『既存の展示等を改変:RECALLS』@ TALION GALLERY


 

『既存の展示等を改変:RECALLS』
2019年2月23日(土)-3月24日(日)
TALION GALLERY、及び非公式の場所(東京国立近代美術館、六本木ヒルズ森タワー、2020年東京オリンピック開催予定地周辺等を予定)*
http://www.taliongallery.com/
開廊時間:11:00-19:00
休廊日:月、火、祝
※ オープニングレセプション:2月 23日(土)18:00-20:00
キュレーション:X、成相肇、橋本聡
*展示のほか、複数のイベントを予定。詳細は公式WEBサイトを参照。

 

TALION GALLERYでは、成相肇と橋本聡による、すでにあるもの、おこなわれたことを対象とし、依頼を受けることなく改変するプログラム「RECALL」の一環として、『既存の展示等を改変:RECALLS』を開催する。

RECALLは、成相と橋本が参加する基礎芸術 Contemporary Art Think-tankにて企画されたプログラム。これまでに東京都現代美術館で開かれた『MOTアニュアル2012 Making Situations, Editing Landscapes 風が吹けば桶屋が儲かる』を「Making Homelesses, Editing Sequences 天災は忘れた頃にやってくる」のタイトルの下に、展示会場にてギャラリートークを実施し、異なるキュレーションの可能性を示した。2015年には、上野の森美術館で開かれた『VOCA展 現代美術の展望-新しい平面の作家たち』を「VOCALIZE 声を出す・声に出す」という別のキュレーションに改め、会場および会場周辺でギャラリートークなどを実施した。RECALLは、キュレーションのキュレーションを行ない、事後行為にならざるを得ない批評の方法と異なり、物体を動かすことなく、現場で補助線を導き入れ、回路を変容させ、既存事物の乗り換えと路線変更を行い、客席側からキュレーションを包み返し、主体の位置をすげ替える。

成相肇(1979年島根県生まれ)は、戦後日本のアヴァンギャルド芸術を中心に調査研究を行ない、マンガ、大衆誌、広告ほか雑種的な複製文化と美術を交流させる領域横断的な展覧会を企画している。一橋大学言語社会研究科を修了したのち、2005年に府中市美術館学芸員に就任し、『石子順造的世界-美術発・マンガ経由・キッチュ行』(2011-12)などを企画。2012年から東京ステーションギャラリーに移り、『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい』(2014)、『パロディ、二重の声――日本の1970年代前後左右』(2017)などを手がけている。

橋本聡(1977年東京都生まれ)は、パフォーマンスや行為、インストラクションなど多岐にわたる方法で、鑑賞者のあり方や既存の制度を問い直す試みを実践している。2012年には東京国立近代美術館の『14の夕べ』で「偽名」を発表。近年は『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』(東京都現代美術館)への参加やバーゼルのアートフェアLISTEでの個展形式での発表「全てと他」(2016)、空港や飛行機などで試みた「Fw: 国外(日本-マレーシア)」(2016)、バルセロナのHans & Fritz Contemporaryでの個展『夜 – 時 = 闇』(2018)、ブラジル日本移民110周年記念 現代美術展『KYOJITSU-HINIKU: Between the Skin and the Flesh of Japan』(日本館、イビラプエラ公園、サンパウロ、2018)などで発表している。また、個人での活動のほか、An Art User Conferenceや基礎芸術|Contemporary Art Think-tankなど、グループとしても活動している。

 


『パロディ、二重の声――日本の1970年代前後左右』2017年、東京ステーションギャラリー ©Hayato Wakabayashi


橋本聡「ロープを伴い映画を観る」2018年、ロープ、映画、観客、Hans & Fritz Contemporary, バルセロナ

 

成相と橋本は本展に先立ち、2018年夏にはTALION GALLERYの「タリオン・ハンモック2018|ウィークエンドライブ&パフォーマンス」内のイベントとして、本展のプレイベント「Audience’s」を開催。以下は、同イベントに寄せられたステートメント。

 

Audienceʼs

あなたを展示する。あなたが展示される。
展示=見ることの指示、が隠蔽する展示以外を、展示以前と以後を、展示を待っているものを、展示する。
あなたが見せようとして身に付けてきたものも、見せるつもりもなくただあなたが持ち込んだものも。

45年前に寺山修司が書いていた。「世界の半分は老い、あとの半分は未成熟のまま放置されている」(*)。
表現は与え手と受け手双方の創造によって完遂されるものにもかかわらず、われわれは受け手側の創造に語り及ぶことを怠ってきた、と。「写真における「撮られ方の歴史」、映画館における暗闇の研究、読者人格、犯罪における被害者の分析、観客席考(…)、捕手の形而上学、街全体を一つの画廊として認識した場合に、従来の「画廊」は有効か」――課題を列挙した後に寺山は、「観客とか読者といった概念さえも消失すべくある」と結ぶ。
「与え手」の圧政に対する寺山の批判は、しかし、「与え手」と「受け手」の関係を平坦なものに固定化しかねない。だいいち、世界は半分半分だったろうか? まったき表現者も、まったき観客もそもそもいない。 観客と読者は、消失しない。

あらゆる展示は、つねに、展示からあふれる一歩手前の臨界点において成立する。ならばひとつのイベントにたまたま集った贋の連帯によって展示をあふれさせよう。すべての展示を経験することが不可能ならば、変換を続けよう。観客と非観客の権利構造を折り返すのではなく――もとより折り返せるフラットな関係があるのではない――、いっときの展示にせめて穴を穿とう。あるいはそれを多元化しよう。あなたが誰かの観客となり、誰かがあなたの観客となり、観客は輻輳し続けてゆく。
だから。
あなたを展示する。あなたが展示される。
(HN)
*寺山修司「半世界 受け手の表現 イントロダクション」『芸術倶楽部』1973年9月号

 


成相肇、橋本聡「Audience’s」2018年、観客、カメラ、写真、レーザー墨出し器、マイク、パフォーマー パフォーマー:成相肇、橋本聡、見目はる香


成相肇、橋本聡「Audience’s」2018年、観客、カメラ、写真、レーザー墨出し器、マイク、パフォーマー パフォーマー:成相肇、橋本聡、見目はる香

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