ベッドタイム・フォー・デモクラシー @ KAG


Bedtime for Democracy ©Winston Smith

 

ベッドタイム・フォー・デモクラシー
2022年6月27日(月)– 8月28日(水)
Cafe & BAR KAG(岡山県倉敷市阿知3丁目1-2)
https://hostel-kag.jp/
EEE(Education, Education and Education)プロジェクト:http://www.kuragei.com
開場時間:9:00–17:00
閉場日:日、7/9、7/13、7/23、8/20
主催:岸本佳子(BUoY)、川上幸之介研究室
キュレーション:川上幸之介研究室
協賛:株式会社クラビズ
展覧会URL:https://kuragei.com/?p=609
参加作家:レティシア・アグド、ヌオタマ・ボドモ、リジー・ボーデン、ブレッド&パペット シアーター、ナオミ・クライン、マーサ・ロスラー、ヘイニー・スロール、松本俊夫、ウィンストン・スミス、ウェンディ・ブラウン
※2022年9月に、北千住BUoY(東京)に巡回予定(日程は最下部に記載)

 

岡山・倉敷を拠点に展覧会やスクリーニング、レクチャーなど数々の企画を手がける倉敷芸術科学大学の川上幸之介研究室は、民主主義の在り方が問いただされる時代において、「民主主義をいかに抵抗の政治へと転換しうるか」という問いを、アーティスト、活動家、哲学者ら10組の実践とともに考察する展覧会『ベッドタイム・フォー・デモクラシー』を開催する。

本展タイトルは、アメリカ合衆国のパンクロックバンド、デッドケネディーズの1986年のアルバム『ベッドタイム・フォー・デモクラシー』に由来する。デッドケネディーズは同作で、「電気フェンスが必要な“祖国”と呼ばれる収容所」の中で「バビロンの蜃気楼やベルトコンベアのような肉弾戦を生きている」と叫び、民主主義と資本主義の分かち難い共犯性を歌った。また、そのアルバムタイトルは、当時同国の大統領だったロナルド・レーガンが俳優時代に主演した1951年のコメディ映画『Bedtime for Bonzo』を捩ったものだが、デッドケネディーズは、レーガノミクスをはじめとして、新自由主義、戦争、メディアの氾濫、娯楽産業(余暇と消費)、マッチョイズムといったものへの見せかけの反抗を糾弾する。同時に、そのタイトルは、難民やクィアへの擁護といった周縁化されるものへの配慮をも示唆している。

 


Birdcatcher In Hell ©Bread Puppet Theater


The Hour of Liberation Has Arrived ©Heiny Srour

 

このような観点を踏まえつつ、本展では、その声をかき消され、疎外された周縁の声を引照し、民主主義の政治的神話の綻びを暗示した作品群、また、地政学的な観点から、民衆の不服従を起点とした集団の内部における権力の分散や、共有を照射した作品を幅広い領域から取り上げ、新自由主義の諸原理が民主から奪い去った主権を、いかにして奪還できるのかを模索する。

出品作品には、デッドケネディーズのロゴやレコードジャケットのアートワークでも知られるウィンストン・スミスによる作品群、松本俊夫が日本労働組合総評議会の依頼を受けて制作した《安保条約》(1959)のほか、ピーター・シューマンが1963年に設立した大小さまざまな人形を使って政治的な演劇を創作したブレッド&パペットシアターが、ベトナム戦争下のソンミ村虐殺事件とその後の軍法会議とその結末をめぐる不公正を基に、舞台化した《Birdcatcher In Hell》(1971)、オマーン解放人民戦線による英米の植民地主義への闘争と解放を描いたヘイニー・スロールの《The Hour of Liberation Has Arrived》(1974)、マーサ・ロスラーがファッション雑誌「Vogue」のページをめくりながら、そこに表象されるものについて問いかける《Martha Rosler Reads Vogue》(1982)、平和的な社会主義革命から10年後のアメリカ合衆国という虚構の世界を舞台に、革命においても解消されることのなかったジェンダー、人種、階級に対する差別からの解放を、地下ラジオ局を拠点に目指す女性たちを、フィクションやニュース、ドキュメンタリーなどを織り混ぜて描き出したリジー・ボーデンの《Born in Flames》(1983)といった1970年代、80年代に制作された作品群が中心をなす。

 


After The Revolution ©Leticia Agudo


Afronauts ©Nuotama Bodomo

 

同時に、サパティスタ運動における先住民マヤ女性の役割と影響を取材した映画監督のレティシア・アグドの《After The Revolution》(2008)や、ヌオタマ・ボドモが東西冷戦下における米ソ間の宇宙開発競争下に、両国に先駆けて月面着陸を目指したザンビアの実際の出来事を元に創作したスペキュラティブ・フィクション《Afronauts》(2014)といった2000年代以降に制作された作品群も加わり、過去から現在にまでつながる問題系を明らかにする。さらには、『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』などの著書で知られるジャーナリストで活動家のナオミ・クラインが、「ウォール街を占拠せよ」の最中でスピーチを行なう様子を記録した《Naomi Klein Speaks at Occupy Wall Street, 10 June 2011.》(2011)も加わる。また、展覧会に合わせて制作されるカタログには、各参加作家や出品作品の説明のほか、『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』などの著作で知られる政治理論家、ウェンディ・ブラウンの論考「自由民主主義の終焉と新自由主義」も収録される。

KAG(倉敷)では、これらの作品を3期に分けて紹介する。詳細は、川上幸之介研究室のEEE(Education, Education and Education)プロジェクトのウェブサイトに掲載。

 


Naomi Klein Speaks at Occupy Wall Street, 10 June 2011. ©Naomi Klein

 


東京会場
2022年9月17日(土)-9月25日(日)
北千住BUoY(東京都足立区千住仲町49-11)
https://buoy.or.jp/
開場時間: 11:00–19:00

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