⼩森はるか《春、阿賀の岸辺にて》2025年
2025年2月18日、東京都、公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団 東京都写真美術館、⽇本経済新聞社は、恵比寿映像祭2025における第2回コミッション・プロジェクトの特別賞を、⼩森はるかに授賞すると発表した。
小森はるか(1989年静岡県生まれ)は、半世紀にわたり新潟水俣病の患者運動を支援、ドキュメンタリー映画『阿賀に⽣きる』(1992、監督/佐藤真)の発起人でもあり、「冥土のみやげ」企画という「文化運動」をひとりで続けている旗野秀⼈(新潟水俣病安田患者の会事務局長)を長く取材し、阿賀野川流域の風土や記憶の継承を試みた《春、阿賀の岸辺にて》(2025)を発表。審査委員は「⼀⾒シンプルなドキュメンタリー映画の形式をとりつつ、さまざまな世代の⼈々や時代を結び付ける試みや、既制作の作品と連続性を与えるなど多⾯性のある制作姿勢は途⽅もない試みであり、かつ独創性に富むという評価を得ると共に、極めて実験的で映画館のみならず、美術館での映像展⽰の展開を期待したい」と授賞理由を寄せた。
特別賞の受賞を受けて、小森は「撮影を始めてから10年近く経ってしまい、外に出すことへ怖気づく気持ちの⽅が⼤きくなっていた作品ですが、ファイナリストに選んでいただき、今回発表できたことを感謝いたします。審査委員のみなさんから”途⽅もない試み”という評価の⾔葉を贈っていただいたことを、しっかりと受け⽌めます。またファイナリストである牧原依⾥さん、⼩⽥⾹さん、永⽥康祐さんの新作と共に発表する機会を得られたのは、最も刺激的で幸運なことでした。関係性の中で⽣まれていく「記録」に終わりはないのだと勇気づけられました。そして、ここまで付き合い続けてくださった旗野秀⼈さん、撮影から展⽰・上映にいたるまでに協⼒してくださったすべてのみなさんに、深く感謝しています」と喜びの言葉を語った。特別賞を受賞した小森には、来年の恵比寿映像祭2026での特別展示の機会が提供される。
審査委員は、沖啓介(メディア・アーティスト)、斉藤綾子(映画研究者、明治学院⼤学教授)、レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]、Gudskul Ekosistemキュレーター)、メー・アーダードン・インカワニット(映画・メディア研究者、キュレーター、ウェストミンスター⼤学教授)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員、恵比寿映像祭キュレーター)が務めた。
小森はるか《春、阿賀の岸辺にて》2025年 展示風景「恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―」東京都写真美術館、東京、2025年
小森はるか《春、阿賀の岸辺にて》2025年 展示風景「恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージです―」東京都写真美術館、東京、2025年
コミッション・プロジェクトは、日本を拠点に活動する新進アーティストが新作映像作品の制作委嘱を受け、その成果を恵比寿映像祭の場で発表する試みとして恵比寿映像祭2023に始まった。映像祭が積み重ねてきたネットワークを活用し、国内外の⽂化施設や⽂化組織での発信に広げることで、アーティストの創造活動を⽀援するスキームの構築を目指している。
恵比寿映像祭2025は2月16日に閉幕したが、小森のほか、ファイナリストの小田香、永田康祐、牧原依里の作品を紹介している「恵比寿映像祭2025 コミッション・プロジェクト」は3月23日まで開催。
恵比寿映像祭2025 コミッション・プロジェクト
2025年1月31日(金)-3月23日(日)
※コミッション・プロジェクトを除く「恵比寿映像祭2025」は2月16日に閉幕
東京都写真美術館 3階展示室
https://www.yebizo.com/jp/archives/program_type/commission
開館時間:10:00-18:00(木曜、金曜は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:月