フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築 @ パナソニック汐留美術館


フランク・ロイド・ライト《帝国ホテル二代目本館(東京、日比谷)第2案 1915年 横断面図》コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵 The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 

開館20周年記念展/帝国ホテル二代目本館100周年
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2024年1月11日(木)-3月10日(日)※一部展示替えあり(前期は2/13まで後期は2/15から)
パナソニック汐留美術館
https://panasonic.co.jp/ew/museum/
開館時間:10:00–18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:水(3/6は開館)
展覧会URL:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/240111/

 

パナソニック汐留美術館では、「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」などを手がけ、アメリカ近代建築を代表する建築家として国際的に知られるフランク・ロイド・ライトの活動を近年の研究成果を踏まえて紹介する展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」を開催する。

日本でも「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園」を設計し、熱烈な浮世絵愛好家としても知られたフランク・ロイド・ライト(1867-1959/アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれ)。2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料が、ニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管されたことにより、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が進み、2017年には研究成果を踏まえた展覧会「フランク・ロイド・ライト生誕150周年:紐解かれるアーカイヴ」がニューヨーク近代美術館で実現した。

パナソニック汐留美術館開館20周年記念展および帝国ホテル二代目本館100周年を記念して開かれる本展は、前述のニューヨーク近代美術館の展覧会に企画メンバーとして参加したケン・タダシ・オオシマ(ワシントン大学教授)とジェニファー・グレイ(フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)を迎えて日米共同でキュレーションを行ない、帝国ホテルを基軸に、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したライトの姿を7つのセクションを通じて明らかにしていく。

 


フランク・ロイド・ライト《第1葉 ウィンズロー邸 透視図》『フランク・ロイド・ライトの建築と設計』1910年、豊田市美術館蔵


フランク・ロイド・ライト《『 リバティー』誌のための表紙デザイン案 柱サボテンとサボテンの花 》1927-28年、米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress, LC-DIG-ppmsca-84873.


フランク・ロイド・ライト《クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス》1912年頃、豊田市美術館蔵

 

セクション1「モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観」では、日本初公開となるライトのドローイングを紹介。ライトは浮世絵との出会いに触発されて、それまで規範とされてきたボザール様式の建築図面とはまったく異なる、余白を大きくとったり近いものを拡大して描く独特な構図に見られるような新しい図面の描き方を考案した。セクション2「「輝ける眉」からの眺望」では、代表作「落水荘」をはじめ、プレイリー・ハウスの代表作「クーンリー邸」、「ロビー邸」、また日本での作品「山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)」「小田原ホテル計画案」などを紹介。ライトが実践した環境や気候に適った、人の生活を豊かにする有機的建築を考察する。セクション3「進歩主義教育の環境をつくる」では、家庭生活や教育のあり方の変革に取り組んだ女性運動家たちとライトとのネットワークを掘り下げる。シカゴ郊外のオークパークの初期の自邸とスタジオは、建築の実験と、家庭生活や職場環境の近代化に対応し増改築が重ねられ、設計室や幼児教育のためのプレイルームを備えていたが、ここでは初期の有能な女性スタッフ、マリオン・マホニーが活躍した。また、施主のクィーン・クーンリーはライトによる建築で、近代的な教育理念に基づく「クーンリー・プレイハウス幼稚園」を実現。帝国ホテル設計のために滞在した日本では、ライトは羽仁もと子の依頼で「自由学園」を手がけた。

 


フランク・ロイド・ライト《ドヘニー・ランチ宅地開発計画案(カリフォルニア州ロサンゼルス)1923年頃 透視図》コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵 The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)


《フレーベル恩物 第5恩物》考案:フリードリッヒ・フレーベル、製作:ミルトン・ブラッドレー、製作年不詳、 青森県立美術館蔵

 

セクション4「交差する世界に建つ帝国ホテル」では、図面、写真、家具、かつて帝国ホテルの一部を構成していたテラコッタや大谷石のブロックなど、さまざまな資料の展示を通じて、日本に延べ3年以上滞在しながら帝国ホテル(建設期間1913-23年)を取り上げる。出品される帝国ホテル模型は、ライトとの深い交流があった京都帝国大学教授(現・京都大学)の武田五一に贈られた原作模型を、武田ゆかりの京都大学と京都工芸繊維大学が連携し、京都工芸繊維大学KYOTO Design Labの最新の技術力で複製。3Dスキャン計測データを用いた3Dプリントレプリカを公開する。また、同時期の1913年から1914年にかけてシカゴで設計した娯楽施設「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも比較展示。セクション5「ミクロ/マクロのダイナミックな振幅」では、ライトが生涯にわたって抱いたコンクリートへの関心と、ユニバーサルな建築システムの探求、またそのシステムを用いた住宅を紹介する。テキスタイル・ブロック・システムによるミラード夫人邸「ミニアチューラ」からコミュニティ全体の設計への応用例「ドヘニー・ランチ宅地開発計画」まで、迫力あるドローイングを出品するほか、ユニット・システムの実践例であるユーソニアン住宅の原寸モデルを再現する。

 


フランク・ロイド・ライト《ジョンソン・ワックス・ビル本部棟 中央執務室の椅子》1936年頃、豊田市美術館蔵


フランク・ロイド・ライト《大バグダッド計画案(イラク、バグダッド)1957年 鳥瞰透視図 北から文化センターと大学をのぞむ》コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵 The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 

セクション6「上昇する建築と環境の向上」では、水平方向への広がりが印象的なライト建築ですが、一方、早くから新しい工学・構造技術を開拓していたライトの高層建築を取り上げる。ライトは都市機能をビルの中に集約させることで都市の無秩序な拡大を抑止し、豊かな自然環境と生活が実現できると考えていた。セクション7「多様な文化との邂逅」では、ライトを形作った多様な文化との出会いと交流に着目。ゴルフ文化と先住民の建築の実践を融合させたナコマ・カントリー・クラブ計画案、ヴェネツィアの運河沿いに計画したマシエリ記念学生会館、イスラム文化との出会いから生まれた美しい都市像としての大バグダッド計画などを取り上げる。展覧会の最後には、スペインの建築家、デイヴィッド・ロメロがCGアニメーションで表現した、田園地帯に広がる生活と労働のラディカルな再構築であるブロードエーカー・シティ構想を紹介する。

会期中には、兵庫県立大学環境人間学部教授の水上優による講演会「ライトから日本へ/日本からライトへ」のほか、本展企画監修者のケン・タダシ・オオシマによるオンライン講演会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」の動画公開(1月15日から1月22日まで)などを実施する。

 

関連イベント
講演会「ライトから日本へ/日本からライトへ」
2024年1月27日(土)14:00-15:30(開場:13:30)
講師:水上優(兵庫県立大学環境人間学部教授)
会場:パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
定員:150名(要予約)
料金:無料(要展覧会観覧券)
※申込方法は公式ウェブサイトを参照

オンライン講演会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」
動画公開日時:2024年1月15日(月)10:00-1月22日(月)10:00
講師:ケン・タダシ・オオシマ(本展企画監修者、ワシントン大学建築学部教授)
※事前登録不要、無料配信
※申込方法は公式ウェブサイトを参照

学芸員によるスライドトーク
2024年1月26日(金)16:00-
2024年2月4日(日)14:00-
会場:パナソニック東京汐留ビル 5階ホール
定員:50名(先着順、予約不要)
料金:無料(要展覧会観覧券)

 


巡回予定
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2023年10月21日(土)-12月24日(日) ※既に終了
豊田市美術館
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2024年3月20日(水・祝)-5月12日(日)
青森県立美術館

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