アートバーゼル2024


Art Basel in Basel 2023, Courtesy of Art Basel

 

2024年6月13日から16日の4日間にわたり、40カ国/地域から22軒の初参加を含む285軒のギャラリーが集まる世界最大規模の近現代美術のアートフェア「アートバーゼル」が、バーゼル市内のメッセ・バーゼルで開催する(招待制のプレビューは11日、12日の2日間)。本年度は初の試みとして、パリのコンセプトショップ「コレット」などを手がけたサラ・アンデルマンのキュレーションによる「アートバーゼル・ショップ」が期間限定(6月11日から6月16日まで)で開設される。

昨夏、ディレクターに就任したマイケ・クルーズが迎える初のアートバーゼル。アートフェアの核となるギャラリー部門(Galleries)には、ガゴシアン、デイヴィッド・ツヴィルナー、ハウザー&ワース、東京・麻布台ヒルズにも進出したペースを筆頭に国際的な現代美術のマーケットを牽引する243軒のギャラリーが出展する。ティナ・キム・ギャラリー(ソウル)を含む8軒が他部門から昇格し、ティナ・ケン・ギャラリー(台北)、メイドイン・ギャラリー(上海)を含む5軒が初参加。日本からは例年同様、タカ・イシイギャラリー、タケニナガワ、東京画廊+BTAP、東京に支店を持つブラム、ファーガス・マカフリーが参加する。

歴史的観点を踏まえた展示内容が求められるフィーチャー部門(Feature)には、11軒の初参加を含む16軒が参加。初参加組のサードギャラリーAyaは、瑛九(1911-1960)のフォト・デッサン集『眠りの理由』をはじめ、その実験的な写真作品群を個展形式で紹介する。そのほか、地元バーゼルから初参加のGalerie Muellerが市内にその名を冠した美術館も存在するジャン・ティンゲリーの活動全体を紹介する回顧展形式、ダカールのOH Galleryがセネガル美術を代表するヴィエ・ディバ(Viyé Diba)の個展形式、上海のBankは昨年から今年にかけてM+でも大々的に紹介されたソン・ファイケイ[宋懷桂]とその夫のマリーン・ヴァルバノフを取り上げた展示内容で注目される。

新進アーティストの個展形式が条件でバロワーズ賞の対象となるステートメント部門(Statements)には、6軒の初参加を含む18軒が参加。第60回ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展で特別表彰を受けたラ・チョラ・ポブレーテ(Barro、ブエノスアイレス)、ロンドンとルアンダを拠点に活動するアンゴラ出身のサンドラ・ポウルソン(ジャーメク・コンテンポラリー・アート、ルアンダ)、ヨコハマトリエンナーレ2020に参加し日本郵政歴史博物館に出品していたマリアンヌ・ファーミ(GYPSUM、カイロ)、福岡アジア美術館のレジデンス経験も持つジュリアン・エイブラハム・トガー(ROHプロジェクツ、ジャカルタ)、ソウル出身のオ・ミョチョ(ウソン・ギャラリー、大邱)らがラインナップ。

上述した3部門に参加するギャラリーから23軒のギャラリーがメインブーストは別にテーマ展示、歴史的観点を踏まえた展示、個展形式に取り組むキャビネット部門(Kabinett)は計22の展示を展開。東京画廊+BTAPは比田井南谷を個展形式で紹介する。エディション部門(Edition)は、シンガポールのSTPIをはじめ、版画やエディション作品を中心に扱う8軒が参加する。

 


Chrysanne Stathacos, Condom Mandala II (1991) Copyright Chrysanne Stathacos. Courtesy of The Breeder, Athens.


Flaka Haliti, Whose Bones? (2022) Courtesy of the artist and Deborah Schamoni.

 

メッセプラッツのサイトスペシフィック・プロジェクトでは、環境芸術の第一人者として知られるアグネス・デネシュが、彼女自身が1982年にニューヨークのマンハッタンにあるバッテリー・パークに小麦を植え育てたプロジェクトを参照した《Honouring Wheatfield – A Confrontation》を展開する。本プロジェクトは、アートフェア終了後も収穫時期まで継続される。キュレーションは、SALTSのサミュエル・ロウエンバーガーが担当。

従来のアートフェアのブースでは展示不可能な大型作品や広い空間を必要とする展示を紹介するアンリミテッド部門(Unlimited)。アナ・ウッデンベリ、ヘンリー・テイラー、フェイス・リングゴールド、ヤニス・クネリス、キース・ヘリング、ルー・ヤン、ルッツ・バッハー、ミリアム・カーン、ロバート・フランク、さらには草間彌生、塩田千春、杉本博司の作品も出品される。6月13日にはアンリミテッド・ナイトと称し、パフォーマンスも実施。アンリミテッド部門のキュレーションは、本年度で4回目となるクンストハレ・ザンクト・ガレンのディレクター、ジョヴァンニ・カルミネが担当。

 


Roni Horn, Untitled, no. 13 (1998/2006) Courtesy the artist and Galleria Raffaella Cortese, Milan – Albisola.


Robert Frank, Mabou Winter Footage (1977) Copyright June Leaf and Robert Frank Foundation, Courtesy of Pace Gallery and Zander Galerie

 

バーゼル市内各所で展開されるサイトスペシフィック・インスタレーションやパフォーマンスを無料で鑑賞できるプログラム、パルクール部門(Parcours)のキュレーションは、8年間務めたサミュエル・ロウエンバーガーに代わり、ニューヨークのスイス・インスティテュートのディレクターを務めるステファニー・ヘスラーが務める。注目のラインナップには、現在テート・ブリテンでコミッション作品を発表しているアルヴァロ・バーリントン、第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ北欧館代表のラップ゠シー・ラムのほか、ロイス・ワインバーガー、マンディ・エル゠サイエグ、リクリット・ティラヴァニ、ヒメナ・ガリド゠レッカらの名前が並ぶ。前夜祭とも言える6月12日にはパルクール・ナイトと称して、クララストラッセから本年度初めて会場に加わるホテル・メリアンにわたって、さまざまなパフォーマンスが行なわれる。また、ホテル・メリアンにはUBSとアートバーゼルとの30年間のパートナーシップを祝うペトリット・ハリライの作品が展示されるほか、24時間体制でジェニー・シュレンツカ(グロピウスバウ、ベルリン)、アインドレア・エメリフェ(西アフリカ近現代美術館、ベニンシティ)、パティ・ハートリング(パフォーマンス・スペース、ニューヨーク)、ステファニー・ヘスラー(スイス・インスティテュート、ニューヨーク)、ベネディクト・ヴィース(SALTS、イスタンブール)らが企画したイベントが行なわれる。

シュタットキノ・バーゼルを会場とするフィルム部門(Film)は、昨年度と同じくオンライン動画配信プラットフォーム「Vdrome」の創設キュレーターで北西スイス応用科学芸術大学(FHNW)の講師を務めるフィリパ・ラモスがキュレーターを務め、ニューヨークを拠点に活動するインディペンデント・キュレーター、マリアン・マソーニの協力を得ながらプログラムを構成。オープニングは「The Political Life of Plants」と題し、ジェン ・ボー[鄭波]など複数のアーティストの短編映像作品を紹介。クロージングは1964年にヴェネツィア・ビエンナーレに参加するロバート・ラウシェンバーグを取材したアメイ・ウォーレックによるドキュメンタリー《Taking Venice》(2023)を上映する。本年度で20回目を迎えるカンバセーション部門(Conversations)は、ベルリンを拠点に活動する美術批評家のキンバリー・ブラッドリーが初のキュレーションを手がけ、「現代文化の未来」を展望するさまざまなトークを構成する。

 


The Merian, Photo by Pati Grabowicz Courtesy of Art Basel


The Art Basel Shop, Courtesy of Art Basel

 

本年度のアートフェア開催時期のバーゼル市内の注目の展覧会として、バイエラー財団美術館は、時間の経過とともに変化しつづける「living organism(生命体)」としての展覧会を、美術館全体と隣接する公園に展開する「Summer Show」を開催。バーゼル市立美術館では、ツァイツ・アフリカ現代美術館のキュレーター陣による、この100年の間に黒人はどのように具象絵画に描かれてきたのかを考察する企画展「When We See Us: A Century of Black Figuration in Painting」や、ダン・フレイヴィンの個展「Dedications in Lights」、クンストハレ・バーゼルでは、昨年のターナー賞ノミネート作家、ギレーヌ・レオンの個展、ティンゲリー美術館では、ミカ・ロッテンバーグの個展などを開催。また、2022年にアーティストやキュレーター、ギャラリストらが立ち上げたバーゼル・ソーシャル・クラブも引き続き開催。展示部門には18, Murata(東京)、Galerie Tenko Presents(東京)も参加する。

 

アートバーゼル2024https://www.artbasel.com/basel

 


アグネス・デネシュ《Honouring Wheatfield – A Confrontation》2024年 Photo: ART iT


アートバーゼル2024 アンリミテッド部門 Photo: ART iT


アレックス・ダ・コルテ《Hell Hole》2022年(Sadie Coles HQ)Photo: ART iT


カレン・キリムニク《The Joker Episode of The Avengers》1991年(Galerie Eva Presenhuber) Photo: ART iT


ヤニス・クネリス《Senza titolo (vele)》1993年(Kewenig) Photo: ART iT


ラインハルト・ミュシャ《Island of the Blessed》2016/2024年(Galerie Bärbel Grässlin, Luhring Augustine, Sprüth Magers, Lia Rumma)Photo: ART iT


ルッツ・バッハー《Chess》2012年(Galerie Buchholz)Photo: ART iT


塩田千春《The Extended Line》2024年(Templon)Photo: ART iT


アリ・シェリ《The Watchman / Wake up Soldiers, Open Your Eyes》2024年(Almine Rech)Photo: ART iT


ナタリー・ドゥ・パスキエ《Cosi fan tutte》2015-2023年(Pace Gallery, in collaboration with Apalazzogallery)Photo: ART iT

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