レポート:「YCAM 爆音映画祭2022」

▼「YCAM 爆音映画祭2022」終了!

8月26日(金)から8月28日(日)にかけて「YCAM爆音映画祭2022」が開催され、無事に全日程が終了しました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。

撮影:谷康弘

今年は昨年に比べて前方のスピーカーを吊り上げ、より広く音が届くようセッティングを増強、またスクリーンも昨年より上に上げて大きくし、鑑賞しやすくなりました。

最初の上映は『アメリカン・ユートピア』でした。昨年の「YCAM爆音映画祭2021」では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い上映中止になりましたが、1年の時を経て多くの観客が駆け付けました。上映後のトークでは、日本語字幕を監修したピーター・バラカンが登壇し「歌詞を改めて言語化し直すことで、曲が語ろうとしていることを深く理解できるようになった」と語りました。その後は音楽家・細野晴臣のアメリカツアーを記録した『SAYONARA AMERICA サヨナラ アメリカ』、ヴェンダースの名作『ベルリン・天使の詩』の4Kレストア版、『カモン カモン』の上映を行いました。『カモン カモン』の上映前には、恒例となりつつある「バックステージツアー」を開催。天井から床下まで設置されたスピーカーから、どのように音を出しているか解説したり、映画の1シーンを爆音用に調整して見せたりして、YCAMにおける爆音上映の特徴をご紹介しました。

撮影:谷康弘

2日目(8月27日)の開幕を飾ったのは、湯浅政明監督の『犬王』。その日一番早い時間の上映にも関わらず、ほぼ満席を記録しました。観客の内1人は「舞で床板を踏み鳴らす響きが重く伝わってきた」と、爆音ならではの振動を楽しんでいました。午後は奇想天外なミュージカル作品『ジャネット』『アネット』が続きます。『ジャネット』の振付を手がけたフィリップ・ドゥクフレは、YCAM開館時の柿落とし公演「IRIS」の作者でもあります。太鼓芸能集団「鼓童」の演奏を収めた『戦慄せしめよ』の上映後は、豊田利晃監督と俳優の渋川清彦さんが登壇しました。暴風が吹き付ける屋外で、非常に良質な音を録音できたシーンは、マイクを大太鼓の真下に付けたピンマイク1つだけに絞ったなど、収録の秘密が明かされました。2日目を締めくくる『ラストナイト・イン・ソーホー』では、60年代イギリスのヒット曲が多く登場します。「映画のアクションに合った個性的な音楽の使い方」だとバラカンさん推薦の一本でした。

撮影:谷康弘

最終日となる28日の一本目は、山口県出身の吉開菜央さんが手がけた『Shari』。上映後の吉開監督によるトークイベントでは、水中にマイクを挿し、流氷の音に合わせてその場で音楽を奏でたことや「流氷の叫びを聞いている気持ちになった」といった制作秘話が語られました。続く『GUNDAグンダ』の上映ののち、最後は今年3月に逝去した青山真治監督の『EUREKA/ユリイカ』『サッド ヴァケイション』の上映で幕を閉じました。クロージングトークでは、青山監督を写した秘蔵写真がスクリーンに公開され、樋口さんと青山監督の交流が語られます。実は2人は、爆音映画祭の始まりの地でもある東京・吉祥寺バウスシアターを題材にした映画を共同で作成中でした。企画は今も続いており、「完成したらぜひYCAM爆音映画祭で上映したい」と樋口さんはほほ笑みました。

撮影:谷康弘

9月2日から4日にかけて、YCAM爆音映画祭2022の機材セッティングでレコードやCDなどの録音物を聴くリスニングイベント「Audio Base Camp #1:はじめてのガチ聴き」を開催します。チケット販売中ですので、ぜひお買い求めください。

またYCAMシネマでは、ピーター・バラカンさんがセレクトした音楽映画を上映する「ピーター・バラカン音楽映画祭2022 in YCAM」も開催中です。YCAM爆音映画祭2022は終了しましたが、YCAMシネマでの映画上映はこれからも続きます。ぜひご来場ください。

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