小瀬村真美:幻画〜像(イメージ)の表皮 @ 原美術館


「餐」ジクレープリント 2018年 © Mami Kosemura

 

小瀬村真美:幻画〜像(イメージ)の表皮
2018年6月16日(土)-9月2日(日)
原美術館
http://www.haramuseum.or.jp/
(ART iT内URL:https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
開館時間:11:00-17:00(祝日を除く水曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(7/16は開館)、7/17

 

原美術館では、主に17世紀西洋の写実的な静物画を参照した「静物動画」の制作を通じて、異なるメディアが生み出す現実らしさや虚構性、時間的・空間的構造など、イメージをめぐる考察を続ける小瀬村真美の美術館初個展『小瀬村真美:幻画〜像(イメージ)の表皮』展を開催する。


小瀬村真美は1975年神奈川県生まれ。2005年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画研究領域を修了。これまでに国内外のギャラリーでの個展のほか、『MOTアニュアル2004-私はどこからきたのか/そしてどこへいくのか-』(東京都現代美術館)や『East of Eden』(The Freer Gallery of Art and the Arthur M. Sackler Gallery、ワシントンD.C.、2007)など数々のグループ展に参加。2015年には第26回五島記念文化賞美術新人賞を受賞。

小瀬村の代表的な作品群は、静謐な静物画を模したセットを自ら組み立て、デジタルカメラでインターバル撮影し、その数千もの写真を繋げたアニメーションとして、再びイメージに時間的要素をもたらすという制作過程をとる。たとえば、2001年に制作した初期作「Decaying」では、ミケランジェロ メリージ ダ カラヴァッジョに影響を受けた17世紀のスペインやオランダの作家たちが描いた写実描写や陰影の強いコントラストを特徴とする静物画を引用し、「Sweet Scent」(2003)では、フランシスコ デ スルバランの「オレンジ、レモン、水の入ったコップのある静物」(1633)をもとにしている。絵画、写真、映像を横断するその制作過程は、像(イメージ)の表面の関心や物質的・触覚的な映像への挑戦などに対する気づきを与えるとともに、写真や映像特有の視覚的世界が立ち上がる瞬間の体験をもたらし、小瀬村自身の制作活動の展開を拡げる一要素となっている。

「映像や写真を撮影するということは、その設定がどんなに演劇的、虚像的であったとしても現実を映すことであり、私がすべきことは、その予測不可能な現実を、ただ注意深く見るための設定を整えることなのではないだろうか?もっと現実とは曖昧で、重要なことはその曖昧さの中に隠されているのではないだろうか?」と語る小瀬村は、近年、「Pendulum」(2016)や「Objects – New York -」(2016)といった、作家自身が「エラーの要素」と呼ぶ映像の歪みや正体不明のオブジェクトを絡め、美術の問題に還元されず、自身のコンセプトに縛られず、偶然を受け入れ、観る人の視線や経験に解釈を委ねる作品の制作に取り組んでいる。

 


「Objects – New York III -」 ジクレープリント 2016年 © Mami Kosemura

 

本展では、各展示室にテーマを掲げ、初期のアニメーション作品や、ニューヨークの路上に打ち捨てられていたゴミやがらくたを用い、17 世紀スペインの静物画を参照した写真作品に加え、あえて自らの制作過程を露にすることで絵画および自作を批評的に再考する新作の組写真やインスタレーションなど約30点を発表する。展覧会タイトルの「幻画」は、初期の映画的装置である「幻燈」と小瀬村の“動く絵画”を掛けたもので、副題の「像(イメージ)の表皮」は、小瀬村作品に特徴的な生々しさ、身体的触覚、匂い、物質性というニュアンスを表している。

 

関連イベント
Meet the Artist: 小瀬村真美
2018年7月7日(土)14:30-16:00
会場:原美術館ザ・ホール
定員:80名(要申込)、無料
申込方法:電話(03-3445-0651)またはEメール(event@haramuseum.or.jp)。Eメールの場合は、件名に「イベント申込み:Meet the Artist」、本文に氏名、電話番号(日中繋がる番号)、参加人数を記載すること。受付開始は6月19日から。

 


「Drape」 ジクレープリント 2014年 © Mami Kosemura


「粧」 ジクレープリント 2018 年(7点組) © Mami Kosemura

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