直島パヴィリオン 所有者:直島町 設計:藤本壮介建築設計事務所 写真/福田ジン Naoshima Pavilion Owner:Naoshima Town Architect:Sou Fujimoto Architects Photo/Jin Fukuda
2016年3月20日より、瀬戸内国際芸術祭2016が開幕する。
瀬戸内国際芸術祭は、2010年に「あるものを活かし新しい価値を生みだす」という方針のもと、同地域の魅力を現代美術や建築、演劇などと交錯させることで世界に発信するプロジェクトとしてはじまった。前回は開催期間を春・夏・秋の3シーズンに分け、来場者数も100万人を突破。これまでの取り組みが評価され、昨秋にはツーリズム業界の発展に貢献した国内外の組織や個人などを表彰するために新設された「ジャパン・ツーリズム・アワード」の最優秀賞である「大賞」を受賞している。
3回目となる今回は、当初から掲げる「海の復権」というテーマのもと、作品の公開やイベントはもちろん、さまざまなプロジェクトが直島や豊島など12島14会場で行なわれる。前回に引き続き、春、夏、秋の3期、計108日間の開催となる。総合ディレクターは北川フラム。
瀬戸内国際芸術祭:http://setouchi-artfest.jp/
直島
ベネッセハウス ミュージアムや地中美術館、李禹煥美術館などがあり、同芸術祭の中心地ともいえる直島には、昨年、藤本壮介の直島パヴィリオンが宮ノ浦、三分一博志の直島ホールが本村に新たに新設された。宮浦ギャラリー六区では、会期ごとに異なるアーティストのプロジェクトを紹介するアーティスト in六区2016を開催。春の展示では、昨夏に愛知県美術館の小企画で個展を開催した飯山由貴が「生きている百物語」を発表する。(夏会期:丹羽良徳|秋会期:片山真理)
豊島
建築家・西沢立衛とアーティストの内藤礼による豊島美術館、昨年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表を務めた塩田千春の「遠い記憶」などがある豊島。大竹伸朗が旧メリヤス針製造工場に宇和島の造船所に約30年放置されていた漁船の船体用の木型を合体。スプツニ子!が民家を改修した豊島八百万ラボにて、遺伝子組み換え蚕がつむぐ「運命の赤い糸」にまつわる作品を展開する。また、既に唐櫃浜に「心臓音のアーカイブ」を設置しているクリスチャン・ボルタンスキーは、300以上の風鈴が揺れ動く新作「アニミタ」を新たに発表する。同じく豊島に設置予定のアンリ・サラのインスタレーションは秋会期に公開予定。
依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI『女木島名画座』」※作品イメージ
女木島
前回開催時に大竹伸朗による「女根/めこん」が加わった女木島。中心地の倉庫に依田洋一朗の「ISLAND THEATRE MEGI 女木島名画座」を新設。鬼ヶ島大洞窟ではカオス*ラウンジの「鬼の家」を展示。また、ナウィン・ラワンチャイクンの「西浦の塔(OKタワー)」は夏、秋会期に公開する。
男木島
ジャウメ・プレンサの「男木島の魂」が船を迎える男木島では、前回に続き、昭和40年会男木学校 PSS40を開設し、数々のプログラムを展開する。大岩オスカールや中国出身のリン・ティェンミャオ、韓国現代美術を代表する作家のひとり、イム・ミヌク(夏・秋会期のみ)などの作品が中心部と漁港周辺に点在する。
康夏奈(吉田夏奈)「花寿波島の秘密」撮影:高橋公人
小豆島
瀬戸内海で淡路島に続く面積を誇る小豆島。アートユニットの目は前回から拡大した「迷路のまち〜変幻自在の路地空間〜」を、三度目の参加となるワン・ウェンチー[王文志]は小豆島の特産のオリーブをテーマにした作品を発表。そのほか、インド出身のアパルナ・ラオとデンマーク出身のサーレン・ポーズによるユニット、ポーズ・アンド・ラオの「Someone’s Coming!」、康夏奈(吉田夏奈)の「花寿波島の秘密」、村上慧の「小豆亭」、ドットアーキテクツの「Umaki camp」など多種多様な作品が展開。また、昨年、閉校した小学校を再生した福武ハウス—アジア・アート・プラットフォームは、夏、秋会期に公開。
大島
ハンセン病回復者の国立療養施設がある大島では、長期的なプロジェクトが展開。元療養施設にギャラリーや資料室、カフェなどを設けたつながりの家では、故鳥栖喬が撮影した写真作品「ひたすら遠くを眺める」の展示などを実施。また、山川冬樹がラジオ放送局をオープン。インターネットラジオ放送を通じて、大島にまつわるさまざまな音声を放送する。
犬島
三分一博志の建築や柳幸典の作品で構成される犬島精錬所美術館で知られる犬島。妹島和世が建築を手掛け、アーティスティックディレクターを長谷川祐子が務める犬島「家プロジェクト」では、名和晃平や荒神明香、小牟田悠介、オラファー・エリアソン、下平千夏、淺井裕介が展示。そのほか、高橋啓祐の展示は夏、秋会期のみ。なお、島内で長く使われていなかったガラスハウスとその周辺を使った妹島和世+明るい部屋による「犬島 くらしの植物園」は秋会期に公開される。
ジティッシュ・カラット「Rippled Sky for Hitomaro」※作品イメージ
沙弥島
唯一、春会期のみの公開となる沙弥島。港を守る防波堤にジティッシュ・カラットが水を使った作品「Rippled Sky for Hitomaro」を設置。建築家の藤山哲朗はビーチに設置した海の家「沙弥島・西ノ浜の家」のほか、屋外作品「赤い窓の回廊」を設置する。
本島
かつて塩飽諸島にいた船大工の復活を願い活動している齊藤正 x 続・塩飽大工衆の「善根湯x版築プロジェクト」など3会期にわたって公開している作品のほか、日本からミクロネシアまでの航海経験を持つ五十嵐靖晃や、ツェ・スーメイのインスタレーションなど秋会期のみの公開作品あり。
後藤靖香「各簿のイロハ」※作品イメージ
高見島
高見島ではすべての作品が秋会期のみの公開。伝統的な古民家群が残る島内で山本基、後藤靖香などの作品が展示される。
粟島
粟島も山田紗子の須田港待合所プロジェクト「みなとのロープハウス」以外、久保田沙耶やエステル・ストッカー、ムニール・ファトゥミなど、公開は秋会期のみ。
伊吹島
伊吹島も石井大五の「トイレの家」以外、コンタクト・ゴンゾ、小林耕平、アルフレド&イザベル・アキリザンなど、すべて秋会期のみ。
高松港
瀬戸内国際芸術祭のマザーポートとなる高松港。大巻伸嗣やジュリアン・オピーの彫刻作品、前回に引き続き、再び台湾から高松港に到着するリン・シュンロン[林舜龍]の種の漂流をイメージした「国境を越えて・海」といった屋外展示作品のほか、夏会期には、前回の瀬戸内、昨年の越後妻有にも参加しているEAR & ART TAROのレストランが開設される。
宇野港
本州から直島、豊島、小豆島、高松へのフェリーが出る宇野港。放置自転車をレンタル可能な新たな自転車として再生した小沢敦志の「終点の先へ」のほか、淀川テクニックや内田晴之の作品が設置されている。