美大じゃない大学で美術展をつくる vol.3 SOS 応答と対話で「何か」を探す @ 武蔵大学江古田キャンパス各所

 

美大じゃない大学で美術展をつくる vol.3
SOS 応答と対話で「何か」を探す

2025年8月30日(土)-8月31日(日)9:00-18:30
武蔵大学江古田キャンパス内(川縁・明王像、中庭・大ケヤキ、3号館・3125 教室、大講堂)、江古田駅・改札前掲示板
https://searchingofsomething.wordpress.com/
キュレーション:小森真樹(武蔵大学人文学部教授)
出品作家:西野正将(美術家、映像ディレクター)、ふくだぺろ(アーティスト、詩人、マルチモーダル人類学者)

 

2025年8月30日と31日の2日間、武蔵大学江古田キャンパスでは、「美大じゃない大学で美術展をつくる」のvol.3として、「SOS 応答と対話で「何か」を探す」を開催する。本プロジェクトは、武蔵大学人文学部教授の小森真樹が、同大学でキュレーションを行なう企画の第3回となる。なお、同日には表象文化論学会第19回大会が開催されている。

「SOS 応答と対話で『何か』を探す」プロジェクトは、コミッションワークを通じた制作、展覧会、対話セッションから構成される。これらは、アーティスト同士があらかじめ定めたルールに基づいて制作物を往還させる〈応答〉と、そのプロセスや作品についてキュレーターを含めて議論する〈対話〉というふたつのパートを中心に進められている。

展示会場は、武蔵大学江古田キャンパス内の4カ所(川縁・明王像、中庭・大ケヤキ、3号館・3125 教室、大講堂)に加え、江古田駅・改札前掲示板の計5カ所。出品作品には、西野正将ふくだぺろが互いに対話のように応じ合いながら制作した〈応答〉に加えて、武蔵大学の歴史そのものに対するアーティストたちの〈応答〉も含まれる。西野は、三号館中庭で朽ちたトネリコの大木から作られた記念バットの来歴を辿り、キャンパスの「地層」を地球史的なスケールで掘り下げ、人文学的に再生を試みる。ふくだは、キャンパス最古の人工物である不動明王像に、皇紀2737年の「Cyberpunk 武蔵明王」という未来の偽史を書き込み、せせらぎ広場の川縁にスペクタクルとして蘇らせる。これらふたつの歴史語りは、キャンパス以前の「墓跡」というトポスの記憶と交差しながら、大学の歴史を江古田の町へと響かせていく。また、本展の制作過程では、ChatGPTとのやりとりも取り入れられ、作品のモチーフや構図、寓意の扱い方について議論する様子が、展覧会のウェブサイト上で公開されている。

31日には、表象文化論学会のパネルとして〈対話〉を公開形式で実施し、展示物や制作の過程について制作者自身が語る機会が設けられる。また、ワークショップを通して参加者が制作の枠組みに参加することも可能。映像、詩、文学、インスタレーション、パフォーマンスなど表現手法に制限を設けず、完成された作品だけでなく試作品やオープンエンドなプロセスをあわせて提示することで、「展覧会をつくる」という行為そのものを考える機会を提供する。

 

 

西野正将(1982年大分県生まれ)は、映像、写真、プロジェクトとメディアにとらわれないスタンスに変化しながらも、日々の生活の中で感じる「違和感」を、日常を考察するための新たな視点として提示するスタイルで発表を続ける。2006年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現修士課程を修了した。また映像ディレクターとしても活躍し、美術館や芸術祭の記録映像の撮影を数多く手がけている。主な展覧会に、中之条ビエンナーレ2015(群馬)や黄金町バザール2016(神奈川)などがある。

ふくだぺろ(1982年兵庫生まれ)は、アーティスト、詩人、マルチモーダル人類学者で、京都大学にて特定研究員を務める。イギリス、ルワンダ、日本をフィールドに、現実と過去(未来)の創造を主要テーマとして、論文、映像、詩、写真、小説、スケッチなど多様なメディアを用い、マルチモーダルに活動している。ルワンダのトゥワ(Batwa)と呼ばれる元狩猟採集民のコミュニティにおける暴力と音楽については、感情や身体性に焦点を当てたアプローチで研究を行なっている。主な詩集として、英語と日本語、余白の三つの言語を駆使した『flowers like blue glass』(Commonword Enterprises Ltd、2018)などがある。研究と芸術、各表現メディアの境界を越えた活動を通じ、人類学的な知をマルチモーダルな表現によって再定義している。

小森真樹(1982年岡山生まれ)は、アメリカ文化研究およびミュージアム研究で、特に博物館や美術館における歴史語りの再構築や展示が持つ政治性を主な関心領域としている。キュレーション、雑誌編集、批評にも携わる。現在は、武蔵大学人文学部教授、立教大学アメリカ研究所所員を務める。主な著作に、『歴史修正ミュージアム』(太田出版、2025)、『楽しい政治 「つくられた歴史」と「つくる現場」から現代を知る』(講談社、2024)。企画に、『美大じゃない大学で美術展をつくる|vol.1 藤井光〈日本の戦争美術 1946〉展を再演する』 (ART DIVER、2025)、ウェブマガジン〈-oid〉(2022-)、古民家を活用したゲストハウス型プロジェクト『かじこ|旅する場所の108日の記録』(三宅航太郎、蛇谷りえと共著、2010)などがある。

 

関連イベント
美術展制作の構造の中に組み込んだ「対話」を表象文化論学会のパネルで公開する──東京・練馬=ルワンダ・ムサンゼ
2025年8月31日(日)13:30-15:30
会場:武蔵大学6号館6201教室
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