ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol. 23 @ 東京都写真美術館

市田小百合〈空席(Kūseki)〉より 2026年 黒板にシルクスクリーンプリント 展示風景:「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol. 23」東京都写真美術館、2026年 撮影:新井孝明市田小百合〈空席(Kūseki)〉より 2026年 黒板にシルクスクリーンプリント 展示風景:「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol. 23」東京都写真美術館、2026年 撮影:新井孝明

 

ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol. 23
2026年9月30日(水)–2027年1月17日(日)
東京都写真美術館 3階展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(木・金は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、10/12、11/23、1/11は開館)、10/13、11/24、1/12、12/28–1/1
企画:山﨑香穂(東京都写真美術館 学芸員)
展覧会URL:https://topmuseum.jp/exhibition/5423/
出品作家:市田小百合、苅部太郎、野村在、橋本麦、藤倉麻子

 

東京都写真美術館では、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するとともに、新しい創造活動の展開の場とすることを目的として、2002年より継続的に開催してきた「日本の新進作家」展の23回目となる「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol. 23」を開催する。

本展では、作家たちが実際に存在した記憶や素材、技術、それぞれが持つコンテクストを汲み取り、新たなイメージへと組み立てていくプロセスに着目する。写真や映像は物事を写し、残すメディアだが、写し取られたイメージは編集や置かれた文脈によって異なる意味を帯びることもあり、ときに存在しない記憶や記録さえも想起させる。イメージのなかの見えるものと見えないもの、実存と虚構、存在と不在の境界線は、ますます曖昧になりつつある。真偽に惑わされることの多い日常のなかで、情報とどのように向き合い、何を信じ、どのように世界を捉えているのかといった問いを、あらためて考える契機となる作品を紹介する。

 

苅部太郎《あの海に見える岩を、弓で射よ #188》2023年 インクジェット・プリント 作家蔵 ©Taro Karibe苅部太郎《あの海に見える岩を、弓で射よ #188》2023年 インクジェット・プリント 作家蔵 ©Taro Karibe
野村在《バイオフォトンはかくも輝く(白いチョッキを着た小人症の女性、湖の前で一人で笑顔、1981)》2026年 ガラスに UV-インクジェット・プリント、ステンレス金具 作家蔵 ©Zai Nomura野村在《バイオフォトンはかくも輝く(白いチョッキを着た小人症の女性、湖の前で一人で笑顔、1981)》2026年 ガラスに UV-インクジェット・プリント、ステンレス金具 作家蔵 ©Zai Nomura

 

市田小百合(1985年生まれ)は、自身の記憶や経験を起点に、複雑で多層的な感情のあり方を、身体や彫刻的なオブジェクトをとおして探求している。2006年に東京ビジュアルアーツ写真学科を卒業後、イイノ・メディアプロにスタジオマンとして勤務し、のち渡英。2022年にウェストミンスター大学で写真芸術(Photography Arts)を専攻し、修士号を取得した。「Jerwood/Photoworks Awards 5」受賞(イギリス、2024)のほか、主な展覧会に「Absentee」(ライカギャラリー、イギリス、2026)、「Playing the Piano Upstairs」(The Photographers’ Gallery Print Sales、イギリス、2026)、「transiənt」(大和日英基金ジャパンハウスギャラリー、イギリス、2025)などがある。本展では、学校という場所に積み重ねられた時間を主題に、黒板を支持体として校舎の断片を再構成し、シルクスクリーンでプリントしたインスタレーション作品を日本で初めて展示する。

苅部太郎(1988年生まれ)は、画像生成AIを「形而上のカメラ」と見立てて意図的に誤用しながら、「見る」ことや「信じる」ことを支配する不可視のシステムを問い直してきた。光学技術、アルゴリズム、人の認知、社会制度といったブラックボックスが相互に絡み合う循環を、写真というメディウムの内側から捉え直す。心理学、公衆衛生、金融、ITの領域を横断したのち、報道写真家として活動を始めた。主な展示に「Anatomy of Caves」(HECTARE、東京、2025)、「Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」(MYNAVI ART SQUARE、東京、2024)などがある。本展では、テレビの受信部を接触不良にしてグリッチノイズを発生させたイメージを撮影・加工し、生成AIの風景認識システムに読み込ませた作品シリーズを紹介する。認識システムを撹乱することで、人間とAIに共通する「見立て」の働きを引き出し、意味を見いだそうとする認識の過程や、誤認から新たなイメージが生成される可能性を探る。

野村在(1979年生まれ)は、「存在」と「記憶」の関係を主題に、写真や彫刻、機械装置など多様なメディアを用いて制作している。物質の消失や変容、時間の経過によって揺らぐ記憶のあり方に着目し、日常のなかに残された痕跡や見過ごされがちな現象を可視化することを試みる。2009年にロンドン大学ゴールドスミス校でMFAを修了し、2013年に武蔵野美術大学博士課程を修了。主な展示に「第13回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ」(ソウル市立美術館、ソウル、2025)、「第17回shiseido art egg 野村在展」(資生堂ギャラリー、東京、2024)、「OPEN SITE 8」(TOKAS本郷、東京、2024)、あいちトリエンナーレ(2016)などがある。本展では、作家が収集したポートレイト写真を燃焼させ、その炎の光を長時間露光で記録することで、写真というメディアの物質性に着目し、イメージが新たなかたちへと再構成される過程を探る。

 

橋本麦《Milling Stop-Motion (tentative title)》2024年- 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ©Baku Hashimoto ※参考図版橋本麦《Milling Stop-Motion (tentative title)》2024年- 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ©Baku Hashimoto ※参考図版
藤倉麻子《4 Tales of Open Sunrise City》2026年 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ©Asako Fujikura藤倉麻子《4 Tales of Open Sunrise City》2026年 2チャンネル・ヴィデオインスタレーション 作家蔵 ©Asako Fujikura

 

橋本麦は、モーショングラフィックスやハッカー文化、実験映像の影響を背景に、3DCGやコマ撮りアニメーション、ミュージック・ビデオ、インタラクティブ作品まで多岐にわたる制作を個人で手がけてきた映像作家。作品ごとにワークフローやツールの設計から取り組み、技術的な試行やエラーをも含めたプロセスから独自の視覚表現を探求している。主な仕事にgroup_inou、MONO NO AWAREなどのミュージック・ビデオ、アニメ『すべてがFになる』のED映像など。近年はヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)分野の研究にも取り組み、ACM UISTでの論文採択などの実績をもつ。東京TDC賞グランプリ(2025)、新千歳空港国際アニメーション映画祭観客賞(2018)、第19回文化庁メディア芸術祭新人賞(2015)を受賞。本展では、自作の装置や道具を用いたコマ撮りアニメーションにより、イメージが立ち上がる過程を探る新作インスタレーションを展示する。会期中には公開制作も実施し、完成した映像だけでなく、作品が生まれるプロセスもあわせて紹介する。

藤倉麻子(1992年埼玉県生まれ)は、都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いた作品を制作している。近年は、埋立地で日々くり広げられている物流のダイナミズムと都市における庭の出現に注目した空間表現を展開してきた。近年の展覧会に「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」(森美術館、東京、2025)、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館「中立点—生成AIとの未来」(イタリア、2025)などがある。本展では、実写映像やCG、AIなどを用いて架空の都市とそこにある社会を構築する新作インスタレーションを展示する。

会期中は、出品作家とゲストによるトークイベントを5回にわたって開催するほか、担当学芸員によるギャラリートークを実施。あわせて、山﨑香穂による論考や出品作家5名によるステートメントなどを収録した展覧会図録が、会期初日の9月30日に同館より刊行される。

 

関連イベント
出品作家とゲストによるトークイベント
①2026年10月4日(日)14:00–15:30
登壇:市田小百合、本橋仁(金沢21世紀美術館キュレーター)
②2026年10月18日(日)14:00–15:30
登壇:野村在、岡部あおみ(美術評論家、インディペンデント・キュレーター)
③2026年11月1日(日)14:00–15:30
登壇:苅部太郎、下西風澄(哲学者)
④2026年12月13日(日)14:00–15:30
登壇:橋本麦、辻川幸一郎(映像作家)
⑤2027年1月10日(日)14:00–15:30
登壇:藤倉麻子、南後由和(社会学者、法政大学教授)
会場:東京都写真美術館 1階ホール
定員:190名
参加費:無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布
※各回とも手話通訳・文字表示支援付き

担当学芸員によるギャラリートーク
2026年10月9日(金)、11月13日(金)、12月11日(金)各日14:00–
会場:東京都写真美術館 3階展示室入口
※当日有効の展覧会チケットが必要。10/9は文字表示支援付き、11/13と12/11は手話通訳付き

 


 

同時開催
デュエット――アジアン・コンテンポラリー
2026年9月30日(水)–2027年1月17日(日)
東京都写真美術館
https://topmuseum.jp/exhibition/5421/

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