「雪国」 クリスティーナ・キム

2013年11月27日


【タイトル】 雪国
【アーティスト名】 クリスティーナ・キム
【期間】 2013年11月14日~2014年1月21日



しんしんと降り積もる雪に風景はかき消され、地平線は空へと溶け込んでゆきます。次の瞬間、私たちは白く淡い光に満たされた大自然の繭の中にすっぽりと包み込まれてしまう——真冬に起こるホワイトアウト。自分のいる場所も方向も見失い、どこか無常と無限の狭間に置き去りにされたような感覚。ウィンタースポーツでは自然は常に私たちに対する挑戦者となります。
雪が舞い、花吹雪が散り、過ぎゆく季節。色彩が物語を紡ぎ、陰影がほんのわずかうつろううち、やがて私たちは新たな季節の息吹に包まれます。冬へと続くトンネルに静かに引き込まれて行ったときと同様に、春への目醒めも穏やかに訪れます。青から白、そしてほんのり薄紅色へと、時は切れ目なく染まってゆくのです。
満開の桜。その薄衣のような花びらが音もなくはらはらと散る瞬間こそが美しさの真骨頂。花びらの舞いは宙を埋め尽くし・・・それともこれは雪? 遠い記憶をたどるかのごとくたゆたううちに、桜の情景はみるみるうちに広がり、ついに花見の時を迎えます。日本人の誰もが心待ちにする春の宴。自然の美しい光景が見せてくれる命の儚さに、私たちの心は魅了されるのです。

ロサンゼルス在住のアーティスト、クリスティーナ・キムが、韓国での幼少期から心に抱き続けてきた日本への思い。このインスタレーションはそんな彼女から日本へのラブストーリーです。感動、スナップショット、街角の風景、音で織りなす思い出のコラージュ。ウィンドウにはパフを繋げたヨーヨーのリース約300本が張り巡らされています。手仕事の表情の残るヨーヨーを、緻密に配置を計算しながら正確に整列することで、むしろランダムで有機的な印象を与えています。全体を三次元的に視覚表現することで、外部と内部の境界が消滅して一体化する効果が生まれました。浸染したパフは、1930年代のアメリカで日常的に行われていたように端切れや余り布を再利用し、ひとつひとつ手作りされています。天井から床まで張られた糸の上でパフは静かに揺れ動き、まるで地表に舞い降りようとしている雪片か花びらのよう。ウィンドウの内側には真珠の様な光沢のあるミラーシートが張られ、淡い乳白色が様々に混ざり合って輝きを放っています。光が当たると、銀世界に輝く果てしない地平線のようです。

16個にわたる小窓では、レンゾ・ピアノによる印象的なファサードを小さな箱のなかに入れ込みました-ここでも外と内の境界が曖昧になっています。玉虫色のレンズシートは小窓に横一列に並び、ガラスブロックの形に沿うように湾曲しています。真珠のような光沢とともに反射するフィルムは8種類の異なる透明度と色に渡り、小窓を覆っています。正しい方向に光が当たれば、地平線上に雪が永遠に瞬いているようです。小窓に使われているヨーヨーパフは、作家とのワークショップにより、エルメスのスタッフが制作したものです。

クリスティーナ・キム(CHRISTINA KIM)
布を主体として、サイトスペシフィックなインスタレーションや環境の制作を手掛ける。制作プロセスとハンドメイドであることにこだわった姿勢を貫きながら、グローバルで持続可能なデザインの実践で知られ、その創作毎に素材を知的に再生させることを追求している。タイム誌の「Innovators of the Year」(2003年)に挙げられ、NPO団体Aid to Artisansによる「Innovation in Craft」(2006年)を受賞。韓国ソウル生まれ。1971年、10代で米国に渡り、ワシントン大学で画家ジェイコブ・ローレンスに師事し、美術の学位を取得。ロサンゼルス在住。



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