メヒコの衝撃―メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる @ 市原湖畔美術館


北川民次《メキシコ三童女》1937年、愛知県美術館蔵

 

メキシコ独立200周年
メヒコの衝撃―メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる
2021年7月10日(土)- 9月26日(日)
市原湖畔美術館
https://lsm-ichihara.jp/
開館時間:10:00-17:00(土曜・祝前日は9:30-19:00) 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、8/9は開館)、8/10
企画担当:前田礼(市原湖畔美術館館長代理)

 

市原湖畔美術館では、日本とメキシコの交流の歴史を紐解きながら、メキシコの歴史・風土・人・芸術に衝撃を受け、自身の表現に向き合ってきた8人のアーティストに焦点を当て、それぞれが惹きつけられた魅力とその体験を解き明かす展覧会『メヒコの衝撃―メキシコ体験は日本の根底を揺さぶる』を開催する。

1920、30年代に旧宗主国スペインやヨーロッパの影響を脱し、独自の芸術を志した「メキシコ・ルネサンス」。本展ではまず、その只中でアメリカ合衆国からメキシコに渡り、民衆の芸術を求める壁画運動の代表的な人物、ホセ・クレメンテ・オロスコやディエゴ・リベラ、ダビッド・シケイロスらと交友を持ち、トラルパンの野外美術学校で児童美術教育に携わり、タスコ野外美術学校校長も務め、メキシコ壁画運動の思想を日本に持ち帰ったとされる北川民次(1894-1989)、1955年に東京国立博物館で開かれた『メキシコ美術展』に衝撃を受けて以来、たびたびメキシコを訪れ、生涯にわたって古代文明からの示唆を現代社会や現代人への問いかけとして描きつづけ、メキシコを題材とした情熱的な作品を数多く遺した利根山光人(1924-2017)、30年代のパリ時代にメキシコを知り、60年代に現地を訪れて、オテル・デ・メヒコのために巨大壁画《明日の神話》(現地で行方がわからなくなったのちに2003年にメキシコシティ郊外で見つかり、現在は渋谷駅に設置されている)を制作するなどメキシコとの関わりも深い岡本太郎(1911-1996)の作品から、メキシコ・ルネサンスが3人に与えた影響を壁画運動、野外美術学校、版画運動など、さまざまな視点から探っていく。

 


河原温 カスパー・ケーニッヒ氏に宛てた絵葉書、1968年5月10日、《I GOT UP》(1968-79)より
©One Million Years Foundation


スズキコージ《死者の日》2000年

 

コンセプチュアル・アートを代表する存在として国際的に知られた河原温(1932-2014)は、現地での活動内容はほとんど知られていないが1959年から62年までメキシコに滞在し、1968年にも同地を再訪している。ニューヨークに拠点を移す以前、前述した『メキシコ美術展』に対して、それをエキゾチズムや新しいものとして盲目的に魅了する危惧を抱きながらも、「西欧近代の硬化した抽象的原理をもって人間性の昂揚、あるいは自由を表明してきた多くの近代主義者にとって、このメキシコ美術展ほど驚嘆に値するものはないだろう」と『美術批評』(1955年10月号)に記している。本展では、《I Got Up》シリーズのはじまりとなったメキシコからカスパー・ケーニッヒに宛てた絵葉書をはじめ、日本時代の作品、河原がスペインに渡るのを支援するために瀧口修造らが開催した作品頒布会の資料などを展示する。

ボスニア炭鉱を撮った長編第一作《鉱 ARAGANE》(2015)に続き、メキシコのユカタン半島北部の洞窟内の泉セノーテを舞台にその原風景や集団的記憶に迫った《セノーテ》(2019)も高い評価を受ける小田香(1987年生まれ)は、《セノーテ》を映像インスタレーションへと展開した《Day of the Dead》(2021)を発表。絵本、絵画、映画劇場ポスター、ライブペインティング、ワークショップなど、多彩な表現活動で知られるスズキコージ(1948年生まれ)は、1995年にメキシコに魅せられて以来、同地の「死者の日」の祭りに何度も通い、強烈な極彩色で魔法画を描きつづける。漫画家の水木しげる(1922-2015)もまたメキシコに魅了されたひとりで、1997年に75歳で2週間にわたって同地を旅し、旅行記『水木しげるの大冒険、幸福になるメキシコー妖怪楽園案内』を出版している。本展には、水木が蒐集した膨大な仮面コレクションと妖怪画などを出品。

また、市原湖畔美術館がその作品を所蔵する深沢幸雄(1924-2017)は、1963年にメキシコ国際文化振興会の招へいで銅版画の指導のため滞在。滞在はそれまでのモノクロームから鮮やかな色調へと作風を大きく変えるきっかけとなり、その後もメキシコの街や人々が持つ活気、古代文明に由来する遺跡に魅了され、メキシコをテーマとした多くの作品を遺した。本展では、その作品のほか、ラッパーの田我流がスタジオ石の向山正洋(MMM)と共作した映像「深沢幸雄が見たメキシコ」も公開する。本展ではこれらの作品に加え、『メキシコ美術展』をはじめ、日本とメキシコの交流、メキシコの美術・文化・歴史に関する文献、映像資料なども出品する。

 


深沢幸雄《アステカの旅》1969年


小田香《Day of the Dead》2021年

 

関連イベント(※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況により、変更、中止となる場合あり)
スズキコージ・ライブペインティング
2021年7月10日(土)- 7月11日(日)
会場:市原湖畔美術館 多目的ホール
※時間は公式ウェブサイトを参照、無料(入館料は別途)

トークショー「薄墨色の智慧のくに──〈メヒコ〉の衝撃を語る」
出演:今福龍太(文化人類学者)
2021年7月17日(土)14:00-15:30
定員:40名
参加費:1,000円(入館料は別途)
※事前申込制(詳細は公式ウェブサイトを参照)

映画上映会『セノーテ』(小田香監督)
2021年8月1日(日)①12:30-14:00、②15:00-16:30 ※上映時間:1時間15分
定員:各回30名
※事前申込制(詳細は公式ウェブサイトを参照)

メヒコ・デイ
2021年8月28日(土)11:00-17:00
メキシコの物産販売や、音楽、ワークショップを体験

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