制作し、生活したソーホーのロフトを題材に、久保田と交流のあった人物たちのインタビューをコラージュした吉原悠博の映像作品も展示する。会期中には、シンポジウムやギャラリートークなどを開催予定。詳細は決まり次第公式ホームページやSNSで発表される。なお、新潟県立近代美術館ではじまった本展は、国立国際美術館での開催ののち、東京都現代美術館（2021年11月13日〜2022年2月23日）への巡回が予定されている。
久保田成子《メタ・マルセル：窓（花）》（部分）1983年 Photo by Peter Moore、Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation © Estate of Shigeko Kubota
久保田成子《スケート選手》1991-92年 久保田成子ヴィデオ・アート財団蔵（新潟県立近代美術館での展示風景、2021年）撮影：吉原悠博 © Estate of Shigeko Kubota