ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965 @ パナソニック汐留美術館


ル・コルビュジエ《マッチ箱と二人の女》1933年、森稔コレクション蔵

 

ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965
2025年1月11日(土)-3月23日(日)
パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/
開館時間:10:00–18:00(2/7、3/7、3/14、3/21、3/22は20:00まで)入場は閉館30分前まで
※土・日・祝日は日時指定予約制
休館日:水(ただし3/19は開館)
ゲスト・キュレーター:ロバート・ヴォイチュツケ
展覧会URL:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/
(※本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されます。)

 

パナソニック汐留美術館では、近代建築の代表する建築家として知られるル・コルビュジエの活動後期の絵画芸術に注目した展覧会「ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965」をル・コルビュジエ財団の協力のもと開催。2020年から22年まで国立西洋美術館の客員研究員として滞日したドイツ人美術史家のロバート・ヴォイチュツケがゲスト・キュレーターとして、著書『未完の美術館 調和にむかって ル・コルビュジエの思想と国立西洋美術館』に基づく視点によるキュレーションを試みる。

ル・コルビュジエ(1887-1965/スイス、ラ・ショー゠ド゠フォン生まれ)は、数々の建築を手がけ、パリやバルセロナ、リオデジャネイロなどの都市計画に携わり、近代建築の五原則を提唱するなど、多彩な活動を通じて、建築のみならず、多方面に今なお多大な影響を与えてきた。2019年には国立西洋美術館にて、その活動前半期に焦点をあてた「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」が開催された。それに続く活動後半期を扱う本展では、1930年代以降に手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーを展示、さらに求め続けた新しい技術の芸術的利用にも着目、そして後期の建築作品も併せて紹介し、伝統的な枠組みをはるかに超えたル・コルビュジエの円熟期の芸術観を明らかにする。

 


ル・コルビュジエ《レア》1931年、大成建設株式会社蔵

 

4章構成となる本展の第1章「浜辺の建築家」は、機械万能主義から自然科学的関心へと価値観を転換させ、絵画の自律性を追求する抽象絵画から、未知の世界へと向かうシュルレアリスムの幻想的な絵画が人々の心をとらえるようになった1930年代のパリの芸術界に新しい傾向に着目。この時期、ル・コルビュジエも1918年から実践していたピュリスム絵画における幾何学的構成に代わり、貝、骨、流木といった有機的な収集物の形態を建築と絵画に取り入れ、それらを「詩的反応を喚起するオブジェ」と命名した。本展では同時代に近い関心を示したアルプやレジェの作品とともに紹介する。

第2章は、 ル・コルビュジエの円熟期の創作活動を理解する鍵となる概念「諸芸術の綜合」をタイトルに構成。ル・コルビュジエは、建築の指揮のもとで絵画や彫刻をつなぐ試みを「諸芸術の綜合」と言い表し、さらには統一、調和、普遍的法則の理想主義に導かれた自身の芸術観全体を示すスローガンとしても掲げた。日本では1955年にシャルロット・ペリアンがキュレーションした「巴里1955年―芸術の綜合への提案 ル・コルビュジエ、レジェ、ペリアン3人展」において、この概念を紹介している。ル・コルビジェは家具職人のジョセフ・サヴィナとの協働から木彫作品を制作、それらを「音響的形態」と呼んだ。絵画を立体化したその曲面の造形は、ロンシャンの礼拝堂をはじめとする後期の建築作品に応用され、「音響的建築」の実現が目指されることとなった。

 


ル・コルビュジエ《奇妙な鳥と牡牛》1957年、大成建設株式会社蔵


ル・コルビュジエ《手》1957年、森稔コレクション蔵


ル・コルビュジエ《牡牛XVI》1958年、ル・コルビュジエ財団(パリ)蔵

 

第3章「近代のミッション」は、晩年まで人間の進歩の永続を信じたル・コルビュジエと、「偉大なる綜合」と「偉大な精神性の時代」に近づくための段階として抽象芸術を位置付けたカンディンスキーに着目。ルシアン・エルヴェのカメラがとらえたル・コルビュジエの建築と、カンディンスキーの版画集『小さな世界』を合わせて展示し、ふたりの世界観を対峙させる。また、ル・コルビュジエの絵画の集大成となる「牡牛」シリーズから、《牡牛XVI》《牡牛XVIII》《牡牛》(未完・遺作)を3連画として展示する。

第4章は、ル・コルビュジエが1954年に執筆し、テクノロジーの発達により高度にネットワーク化、グローバル化が進む情報化社会の到来を予見した論考「やがてすべては海へと至る」からタイトルを引用。インド初の女性建築家ウルミラー・エリー・チョードリー(1923-1995)と協働したチャンディガールの「知のミュージアム」計画では、未来の人工知能AIをも予知したかのようであり、1958年ブリュッセル万博フィリップス館で公開した《電子の詩》は、当時の最新技術を駆使し、音楽、映像、建築の各要素を融合させ人類の発展をテーマとした作品で、マルチメディア芸術の先駆けともいえる。

会場構成は、向山裕二、上野有里紗、笹田侑志が共同で主宰する設計事務所「ウルトラスタジオ」が担当。ル・コルビュジエの内装に着目して、「インテリア」「コーディネイト」「トランジション」をキーワードに、居住空間のなかに置かれた諸芸術の綜合をイメージして会場を構成する。

 


ルシアン・エルヴェ《カップ・マルタンの海岸でのル・コルビュジエ》1951年、大成建設株式会社蔵

 

関連イベント
展覧会記念講演会「アートがテクノロジーと出会うとき。ル・コルビュジエと協働したウルミラー・エリー・チョードリー」
2025年1月12日(日)14:00–15:30(開場:13:30-)
講師:ロバート・ヴォイチュツケ(本展ゲスト・キュレーター、美術史家)
会場:パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
定員:150名(要予約)
聴講費:無料(※要本展観覧券)
申込方法:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/#exhibition-detail-event__reservation

展覧会記念シンポジウム「ル・コルビュジエの探求 絵画と建築」
2025年1月25日(土)15:00–17:45(開場:14:30-)※終了後、18:30まで開館を延長
講師:ロバート・ヴォイチュツケ(本展ゲスト・キュレーター、美術史家)、富永譲(建築家、法政大学名誉教授)、松浦寿夫(画家、批評家、多摩美術大学客員教授)
会場:パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
定員:150名(要予約)
聴講費:無料(※要本展観覧券)
申込方法:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/#exhibition-detail-event__reservation

当館学芸員によるスライドトーク
2025年1月31日(金)14:00-、2月9日(日)16:00-、3月1日(土)16:00-
会場:パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
定員:50名(先着順、予約不要 ※要本展観覧券)
※2/9、3/1の展覧会観覧には事前の日時指定予約が必要

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