テア・ジョルジャッツェ インタビュー(5)

親密さに残された最後の距離
インタビュー/アンドリュー・マークル

V


Both: Installation view of the exhibition “Melanchotopia” at Witte de With, Rotterdam, 2011. Photo: ART iT.

ART iT 詩人のアンナ・アフマートヴァは読みますか。彼女もあなたにとって重要な作家ではないかと思うのですが。感情を物質的に表現し、記録するアフマートヴァの感性は、ロッテルダムで行なわれた展覧会『Melanchotopia』に出ていたあなたの作品を連想させます。大きめのガラスパネルがさまざまな角度に吊るされたり、立て掛けられた作品がガラスの展示ケースの中にあり、物体の重量や透明性をさりげなく浮き上がらせるように、パネルの端がさまざまな色彩で染められています。

TD 私にとって、アフマートヴァは詩人としてより、歴史的に大切な人です。ほかにも私にとって本当に大切な作品を残している詩人もいます。ともにソビエト連邦から移住したソロモン・ヴォルコフによるヨシフ・ブロツキーへのインタビューが書籍となっていますが、彼らは数年にわたってインタビューを実施しています。ブロツキ―ヘのインタビューは難しそうですが、ヴォルコフは彼から多くのことを得ていたようで、ときには、とても馬鹿げた質問をしてブロツキーを怒らせて、しゃべらせていたようです。
そのインタビューの中でブロツキ―が思い出していたのがアフマートヴァです。彼は二十歳の頃に既に年老いていた彼女に出会います。ほかの詩人らとともに当時彼女の暮らしていた村を訪れ、彼は恋に落ちたのです。彼は人生において戦うべきものやひとりの人間としてどうあるべきかを彼女から学んだと記しています。忘れ去られた彼女の人生の後半に、彼は彼女を世話し、埋葬も行なった。とはいえ、彼女は勇敢で、彼にとっての理想像であった。彼自身を清め、思慮深く、深遠にさせるエネルギーを備えた畏怖の念を抱かせる存在として、彼女とともに過ごした経験を彼は回想している。ただ彼女のそばにいること、彼女のものの見方やユーモア、そうしたものが彼自身の大部分を占めているのだとブロツキ―は考えています。

ART iT つまり、あなたはブロツキ―によるアフマートヴァに惹かれていたのでしょうか。

TD どちらとは言えませんよね。そして、それは大したことではないでしょう。もちろん、彼の記述を読んで彼女に惹かれましたが。

テア・ジョルジャッツェ インタビュー(6)

テア・ジョルジャッツェ インタビュー
親密さに残された最後の距離

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第18号 ドクメンタ13

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