和歌山の近現代美術の精華

海と山に囲まれた自然風土を背景に、独自の歴史と文化を育んできた和歌山県は、今年、誕生150年を迎えます。これを機に、「紀の国わかやま文化祭2021」と連携して開催する本展では、館蔵品はもとより国内各地から、和歌山の近代と現代をめぐる重要な作品を集め、和歌山で育まれた文化の魅力を紹介いたします。

川端龍子《筏流し》1959年 大田区立龍子記念館蔵

 


第1部 観山、龍子から黒川紀章まで

和歌山県は、明治期以降の美術の歴史において、大きな功績と独自の足跡を残した美術家を数多く輩出してきました。日本画の下村観山や川端龍子、洋画の川口軌外や村井正誠、版画の田中恭吉や彫刻の建畠大夢、保田龍門などがそうです。

また大正期に和歌山県出身の美術家を集めて南紀美術会を創立した徳川頼倫や徳川頼貞、文化学院を創設した西村伊作など、美術家がそれぞれの世界を築くために大切な貢献をした人物がいたことも忘れられません。

そして、デザインの分野で活躍した山名文夫、戦後の美術の展開に重要な役割を果たした建畠覚造や浜口陽三、また、まさに現在も活躍を続ける松谷武判や野田裕示、鈴木理策など、各分野で現代の美術をかたちづくる美術家もいます。

第1部では、本県ゆかりの美術家とその支援者たち、そしてそれぞれの仕事を紹介し、次世代につなぐ場として当館の建物を設計した黒川紀章まで、多様な作品や資料を一堂に集めてご覧いただきます。

下村観山《魔障》1910年 東京国立博物館蔵 *前期展示
石垣栄太郎《街》1925年 和歌山県立近代美術館蔵
石垣栄太郎《街》1925年 神奈川県立近代美術館蔵
建畠大夢《ながれ》1911年 東京国立近代美術館蔵
村井正誠《風の中の除幕式》1968年 和歌山県立近代美術館蔵

 

出品作家および団体

【日本画】下村観山、川端龍子、野長瀬晩花、日高昌克、稗田一穗

【洋画】川口軌外、原勝四郎、石垣栄太郎、村井正誠、松谷武判、宇佐美圭司、野田裕示

【彫刻】下村清時、建畠大夢、保田龍門、建畠覚造、保田春彦

【版画】田中恭吉、恩地孝四郎、逸見享、吉田政次、浜口陽三

【写真】鈴木理策

【デザイン】山名文夫、黒川紀章

【美術文化】南紀美術会、西村伊作、北山清太郎

*11月24日(水)に一部展示替えをおこないます。

 


第2部 島村逢紅と日本の近代写真

第2部では、和歌山市出身の写真家・島村逢紅(しまむら ほうこう)を、初めて本格的に紹介します。

島村逢紅(本名:安三郎/1890–1944)は和歌山市の酒造業などを営む家に生まれました。若い頃から美術に興味を持ち、中学時代から美術雑誌『みづゑ』に投稿して日本水彩画会会友になるなどの活動を始めました。美術学校進学は、家業を継ぐため断念しますが、絵画とほぼ同時期に始めた写真は、逢紅の生涯にわたる表現活動となりました。1912(明治45/大正元)年には、和歌山市にて「木国写友会」を結成して活動を本格化させ、雑誌の公募や展覧会などへの入賞によって次第にその名は全国に知られることになります。

1930年代には、福原信三が設立した「日本写真会」の同人となり、1939(昭和14)年に資生堂ギャラリーで初めての個展を開催します。芸術写真から新興写真へと移り変わる時代において、逢紅の作品はその独自の漆黒と階調表現により、福原信三の弟で同時代に活躍した写真家、福原路草と対比して「路草の白、逢紅の黒」と高く評されました。

本展では、交流のあった同時代を代表する写真家たち、福原信三、福原路草、野島康三、安井仲治、淵上白陽、そして「木国写友会」のメンバーだった島村嫰葉、島村紫陽、江本綾生の写真作品、また同郷の寺中美一や保田龍門、その出会いのきっかけともなった荻原守衛の作品も展示します。1910年代から40年代までの逢紅の作品約200点、その他の作家の作品約50点により、逢紅の足跡とその時代を振り返ります。

 

島村逢紅《スマイル》1920~30年代 個人蔵
島村逢紅《椿》1934年 個人蔵
島村逢紅[眼鏡と洋書]1930年代 個人蔵
島村逢紅《鮎》1943年 個人蔵

 

会場 和歌山県立近代美術館
会期 2021年10月23日(日)~12月19日(日)
開館時間 9時30分〜17時[入場は16時30分まで]
休館日 月曜日[ただし1122日(月・ふるさと誕生日)は開館し、11月24日(水)休館。]
観覧料 一般1000(800)円、大学生600(480)円( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
*10月23日、11月27日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料

*11月13日(土)、11月14日(日)は「関西文化の日」として観覧無料
*11月22日(月)は「ふるさと誕生日」として観覧無料

主催 和歌山県立近代美術館、NHK和歌山放送局、NHKエンタープライズ近畿
関連事業 和歌山県立近代美術館のサイトをご覧ください

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