「YCAMオープンラボ2022:遍在するアートセンター」が開幕しました

9月11日に今日におけるアートや研究開発、公共文化施設のあり方を捉え直すトークイベント「YCAMオープンラボ2022:遍在するアートセンター」を開催し、「アートは使える?—くらしとの接点を探る」が終了しました。ご来場いただいたみなさまどうもありがとうございました。
「YCAMオープンラボ2022:遍在するアートセンター」は、来年2023年に開館20周年を迎えるYCAMが周年記念事業の一環として行うカンファレンス型のトークプログラムです。今日の公共文化施設における表現や研究活動のあり方を捉え直すと共に、この先地域と公共文化施設がどのような関係を結ぶことができるのかゲストや参加者と一緒に考えます。2日間に渡り行うトークプログラムの開催初日は国内外から5名のゲストにYCAM エデュケーターの会田大也を交え、専門家また地域生活者としてのそれぞれの立場からアートと公共文化施設の関わり方について話し合いました。
1つ目のプログラムのテーマは「アートの有用性」。アートが社会や個人に働きかけることができることの意義や可能性について考えます。同テーマについて「有用芸術(Arte Util/アルテ・ユテル)」という観点から長年研究と実践を行う、アリステア・ハドソンとジョン・バーンからこれまで美術館や大学でアーティストや研究者、市民と共に取り組まれてきたプロジェクト実例をご紹介いただきました。これらのプロジェクトはArte Utilのウェブサイトにアーカイブされています。
その後は、日本国内で実践を重ねてきた人々が事例を紹介しました。その1人目、アーツイニシア ティブトウキョウ[AIT]の堀内奈緒子さんは異分野間で互いの知見を交換しつつ、アートの使い勝手(有用性)を考える行為をチューニングのようだと話されます。美術館や児童福祉施設での鑑賞プログラムや子どもと一緒に行う双方向性のあるワークショップの実例をご紹介いただきました。
角麻衣子さんからは地域生活者としての視点からもお話しを伺いしました。角さんが営むオーガニックショップ「わっか屋(山口市・金古曽町)」では自家採種した自然農法の野菜や地域の福祉施設の方が制作した新聞バック、石油系塗料を使わない彫りの木製器の販売といった商品を扱います。「こうした商品のセレクトや日々の生活の中における創意工夫もアート未満の表現であり、自分達ならではの平和への宣言とも言えるのかも」と話されていました。この日スコットランドからオンライン登壇いただいた現代美術作家で山口現代芸術研究所の鈴木啓二朗さんからは、国内外でのアーティスト活動を通し見えてきた視点をご紹介いただきました。アートを媒介として地域と関わる上でアートセンターの方から地域で活動している方のことをイメージして承認していくという姿勢の重要性を実感していると話されました。プログラム終盤は、ご参加のみなさまから寄せられた質問やコメントを元にした議論も実施しました。
次回のプログラムは9月23日(金)です。13:00~16:00/16:30~18:30の二部構成で、前半はアート分野における識者・専門家と共にYCAMの未来について議論します。後半では、2023年にYCAMでの新作展覧会開催を控え、台湾から来日するアーティスト3名に話を伺います。トークプログラムの詳細や参加お申し込みはぜひウェブサイトをご覧ください。ご参加お待ちしています。

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