第18回中之島映像劇場「生存の技法−パーソナル・ドキュメンタリーの光−」@ 国立国際美術館


 

第18回中之島映像劇場「生存の技法−パーソナル・ドキュメンタリーの光−」
2019年11月9日(土)、11月10日(日)
国立国際美術館 地下1階講堂
http://www.nmao.go.jp/
※上映スケジュールは最下部に記載

 

「美術と映像」の歴史的な変遷を探り、映像における現代の状況を考察する中之島映像劇場が、11月9日、10日の二日間にわたり、国立国際美術館で開催する。

18度目の開催となる今回は「生存の技法−パーソナル・ドキュメンタリーの光−」のテーマの下、福田克彦、石井秀人、加藤治代の3作家の作品を上映する。映画というメディアは、大規模な予算で集団製作された商業作品が世の中に流通する一方で、個人的なモチーフや家族との親密な時間、日常を記録しつづけてもいる。日記映画の可能性やパーソナル・ドキュメンタリーの系譜のなかで、映像制作と生きること自体の営みがどのように交わってきたのかを再考する作業が求められる今日、本企画では、プライベートな領域で連綿と受け継がれる生命の営み、その生成・消滅のプロセスを見つめた映像作家の試みに焦点を合わせる。

福田克彦は成田空港建設反対闘争の現場を撮影した小川プロダクションで助監督をつとめ、山形に移住した小川紳介たちの下から単身で三里塚に戻り、その土地で生きて闘う人々の姿と声を記録した。本企画では、成田空港の第二期工事予定地にひとりで暮らす84歳の染谷カツの生活に三年間密着し、空港建設反対闘争を闘った染谷の明治・大正・昭和を生きた「自分史」を、日常の生活、草をとるリズムにのせ、19の小話に分節して語り起こした代表作《草とり草紙》、同作撮影後、晩年の染谷を撮影したプライベート・フィルム《あやめ祭り−染谷カツのその後−》をAプログラムで紹介する。また、Bプログラムでは、三里塚青年行動隊のメンバーが菱田地区の水捌けの悪い湿田を、試行錯誤しながら独自の方法で排水設備を整えていく姿を記録した《土の行進−三里塚一四年 青年たちはいま−》、機動隊のガス銃が頭部に直撃して亡くなった三里塚青年行動隊の東山薫をめぐる声とその死から経過した時間を綴った《ヒーロー伝説 ザ・カオル》、そして、34歳で他界した妻の記憶を彼女が描いた絵と夫のインタビューで辿り直した《逝けなかった魂》を上映する。

 


福田克彦《草とり草紙》1985年

 

Cプログラムで特集する石井秀人は、1984年に祖父が亡くなった後の祖母とその生活を支える母親の姿を記録した《家・回帰》をPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で発表し、入選。以来、2000年まで8mm フィルムによる個人映画を断続的に撮影し、自身と家族の抜き難い関係性、 あるいは事物の存在や光そのものを見据える作品を制作した。本企画では《家・回帰》のほか、東北地方に通い詰めた石井が列車の車窓からみえる風景と車内で出会った人々を撮影した《風わたり》、降り注ぐ木漏れ陽に覆われた画面にフィールド・レコーディングされた音声が重ねられる《光》を上映する。Dプログラムでは、映画美学校で故・佐藤真監督に師事した加藤治代が、癌を宣告された母親との生活を記録した《チ ーズとうじ虫》を上映する。同作は2005年に山形国際ドキュメンタリー映画祭小川紳介賞・国際批評家連盟賞を受賞するなど、国内外の映画祭で高い評価を得ている。

 

上映スケジュール
※各日10:00から当日の各プログラムの整理券を配布(1名につき1枚)
※参加無料・全席自由・先着130名・各プログラム入れ替え制

2019年11月9日(土)13:00-
Aプログラム
福田克彦《草とり草紙》(16mm[8mm ブローアップ]/82 分/1985年)
※《草とり草紙》上映後には、同作に登場する染谷カツの晩年を福田が撮影した《あやめ祭り−染谷カツのその後−》のデジタル上映あり
※冒頭、国立国際美術館客員研究員による企画の解説あり

2019年11月9日(土)15:00-
Bプログラム
福田克彦《逝けなかった魂》(8mm/16 分/1980年)※デジタル上映
福田克彦《土の行進−三里塚一四年 青年たちはいま−》(8mm/51 分/1980年)
福田克彦《ヒーロー伝説 ザ・カオル》(8mm/30 分/1986年)

2019年11月10日(日)12:30-
Cプログラム
石井秀人《家、回帰》(8mm/18 分/1984年)
石井秀人《風わたり》(8mm/30 分/1991年)
石井秀人《光》(8mm/48 分/1999年)
※冒頭、国立国際美術館客員研究員による企画の解説あり

2019年11月10日(日)14:50-
Dプログラム
加藤治代《チーズとうじ虫》(DV/99 分/2004年)

 


石井秀人《家、回帰》1984年


加藤治代《チーズとうじ虫》2004年

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