イメージ・メイキングを分解する @ 東京都写真美術館


タマシュ・ヴァリツキー《二眼レフカメラ》〈想像のカメラ〉より 2017/2018年 コンピュータ・グラフィック 作家蔵

 

イメージ・メイキングを分解する
2022年8月9日(火)– 10月10日(月・祝)
東京都写真美術館
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(木・金は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日休館)
企画担当:多田かおり(東京都写真美術館学芸員)
展覧会URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4276.html

 

東京都写真美術館では、同館が収蔵するイメージ・メイキングのためのさまざまな装置、さらにイメージ・メイキングの技術の仕組みや道具に注目し、標準化されたイメージへの批評を試みてきた国内外のアーティストの作品を紹介する展覧会『イメージ・メイキングを分解する』を開催する。

光を収束・発散させて像をつくる光学の原理を利用したカメラ技術は飛躍的な進歩を遂げ、いまや、スマートフォンやアクションカメラなどの進化したデジタルカメラの技術は日常生活に浸透し、光学技術を介して生成されたイメージはオンラインを中心に大量に溢れている。本展では、絵画、写真、映画、テレビなどの視覚表現や、脳内で見る夢や言葉にならない曖昧な印象、そして目に見えるものから心の中に浮かんだことまで、「イメージ」に形を与えることを、「イメージ・メイキング(image-making)」と呼び、写真や動画といったカテゴリーを超えた先にあるイメージ・メイキングの事例に注目する。

 


キノーラ(レンズつき、イギリス製)東京都写真美術館蔵


35㎜フィルムプロジェクター兼マジックランタン 東京都写真美術館蔵

 

本展冒頭では、東京都写真美術館の収蔵資料から、鏡やプリズムで投影された像を、画家が対象と見比べながら写しとる「カメラ・ルシーダ」や、動いていないものを動いて見せる仮現運動を利用した「ゾートロープ」、20世紀初頭に制作された35ミリフィルム映写機などの映像装置とともに、その一様ではないイメージ・メイキングの技術や原理を紹介する。以降、1960年代からコンピュータ・グラフィックスに取り組んだパイオニアで、哲学者・美学者であるマックス・ベンゼの「情報美学」の影響を受けたゲオルク・ネースフリーダー・ナーケ川野洋らが制作した版画のポートフォリオ〈Art Ex Machina〉(1972)、数理アルゴリズムによって創り出される数学の抽象的な世界に、合理的なだけではなく詩的なものを感じ取り、画像化して、平面や立体として切りとり、目に見える物理的実体にする木本圭子の作品、レンズを使った従来の光学原理とは異なる、ビデオや印刷で使用される視覚技術「画像走査(Scanning)」を用いた藤幡正樹の《ルスカの部屋》などを紹介する。

 


フリーダー・ナーケ《無題(ウォークスルー・ラスター)》〈Art Ex Machina〉より 1972年
シルクスリーン 個人蔵 Copyright Gilles Gheerbrant 1972/2022


木本圭子《Imaginry・Numbers》モデルBの分岐図 2012年 フィルム出力 作家蔵


藤幡正樹《ルスカの部屋》2004/2022年 インスタレーション [参考図版] 東京都写真美術館蔵

 

さらに、第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ ハンガリー館での個展経験を持つタマシュ・ヴァリツキーの作品を紹介する。ヴァリツキーはメーカーが製造する機材を、標準的な使い方をするだけでなく、そのテクノロジーを分解して分析し、カメラをはじめとする機械を通して作られた私たちの「普通の」視覚体験を問うような作品を制作してきた。本展では、作家自身が開発した「水滴遠近法」を用いた初期の代表的なコンピュータ・アニメーション《ザ・ガーデン(21世紀のアマチュア映画)》(1992)、19世紀に開花した数々の視覚・光学装置をベースに構想した「あり得たかもしれない」想像上の映像機器をコンピュータ・グラフィックス、コンピュータ・アニメーションでデザインした〈想像のカメラ〉(2016-2019)、作家自身の生活を取り囲んでいた、車、グラモフォン、ミシンといった機械の動作原理を描き出した〈機械たち〉(1989)を紹介する。

 


タマシュ・ヴァリツキー《ザ・ガーデン(21世紀のアマチュア映画)》1992/1996年 シングルチャンネル・ヴィデオ 作家蔵


タマシュ・ヴァリツキー《グラモフォン》〈機械たち〉より 1989年 コンピュータ・グラフィック 作家蔵

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