アートバーゼル2025が各種プログラムのハイライトを発表


Exhibition view, Centre Pompidou, Metz Courtesy Centre Pompidou – Metz; Gagosian; Galerie Max Hetzler; Galerie nächstSt. Stephan Rosemarie Schwarzwälder © Adagp, Paris 2024 Photo: Jens Ziehe

 

2025年6月19日から22日の4日間(内覧会は17日、18日)にわたり、42カ国/地域から289軒のギャラリーの参加が見込まれる世界有数の近現代美術のアートフェア「アートバーゼル2025」の各種プログラムにおけるハイライトが発表となった。(ギャラリー部門や市内美術機関のプログラムについては「アートバーゼル2025がラインナップを発表」を参照。)

メッセプラッツのプロジェクトを手がけるのは、シュトゥットガルト州立美術館(2025年4月11日〜2026年1月11日)、ハンブルク現代美術館(2025年6月5日〜9月14日)の大規模個展にも関心が集まるドイツを代表するアーティスト、カタリーナ・グロッセ。「既存の境界を超え、現実に流動性を与える」可能性を色彩に見出すグロッセは、その代名詞とも言えるスプレーガンを駆使し、メッセプラッツおよびその周辺の空間の変容を試みる。キュレーションは、サーペンタインの建築およびサイトスペシフィック・プロジェクト部門キュレーターのナタリア・グラボウスカが初担当。

 


Hamburger Bahnhof – Museum für Gegenwart, Berlin Courtesy: König Galerie / Gagosian / Galerie nächst St. Stephan RosemarieSchwarzwälder / Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie Photograph: Nic Tenwiggenhorn © VG Bild-Kunst, Bonn 2025

 

従来のアートフェアのブースでは展示不可能な大型作品や広い空間を必要とする展示を紹介するアンリミテッド部門(Unlimited)では、クンストハレ・ザンクト・ガレンのディレクター、ジョヴァンニ・カルミネのキュレーションの下、新作を含む68作品を紹介する。注目は、アンドレア・ビュットナーが継続的に取り組んでいる恥と視覚文化の関係をめぐる作品《Shame Punishments》(2022-2025)、カロリーヌ・アシャントルの自身最大規模の新作テキスタイル作品《Gobbler》(2025)、コジマ・フォン・ボニンによるキャンバス上で奮闘するダフィー・ダックをモチーフに消耗やパフォーマンス、実存的緊張を探求したシリーズの新作、フェリックス・ゴンザレス゠トレスの《Untitled (Go-Go Dancing Platform)》(1991)、世界的地下鉄ネットワークを構想したマーティン・キッペンバーガーの《METRO-Net Transportabler U-Bahn Eingang [METRO-Net Transportable Subway Entrance]》(1997)、アトリエ・ヴァン・リースホウトが過去4年間をかけて制作してきた大規模インスタレーション《The Voyage – A March to Utopia》(2025)、ミラ・ショアの長いキャリアにおける重要なマニフェストとしても知られる絵画《Sexual Pleasure》(1998)、エジプトのカイロを拠点に活動するダンス・コレクティブnasa4nasaが世界初演する19世紀のベリーダンスに着想した28分間のパフォーマンス《Sham3dan (Candelabra)》(2024)。そのほか、草間彌生李禹煥西村有の作品も展示予定。6月19日はアンリミテッド・ナイトと称して開場時間を延長し、特別なパフォーマンスなども披露される。

 


ChertLüdde and acb Portrait of Selma Selman by Réka Hegyháti Courtesy of acb Galéria, Budapest and ChertLüdde, Berlin and Studio Selma Selman, Berlin


namak halal/namak haram Commissioned by Somerset House Image courtesy Himali Singh Soin and David Soin Tappeser

 

フェア会場を離れて、クララ通りからライン川沿いのホテル・メリアンに至る一帯に、サイトスペシフィック・インスタレーションやパフォーマンスを展開するパルクール部門(Parcours)は、昨年に続き、ニューヨークのスイス・インスティテュートのディレクター、ステファニー・ヘスラーがキュレーションを担当。「第二の自然」をテーマに、セルマ・セルマンスターテヴァントマリアンナ・シムネットシャリヤー・ナシャットトーマス・バイルレユ・ジ[于吉]らの作品によって、バーゼルの日常空間の中で「自然」や「普通」だと認識されているものを問い直し、生態系や身体、テクノロジーをめぐる認識、態度、欲望の検証を試みる。対岸のミュンスター広場では、Hylozoic/Desires(ヒマリ・シン・ソイン&ダヴィッド・ソイン・タッペサー)が、イギリス植民地時代のインドで塩税を施行し、塩の密輸入を阻止するために設置した全長約4,000メートルに及んだ生垣「内陸関税線(Inland Customs Line)」に着想した、全長80メートルのテキスタイル・インスタレーション《namak halal / namak haram》(2025)の展示を繰り広げる。

 


Art Basel Awards, Courtesy of Art Basel

 

また、アートバーゼルは、現代美術の未来を担うアーティスト、キュレーター、美術館、パトロン、領域横断的に活動するクリエーター、イノベーターを表彰する「アートバーゼル賞」をBOSSの協賛の下に新設。5月には、第61回ヴェネツィア・ビエンナーレのキュレーターを務めるコヨ・クオや、国際芸術祭「あいち2025」の芸術監督のフール・アル・カシミなど、世界の主要美術機関の要職を務める専門家で構成された国際審査委員会が、前衛的なヴィジョン、技能、変革をもたらす可能性や影響力を評価し、36の個人や団体をメダリストとして発表。6月のアートバーゼル期間中に授賞式を行なう。

 

アートバーゼル2025https://www.artbasel.com/basel

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