キュラトリアルシンポジウム「家鳴」が東京都写真美術館で開催


デザイン:鈴木哲生

 

2025年5月31日と6月1日の2日間にわたり、見えない存在の残響を通して、映像メディア、展覧会、地政学のもつれを探求するキュラトリアルシンポジウム「家鳴」が東京都写真美術館 1階ホールで開催される(事前予約制・先着順)。

本シンポジウムを主催する一般社団法人0-eAは、変化する日常の追い風となり、発想の転換と実践を促すキュレーション空間の創出に取り組むキュラトリアル・イニシアティブ。本シンポジウムでは、ソウル市立美術館のパートナー事業として、映像作品の上映、パフォーマティヴな講演、学術的なパネルディスカッションを通じて、東アジアに焦点をあてたスクリーンプラクティス、展覧会史や地政学的な想像力における物質的・情動的な不安定さに対し、キュラトリアルな実践がいかに応答しうるのかを考察する。

初日の5月31日のセッション1「霊魂のテクノロジー」では、第13回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレの芸術監督を務めるアントン・ヴィドクルルーカス・ ブラシスキスヘイリー・エアーズによる「交霊会(séance)としての展覧会」と呼ぶ試みを通じて、通常の知覚を超えた認識領域との交信を試みてきた人類の長い歴史に着目し、それがアート制作の言語と方法をいかに変容したかを概観。プレゼンテーションと上映会を基に、美術批評家の沢山遼が応答、ソウル美術館学芸員でMedia City Seoulプロジェクトディレクターの權辰(クォン・ジン)と東京都写真美術館学芸員で恵比寿映像祭キュレーターの田坂博子によるパネルトーク「制度と企画のはざまで:実験とオルタナティヴに向けて」(進行:馬定延)を開催する。本セッションは、第13回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレのプレイベントとして昨年11月にソウル、今年2月にニューヨークで開かれた「Notes for a Séance」に続く講演となり、6月中旬のベルリンのICI(Berlin Institute for Cultural Inquiry)での発表に引き継がれ、巡回する予定となっている。

 


ジェーン・ジン・カイスン《残骸》2024年 Courtesy of the artist


マヤ・デレン《変形された時間での儀礼》1946年 Courtesy of Re:Voir, Paris, for Tavia Ito, Maya Deren estate

 

6月1日はセッション2「「自由世界」の幻想」とセッション3「博覧会のレガシー」を開催。セッション2では、アーティストの李繼忠(リ・カイチュン)による「パラダイス読解:剥き出しの生、児童書、香港の文化冷戦」と題したパフォーマティブ講演と、仁川アートプラットフォーム芸術監督の金炫辰(キム・ヒュンジン)、台北芸術大学准教授でキュレーター兼美術史家の郭昭蘭(ゴ・ジャウラン)、アーティストの藤井光が登壇するパネルトーク「拡張した前線と多孔的なアーカイヴ」(進行:飯岡陸)を開催。20世紀半ばの東アジアにおいて、文化的かつ美的な文脈の形成がイデオロギーの断層線上にいかにして形成されてきたかに目を向ける。

セッション3では、「アジア地域の展覧会史における1970年大阪万博(仮題)」(進行:池田佳穂、大坂紘一郎)と題したパネルトークに、シンガポール国立大学准教授でライター兼キュレーターのデビッド・テ、インディペンデント・キュレーターのグレース・サンボー、シンガポール・ナショナル・ギャラリー学芸員のキャスリーン・ディッツィ、ライター兼研究者の苏佳敏(ソ・ケイミン)が登壇し、大阪万博が国外のアーティスト、知識人、キュレーターの習慣に与えた影響を探り、今日の「グローバル」な展覧会制度をかたちづくることとなった契機、国境を越えた交流や言説の転換について論じる。

なお、本シンポジウムの開催にあわせて、0-eAのウェブサイトにパトリック・D・フローレス、ゲシヤダ・シレガル、サイモン・スーンによる批評テキストの翻訳を収めた、​​キュラトリアル実践に関する小論集『公共なき実践:間-地域のキュラトリアル私研究に向けて』(飯岡陸・池田佳穂・大坂紘一郎 共編)が無料のPDF資料として公開される(5月下旬公開予定)。

 

キュラトリアルシンポジウム「家鳴」
2025年5月31日(土)13:00〜18:00(開場:12:30)
6月1日(日)13:00〜17:00(開場:12:30)
会場:東京都写真美術館 1階ホール
定員:120名(事前予約制・先着順)
言語:英語および日本語(同時通訳つき)
参加料:一般1,200円/学生600円
申込方法(Peatix):https://yanari.peatix.com/
シンポジウム詳細ページ:https://0-ea.art/journeys/yanari/index.html

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