デビッド・ロビンス『Dough Play』@ MISAKO & ROSEN

デビッド・ロビンス『Dough Play』
2016年2月12日(金)-2月19日(金)
MISAKO & ROSEN
http://www.misakoandrosen.jp/
開廊時間:12:00-19:00(日曜は17時まで)
休廊日:月、祝

特設ウェブサイト:http://www.doughplay.space/

MISAKO & ROSENでは、アートとエンターテインメント/アートとコメディーといった関係性を扱った作品で知られるデビッド・ロビンスの企画展『Dough Play』を、ミルウォーキーのザ・グリーン・ギャラリーとフランスのポワチエのレ・コンフォート・モダーンとともに、3都市で同時開催する。

デビッド・ロビンスは、1957年ウィスコンシン州ホワイトフィッシュベイ生まれ。アンディ・ウォーホルやダイアナ・ヴリーランドらの元で働き、アーティストへのインタビューを通じて、アートを独学で学ぶ。ニューヨーク美術界の若手アーティストの肖像写真を扱った「タレント」や、アイスクリームを食べながら人々が集まる習慣に注目したプロジェクト「アイスクリーム・ソーシャル」など、独自の活動を展開している。MISAKO & ROSENではプロジェクト最後となる「アイスクリーム・ソーシャル」の実施や、著書『コンクリート・コメディー』をきっかけとした企画展『コメディー・コンクリート』に参加。

今回、デビッド・ロビンスはコメディーを題材に「お金」について考える展覧会を企画。なお、本展は、ドネーションサイト「キックスターター」によって集められた資金によって運営している。

デビッド・ロビンス(DR)がレックス・リーゾン(RR)に語る――「Dough Play」展のこと

RR:今回は何が提示されるの?
DR:フィクションとノンフィクションの蛇腹折りの中で繰り広げられる、参加型のシアター作品…。
RR:ややこしそうだね。
DR:実際のところ、そう、ややこしい作品だよ。だからこそやりたいんだ! シンプルなアイディアだけどね。クラウドファンディングで1000ドルを調達して、それで購入できるだけのおもちゃのお金を買う。
RR:新しい両替だな…。
DR:調達したお金は3等分されて、3種類のおもちゃの通貨に変えられる。おもちゃのドル、おもちゃの円、おもちゃのユーロ。
RR:なぜ3種類なの?
DR:「Dough Play」展は、基軸通貨としてのドルに「ついて」の試みではないからね。3種類の通貨を買うことで、今回のイベントを3種類の等価なバージョンとして示すことができる。3種類のおもちゃの通貨が、それぞれの通貨が使われている場所で、プロモ映像、そして寄付者たちのリストと共に展示されるんだ。会場は、ミルウォーキーのGreen Gallery、東京のMisako & Rosen、そしてフランスのポワチエにあるLe Confort-Moderneの3箇所。2016年2月の同じ週に同時開催される。
RR:どこに向かって?
DR:そんなの誰にもわからないよ。どうなるのか、とにかく見てみたいんだ。ちなみに売り物は何もない。シアターだからね。
RR:「お金が世界を回す」ってか…。
DR:どうやら今では、これまで以上に、お金が人々の思考を形づくるようになっている。かつて僕たちは映画について話していたけど、いまでは興行収入について話している。アートはもはや経済的な価値そのもの、人々がお金を預ける場所になっている。お金をめぐるあれこれこそが、つねに僕たちのふるまいを決めている。お金をより多く得るために、僕たちは創作の想像力をフォーマットする。善かれ悪しかれ、それが現実なんだ。
RR:お金の勝ち!お金が王者!
DR:だから僕は愚か者の仕事をする。貨幣の流通から少量を抜いて、仮死状態に陥らせる。お金は、お金と関係のないあらゆるものから価値を奪ってしまうよね。それなら逆のことをしちゃえ。お金を価値から切り離したら、どんな感じがするか見てみようじゃないか。
RR:やばいね。お金は抽象的なものになってしまったからなあ。デリバティブ、ヘッジファンド…。
DR:お金以上に抽象的なものなんてあるかい? 流動的で可塑的な、操作できるコンセプト。奇妙なことに、抽象であるにも関わらず、もっぱら具象的な図柄によって示されるけどね。紙幣にコイン、小切手も…。僕が「Dough Play」展でやろうとしているのは、ある意味で、お金という巨大な抽象をそれとは別種の何とも言いようのない抽象へと置き換えることなんだ。
RR:普通のクラウドファンディングでは、明確で生産的なゴールに向かってお金が投入されるよね。君がやっていることは、ある種、そうしたポジティブな気持ちを歪ませるものだったりしない?
DR:そうは思わないよ。クラウドファンディングはすでに十分長く存在している。そろそろ自己言及的な設定に使うのもアリでしょ。ひとつの素材としてね。
RR:このプロジェクトを行うにあたって、自分のお金を使うこともできたよね。支援を募る仕組みを使うよりも、その方がずっとシンプルだと思うけど?
DR:お金は人と人とを繋ぐものだよね。それに対してより忠実なのは、参加者を巻き込むことだよ。僕が計画している宙吊り状態にいろいろな人が賛同することで、コメディはより深くなるんだ。それは共有された視点となり、より強い力を手にする。真実味が増すわけ。
RR:つまり、寄付の特典はこのシアターの登場人物になれるってこと?
DR:うん。君もキャストになろう! あと、50ドル以上の寄付をすれば、寄付金と同じ額のおもちゃのお金が貰えるよ。そしてその、ゴホン、本物であることを示すサイン付きの証明書もね。
RR:価値をめぐるコメディがまたひとつ。
DR:わかってるじゃん。
(本展プレスリリースより)

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