6/25[土]~「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」展

東京・原美術館より
「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」
2011年6月25日[土]-8月28日[日]
 

ミン ウォン「Life of Imitation」 ビデオ オーディオ インスタレーション 2009年


ネオ チョン テク(デザイン:ミン ウォン)「Four Malay Stories」 カンヴァスにアクリル 2009年

シンガポールに生まれ、母国とベルリンを拠点に制作するミン ウォン(1971-)は、第53回ヴェネチア ビエンナーレ(2009年)において審査員特別表彰を受賞した、現在、国際的に最も注目の若手アーティストです。受賞展である「ライフ オブ イミテーション」は、その後、新たな展示デザインや展示物を加えてシンガポール美術館にて再現され、シアトル、タスマニアなどを巡回し、ますます高い評価を得ています。

原美術館では、本巡回展を当館の空間に合わせ再構成します。出品作品の中核を成すのは、マレー映画の父と称されるP. ラムリー(1929-73)の映画の数々と、ハリウッドにおいてメロドラマを量産したダグラス サーク(1897-1987)の『イミテーション オブ ライフ』(1959年)、ウォン カーウァイ(1958-)の香港映画『イン ザ ムード フォー ラヴ』(2000年)を独自の視点で再演したビデオインスタレーションです。ミスキャストやモノマネなど、パフォーマンス性をベースとした滑稽とも言えるアプローチで、人種的・文化的アイデンティティや、ジェンダー、言語の問題などに言及しています。

さらに、シンガポール最後の映画看板絵師、ネオ チョン テクによるによる看板絵や、シンガポールの個人コレクター、ウォン ハン ミンの貴重な映画資料、往年の映画館建築を収めたインスタント写真などとともにシンガポール映画黄金時代(1950~60年代)を振り返り、様々な言語と文化が行き交ってきたシンガポール、ひいてはグローバル化が進む現代社会における人間のあり様を見つめます。

*本展は、第53回ヴェネチア ビエンナーレ(2009年、キュレーター:タン フー クエン)において発表された後、シンガポール美術館にて再現され、現在、世界各地を巡回している国際展です。原美術館における展覧会はシンガポール美術館との共催です。

【本展のみどころ】
・国際的に最も注目を集める気鋭の若手作家、ミン ウォンの日本における初個展。
・100年以上の歴史を誇る大規模な現代美術の国際展「ヴェネチア ビエンナーレ」における受賞展を原美術館の空間にあわせ、再構成。
・黄金時代のシンガポール映画に着想を得たミン ウォンの映像作品を中心に、写真、映画看板絵、1950~60年代のチラシやチケットなど映画にまつわる資料、映画の周辺にいる人々を取材したドキュメンタリー映像から成るインスタレーション。
・多種多様な言語と文化が共存するシンガポールをベースに、ユーモアを交え普遍的な人間のあり様を表現。

【開催要項】
展覧会名: 「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」
会期: 2011年6月25日[土]―8月28日[日]
主催: 原美術館、シンガポール美術館
助成: 財団法人MRAハウス
ゲストキュレーター: タン フー クエン
会場: 原美術館 東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001
Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)
E-mai info@haramuseum.or.jp
http://www.haramuseum.or.jp
http://mobile.haramuseum.or.jp (mobile site)
https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum/ (blog)
Twitter http://twitter.com/haramuseum (in Japanese only/ Account name: @haramuseum)
開館時間: 11:00 am-5:00 pm(水曜日は8:00 pmまで開館、入館は閉館時刻の30分前まで。電力事情により変更の可能性あり。当館ウェブサイトまたは電話にてご確認ください。)
休館日: 月曜日(祝日にあたる7月18日は開館)、7月19日
入館料: 一般1,000円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引
交通案内: JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分。
ギャラリーガイド:日曜・祝日には当館学芸員によるギャラリーガイドを実施(2:30 pmより約30分)

【関連イベント】
[7/15追記]
■ウォン ハン ミン氏によるトーク
「カチャンプテからポップコーンまで:シンガポールの初期映画館(1896~1945年)」7月31日[日]1:00~2:00pm 詳細はこちらへ。

■Meet the Artist and Curator ミン ウォンとタン フー クエンによる対談(逐次通訳付) ※終了
日時:6月25日[土]2:00~3:30pm
場所:原美術館 ザ・ホール
聴講料:無料(要入館料) 

【略歴】

[ミン ウォン(Ming Wong)]
1971年、シンガポール生まれ。演劇に関わった後、1995年、ナンヤン美術アカデミーにてディプロマ(中国美術)、1999年、ユニヴァーシティ カレッジ ロンドンのスレード スクール オブ ファインアートにて修士号(美術・メディア)を取得。2008年、ベルリンのクンストハウス ベタニエンにて1年間の滞在制作を行う。ヨーロッパ、北米、アジアなどの主要な美術館、美術フェスティヴァル等で個展、グループ展多数。シンガポールビエンナーレ2011にも出展。現在、シンガポールおよびベルリンに在住。http://www.mingwong.org

[タン フー クエン]
キュレーター、劇作家として、パフォーマンスから映画、視覚芸術に至るまで、現代と伝統美術、アジアとヨーロッパの間を横断しながら多様な仕事をしている。シンガポールアートフェスティヴァルおよびインドネシアダンスフェスティヴァルにてプログラムアドバイザーを務めている。ロンドンゴールドスミスカレッジでメディア学修了。シンガポールおよびタイに在住。

【出品作品】
ミン ウォン

「Four Malay Stories」 ビデオ オーディオ インスタレーション 25分(4画面、ループ) 2005年
シンガポール映画黄金期を支えたP. ラムリーの喜劇やメロドラマ、社会派ドラマや時代劇に登場する16人ものキャラクターを、ウォン自身が演じています。テイクを重ねることで、マレー語のセリフをマスターしようと努力する彼の姿が映し出されます。


「Life of Imitation」 ビデオ オーディオ インスタレーション 13分(2画面、ループ) 2009年
人種的アイデンティティの問題を取り上げたダグラス サーク(1897-1987)のハリウッドメロドラマ、『イミテーション オブ ライフ』(邦題『悲しみは空の彼方に』、1959年)へのオマージュ的作品。多民族・多文化国家であるシンガポールの主要民族(中華系、マレー系、インド系)から選ばれた3人の男性俳優が、黒人の母親と混血の娘サラ ジェーンを順番に演じます。


「In Love For The Mood」 ビデオ オーディオ インスタレーション 4分(3画面、ループ) 2009年
1960年代を舞台にしたウォン カーウァイ(1958-)の香港映画、『イン ザ ムード フォー ラヴ』(邦題『花様年華』、2000年)を参照し、“リハーサルのリハーサル”として制作。妻が夫の不義と向き合うため、自分の愛人を夫に見立て、リハーサルを繰り返すシーンを再現しています。一人二役で男女を演じるのは白人の女優。彼女が広東語のセリフと演技をマスターしようとリハーサルを重ねる姿が3つの画面に映し出されます。


「Filem-Filem-Filem」 インスタントカラー写真、各8.9 x 10.8 cm 2009-2010年
シンガポールとマレーシアを旅し探し求めた“エンターテイメント建築”としての映画館などの建築物を捉えた写真の数々。人々の記憶から忘れ去られてしまった映画初期の起業家たちの“夢の宮殿”です。

上記に加え、ネオ チョン テクによる看板絵(デザイン:ミン ウォン)「Four Malay Stories」 カンヴァスにアクリル 243 x 305 cm 2009年、「Life of Imitation」 カンヴァスにアクリル 222 x 229 cm 2009年、「In Love For The Mood」 カンヴァスにアクリル 243 x 400 cm 2009年]、映画資料(所蔵:ウォン ハン ミン)、ドキュメンタリー映像(監督:シャーマン オン)を展示。

【補足情報】
[シンガポールの人種と言語]
1965年、マレーシア連邦から分離独立したシンガポールは、現在、中国系75%、マレー系14%、インド系9%、その他2%が混在する複合多民族国家である。主に三つの民族による三つの文化が共存し、公用語も英語、マレー語、標準中国語、タミル語と多岐にわたる。訛りのある英語「シングリッシュ」など、それぞれの言語にシンガポール特有のアクセントがみられる。

[マレー映画黄金期の時代的背景]
ミン ウォンが本展出品作「Four Malay Stories」で題材とするマレー映画の黄金期、1950~60年代は、イギリス植民地支配からの独立交渉、マレーシア創設、最終的には連邦からのシンガポール追放が起こった激動の時代である。こうした時代にあって映画は三つの主要な民族グループをつなぐ役割を果たしたと考えられる。数々の名作が生まれたが、中でも役者、歌手、監督など各方面で活躍したP. ラムリーは伝説的人物として国民の記憶に刻まれている。

[現代の文化・言語事情とミン ウォン]
1970年代初頭、マレー映画とともに映画産業そのものが衰退した。その後90年代に標準中国語、英語、まれにシングリッシュをまじえた言語による地方映画産業が復活した。1965年~2005年にかけて行なわれた政府の言語政策の結果、共通語として英語と標準中国語がマレー語にとって代わったと考えられている。マレー語は今も国語でありつつ、シンガポール文化の本流からますます周縁化された部分になっている。1971年生まれの中国系シンガポール人であるミン ウォンは自らについて、幼少時日常的にマレー文化に触れることにより、他の地域に住む中国人とは異なる“シンガポール人”としての認識を強めたが、マレーの影響が次第に薄れていく時代の変化を間のあたりにした世代である、とインタビューで語っている。ウォンが作品のテーマとして追求する人種・文化的アイデンティティや言語の問題にはこうした文化的背景が考えられる。

参考資料:ベンジャミン マッケイによるエッセイ[本展カタログ『Ming Wong: Life of Imitation』(発行:シンガポール美術館)]
アンドリュー マークルによるミン ウォン インタビュー (アートイット掲載)
「ミン・ウォン インタビュー1」
「ミン・ウォン インタビュー2」
「ミン・ウォン インタビュー3」

フー ファンによるエッセイ「ミン ウォン:旅する異邦人」

【追加情報】
6月24日[金]ミン ウォン展記者会見リポート(1)
記者会見リポート(2)
記者会見リポート(3)

ARTiTフォトレポート

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