Viva Video! 久保田成子展 @ 東京都現代美術館


写真:トム・ハール デザイン:佐々木暁

 

Viva Video! 久保田成子展
2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
東京都現代美術館 企画展示室3F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし1/10、2/21は開館)12/28–1/1、1/11
企画:濱田真由美(新潟県立近代美術館 主任学芸員)
橋本梓(国立国際美術館 主任研究員)
西川美穂子(東京都現代美術館 学芸員)
由本みどり(ニュージャージー・シティ大学准教授/ギャラリーディレクター)

 

東京都現代美術館では、映像と彫刻を組み合わせた「ヴィデオ彫刻」で知られるヴィデオ・アートの先駆者のひとり、久保田成子の大規模な回顧展『Viva Video! 久保田成子展』を開催する。日本国内では約30年ぶり、没後初となる本企画は、2021年3月から新潟、大阪を巡回し、東京都現代美術館が最後の会場となる。

最新かつ文脈に沿った研究成果を踏まえた本展は、ニューヨークの久保田成子ヴィデオ・アート財団の全面的協力の下、渡米前の初期作品から、フルクサスでの活動やソニック・アーツ・ユニオンとの関わり、ヴィデオ・アートに取り組み始めた最初期の活動、代表作「デュシャンピアナ」シリーズに至るまで、久保田の仕事を多角的に紹介する。1992年の冬季オリンピックで銀メダルを獲得したフィギュアスケート選手、伊藤みどりをモデルにした《スケート選手》(1991–92 年)や夫ナムジュン・パイクの故郷の墓をモチーフにした《韓国の墓》(1993年)などは日本初公開、さまざまな作家との交流を示す写真や手紙といった資料の多くは世界初公開となる。

 


久保田成子《韓国の墓》1993年 久保田成子ヴィデオ・アート財団蔵
(新潟県立近代美術館での展示風景、2021年)撮影:吉原悠博


久保田成子《デュシャンピアナ:自転車の車輪1, 2, 3》と《三つの山》の展示風景(原美術館、1992年) 撮影:内田芳孝 Courtesy of Shigeko Kubota Video Art Foundation, ©Estate of Shigeko Kubota

 

久保田成子(1937-2015、新潟県生まれ)は、比較的自由な家庭環境で育ち、彫刻家を志して東京教育大学(現・筑波大学)で学ぶために上京する。卒業後は東京の前衛美術のコミュニティに参加するものの、女性アーティストの活躍の場が限られている状況に失望し、塩見允枝子とともに1964年にニューヨークへと旅立つ。時系列に沿った構成となる本展は、まず、新潟での生い立ちと渡米前の東京での活動(内科画廊での初個展や同時代のグループ音楽、ハイレッド・センター、オノ・ヨーコ、ナムジュン・パイクらとの関係)の紹介からはじまる。

続くパートでは、渡米した1964年以降のフルクサスでの活動や、最初の夫である作曲家デイヴィッド・バーマンを含むソニック・アーツ・ユニオンとの関わりに焦点を当てる。ニューヨークに渡った久保田は、フルクサスの代表であるジョージ・マチューナスと協働しながら、《フルックス・ナプキン》(1965)や《フルックス・メディシン》(1966)を制作、また、1965年の「永続的なフルックス・フェスト」でパフォーマンス《ヴァギナ・ペインティング》を発表している。

3番目のパートでは、生涯のパートナーとなるナムジュン・パイクとの共同生活から、ソニーのポータパックを入手し、ヴィデオというメディアに制作を移行していった時期を扱う。ひとりでヨーロッパを旅しながら撮影したヴィデオによる日記《ブロークン・ダイアリー:ヨーロッパを一日ハーフインチで》(1972)をはじめ、メアリー・ルシエなどの女性アーティストとのコラボレーションも紹介する。

 


久保田成子《デュシャンピアナ:階段を降りる裸体》1975-76/83年
 富山県美術館蔵(新潟県立近代美術館での展示風景、2021年)撮影:吉原悠博


久保田成子《ナイアガラの滝》1985/2021年 久保田成子ヴィデオ・アート財団蔵
(新潟県立近代美術館での展示風景、2021年)撮影:吉原悠博

 

4つ目のパートでは、「デュシャンピアナ」シリーズを含む、久保田の代名詞ともなったヴィデオ彫刻の誕生に焦点を当てる。久保田は1968年のマルセル・デュシャンとの偶然の出会いをきっかけに、デュシャンとジョン・ケージのチェス・コンサート「リユニオン」を題材とした音声記録付き作品集『マルセル・デュシャンとジョン・ケージ』(1970 年)を発表する。その後、デュシャンへのオマージュとして「デュシャンピアナ」シリーズの制作を開始。同シリーズのひとつ、《デュシャンピアナ:階段を降りる裸体》(1975-76/83年)は、階段を歩く女性ヌードモデルの動きを木製の階段の中に設置された4台のモニターに映し出したもので、デュシャンの有名な絵画を映像という媒体でウィットに富んだ解釈で再構成している。なお、同作はニューヨーク近代美術館が初めて収蔵したヴィデオ・インスタレーション作品。この時期、ドクメンタ6(1977)にも招待された久保田の評価は、ヨーロッパを含め国際的に高まっていく。

続くパートでは、水やモーター、プロジェクションによる動きといった要素を取り入れ、ヴィデオ彫刻が空間的にも時間的にも拡張していく過程を紹介する。ここでは、天井から下向きに吊るされた 3 台のモニターと、揺れ動く水で満たされたステンレス製の水槽で構成された《河》(1979-81年)、大小10台のモニターが組み込まれた構造物の前にシャワーが置かれ、滝のように水が滴り落ちる《ナイアガラの滝》(1985/2021年)など、鑑賞者を複数の視点からの相互作用と思索に誘う作品が並ぶ。

1991年にはアメリカ初の回顧展がニューヨークのアメリカン・ミュージアム・オブ・ザ・ムービング・イメージで開かれ、同展の一部は原美術館(1992)など国際巡回するが、1996年にパイクが脳梗塞で倒れたことで、久保田は作家としてのキャリアの中断を余儀なくされた。以降、2006年にパイクが亡くなるまでの10年間は障害のある夫を全面的にサポートし、その後の10年間は自らも病と闘いながら、パイクへの愛をテーマにしたユーモアのある作品を制作した。この間、パイクがリハビリする姿を映像で記録した《セクシャル・ヒーリング》(1998)を2000年に発表。パイクの死後、2007年にマヤ・ステンダール・ギャラリーで開催した『ナムジュン・パイクとの私の人生』が久保田にとって生前最後の個展となった。

 


久保田成子《セクシュアル・ヒーリング》1998年 Courtesy Electronic Arts Intermix (EAI), NY

 

関連イベント
シンポジウム、ギャラリートークなどを開催予定。詳細は決まり次第、公式ウェブサイトやSNSに掲載。

 

 


 

同時期開催
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2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
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