長島有里枝 x 竹村京「まえといま」@ 群馬県立近代美術館


竹村京「Playing Cards in Mirrors」2013-19年 撮影:木暮伸也

 

長島有里枝 x 竹村京「まえといま」
2019年7月13日(土)-9月1日(日)
群馬県立近代美術館 展示室1
http://mmag.pref.gunma.jp/
開館時間:9:30-17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7/15、8/12は開館)、7/16
企画:田中龍也(群馬県立近代美術館学芸員)

 

群馬県立近代美術館では、主要な制作方法は異なれど、記憶や家族などといったテーマに取り組んできた同世代のふたりのアーティスト、長島有里枝と竹村京の二人展『まえといま』を開催する。同館所在地の高崎市は、長島にとって母方の祖父母の出身地で幼少期からたびたび訪れていた土地であり、一方、竹村にとっては10年以上にわたり拠点としてきたドイツ・ベルリンから帰国し、拠点を移した土地である。ともに1970年代生まれでそれぞれの生活、制作活動を歩んできたふたりが、高崎の地で交差する。

長島有里枝(1973年東京都生まれ)は、90年代に家族とヌードで撮影したセルフ・ポートレイトや同時代のユースカルチャーをコミュニティの内側から記録した写真群により注目を集め、アイデンティティや家族など、他者との関係性をテーマに写真作品を中心とした制作を続けている。2000年代後半には文芸誌『群像』で連載をはじめるなど、執筆活動にも取り組み、2010年には同連載をまとめた『背中の記憶』(講談社)で第26回講談社エッセイ賞を受賞した。近年は、『縫うこと、着ること、語ること。』(デザイン・クリエイティブセンター神戸、2016)、『そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。』(東京都写真美術館、2017)、『作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝』(ちひろ美術館・東京、2018)、『知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本』(横浜市民ギャラリーあざみ野、2019)など、社会における家族や女性のあり方に焦点を当てた制作を重点的に発表している。

竹村京(1975年東京都生まれ)は、写真やドローイングに刺繍を施した布を重ねたインスタレーションを中心に、失われたものの存在やその記憶を扱う作品を展開している。2000年に留学したベルリンに、東京藝術大学美術研究科を修了した2002年に拠点を移し、以来、2015年に帰国するまで同地を拠点に活動。東京とベルリンでの個展を中心に、第15回シドニー・ビエンナーレ(2006)や『アーティスト・ファイル2008』(国立新美術館)などで作品を発表してきた。2015年の帰国後は高崎に拠点を移し、『なんか空から降ってくるよ』(タカ・イシイギャラリー東京、2016)、『どの瞬間が一番ワクワクする?』(ポーラアトリウムギャラリー、2018)などで個展を開催している。

これまでも祖母が撮影した古い花の写真を作品のモチーフにしてきた長島だが、本展では祖母が遺した種類ごとに丁寧に分けて保管していた花弁や葉、茎などを引き継ぎ、大量の押し花を印画紙の上に直接ならべて焼き付けた新作「過去完了進行形」を発表する。長島の短編集『背中の記憶』には、高崎の親戚の家で過ごした幼少期のエピソードや、大好きだった祖母の遺品の中から発見された庭の植物の写真をめぐる一文があり、本展にはそれらの写真を長島が再び撮影した作品や、祖父母の遺品を使ったインスタレーションも出品される。一方、竹村はこれまでも群馬県産の絹糸を作品の素材にしており、本展では群馬県が改良を重ねて世界で初めて実用的な繭生産に成功した「蛍光シルク」を用いた作品を発表する。同シリーズには、長島の母が金継ぎした長島のコーヒーカップを、竹村が透明な布でくるみ、継いだ箇所を蛍光シルクで刺繍して「修復」した作品も含まれる。また、竹村は今年、東京に暮らす両親を高崎に呼び寄せ、それにともない実家を取り壊したが、本展で新作として発表される「Gone Ginkos in Tokyo and Takasaki」は、東京の実家と高崎のお寺にあったイチョウを対比した作品となる。

会期中には、オープニング・パフォーマンスとしてゲスト・パフォーマーに安藤洋子を招いた竹村の「Curtain for Opening」を上演するほか、長島と竹村のアーティスト・トーク、また、長島、竹村それぞれによるワークショップなどを開催する。そのほか、群馬県立近代美術館では本展と同じく7月13日より、佃弘樹(1978年香川県生まれ)の特集展示『Monolog in the Doom』を開催、コレクション展示には、オノデラユキ、石内都、片山真理らの作品も出品を予定している。

 


長島有里枝『過去完了進行形』より「ミモサ、アカシヤ」2019年

 

関連イベント
オープニング・パフォーマンス 竹村京「Curtain for Opening」
ゲスト・パフォーマー:安藤洋子(ダンサー)
2019年7月13日(土)14:30-
会場:群馬県立近代美術館1階ギャラリー
※観覧無料、申込不要

アーティスト・トーク 長島有里枝x竹村京
2019年8月25日(日)14:00-15:30
会場:群馬県立近代美術館2階講堂
定員:200名(先着順)
※聴講無料、申込不要

ワークショップ 竹村京「あなたの大事な、壊れてしまったものについて」
2019年8月4日(日)13:00-16:00
会場:群馬県立近代美術館2階アトリエ
定員:20名(先着順)
対象:小学4年生〜一般
※参加無料、要申込(申込方法は公式ウェブサイトを参照)

ワークショップ 長島有里枝「拾ったもの、大切なものを日光写真に撮ろう」
2019年8月18日(日)13:00-16:00
会場:群馬県立近代美術館2階アトリエ
定員:20名(先着順)
対象:小学生〜一般(小学3年生以下は保護者同伴)
※参加無料、要申込(申込方法は公式ウェブサイトを参照)

学芸員による作品解説会
2019年7月24日(水)、8月10日(土)各日14:00-15:00
※要観覧料、申込不要

 

 


 

同時開催
[特集展示]「Monolog in the Doom」佃弘樹
2019年7月13日(土)-12月16日(月)
群馬県立近代美術館 展示室5
企画:谷内克聡(群馬県立近代美術館学芸員)

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