フィオナ・タン「スリ」@ ワコウ・ワークス・オブ・アート


Fiona Tan, Pickpockets – James Wilson (2020), HD video installation,
colour, stereo, loop duration: 3 min. 54 sec. ©︎ Fiona Tan
courtesy WAKO WORKS OF ART

 

フィオナ・タン「スリ」
2023年2月10日(金)– 4月1日(土)
ワコウ・ワークス・オブ・アート
https://www.wako-art.jp/
開廊時間:11:00–18:00
休廊日:日、月、祝

 

ワコウ・ワークス・オブ・アートでは、記憶とイメージをめぐる詩的な作品で知られるフィオナ・タンの個展『スリ』を開催する。コロナ禍による延期を経て、同ギャラリー9度目の個展となる本展では、日本初公開となる近作の映像作品《Archive》(2019)と《Pickpockets》(2020)、また、世界初公開となる写真作品《Technicolor Dreaming》(2022)を発表する。なお、現在開催中の恵比寿映像祭2023では、東京都写真美術館に収蔵された《リフト》(2000年)が展示されている。

フィオナ・タン(1966年インドネシア・プカンバル生まれ)は、既存の写真やフィルムを用いた作品や丹念なリサーチに基づく映像作品やインスタレーションを通じて、心象と記憶の関係性、時間、言葉や物語の関係性を探究している。スコットランド系オーストラリア人の母と中国系インドネシア人の父の下に生まれたタンは、幼少期をオーストラリアで過ごし、1988年にオランダに移る。1992年にアムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーを卒業。現在も同地を拠点に活動を続ける。2000年代前半に第7回イスタンブール・ビエンナーレ(2001)やドクメンタ11(2002)などに参加、2009年には第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ・オランダ館代表を務める。近年の主な個展に、『Geography of Time』(フランクフルト近現代美術館、2016-17)、『GAAF』(ルートヴィヒ美術館、ケルン、2019)、『With the other Hand』(ザルツブルク近代美術館/クンストハレ・クレムス、2020-21)、『Mountains and Molehills』(EYE映画博物館、アムステルダム、2022-23)などがある。日本国内でも、『エリプシス』(金沢21世紀美術館、2013)、『まなざしの詩学』(東京都写真美術館、2014/国立国際美術館、2014-15)、『アセント』(IZU PHOTO MUSEUM、2016)といった美術館での個展のほか、横浜トリエンナーレ2001、『アジアとヨーロッパの肖像』(国立民族学博物館ほか、2008-09)、『建築、アートがつくりだす新しい環境—これからの”感じ”』(東京都現代美術館,2011)、『ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界』(森美術館、2014)などでも作品を発表している。

 


Fiona Tan, Archive (2019) 3-D animation, Black and white, stereo, loop duration: 5 min. 42 sec. ©︎ Fiona Tan courtesy WAKO WORKS OF ART

 

本展出品作の《Archive》(2019)は、ベルギーの書誌学者ポール・オトレが構想していた壮大なアーカイブ空間の計画「ムンダネウム」をモチーフにした4Kデジタル映像作品。オトレが残した資料を丹念にリサーチしたタンは、そのユートピア的ともいえる未完の構想を独自に解釈して架空のアーカイブ建築を考案し、専門家の協力を得て精密な3Dモデルとして現代に蘇らせる。「いまの世の中、すべてがうまくいかないディストピアを想像するのは簡単だが、明るい未来を想像するのは難しい」と語り、オトレが描いたユートピアを手がかりに、現代社会のあり方を問いかける。また、本展では3Dモデリングによる《Archive》の架空の建築空間をあえて19世紀の技法・フォトグラビュールで現像したシリーズ《Shadow Archive》(2019)も併せて発表する。

一方、《Pickpockets》(2020)は、1889年のパリ万博で逮捕されたスリの記録写真をもとに制作された、マルチチャンネルのビデオ・インスタレーション。実在したスリ犯のポートレートの静止画像のボイスオーバーとして、タンが脚本家たちとともに生み出した架空の独白(タン曰く”スリ犯たちの声を盗んだ”)が語られる。現在までに9作品が制作されている同シリーズでは、それぞれのスリ犯が語る言語が英語・仏語・独語・スコットランド語など作品によって異なる。本展では、各展示室に1作品ずつ、合計3作品、英語と仏語の作品を展示する。

世界初公開となる写真作品《Technicolor Dreaming》(2022)は、昨年、アムステルダムのEYE映画博物館が所蔵するフッテージから構築した映像に、タンが学生時代に父親からもらった手紙をボイスオーバーで重ねた映像作品《Footsteps》(2022)に関連するフォトグラビュールのシリーズ。

 

関連展覧会情報
恵比寿映像祭2023
2023年2月3日(金)– 2月19日(日)
https://www.yebizo.com/

 

ART iT Archive
フィオナ・タン インタビュー「鏡の間」(2013年10月)

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