ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island −あなたの眼はわたしの島− @ 京都国立近代美術館


 

ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island −あなたの眼はわたしの島−
2021年4月6日(火)- 6月13日(日) 6月20日(日)(※会期延長)
京都国立近代美術館
https://www.momak.go.jp/
開館時間:9:30-17:00 入場は閉館30分前まで
休廊日:月(ただし、5/3は開館)
企画担当:牧口千夏(京都国立近代美術館主任研究員)
※展示室内は靴を脱いでの鑑賞となるため、靴下と靴袋を持参の必要あり

 

京都国立近代美術館では、ジェンダーや身体、自然との共生など現代社会に通底するテーマを扱いながら、美術における映像表現の可能性を切り拓いてきたアーティスト、ピピロッティ・リストの約30年間の活動の全貌を紹介する展覧会『ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island −あなたの眼はわたしの島−』を開催する。

ピピロッティ・リスト(1962年スイスザンクト・ガレン州グラブス生まれ)は、初期のシングルチャンネルの短編ヴィデオから展示空間におけるマルチチャンネルの映像インスタレーション、屋外空間での大規模なプロジェクションなど、技術の発展を積極的に取り入れたさまざまな映像表現を展開している。1980年代にウィーン応用美術大学、バーゼル造形学校で学んだリストは、知人の音楽バンドの舞台デザインや映像制作を手がけ、同時期に制作した短編ヴィデオ作品《わたしはそんなに欲しがりの女の子じゃない》(1986)をスイスのゾロトゥルン映画祭に出品、次第に同作をはじめとする短編ヴィデオ作品を美術館やギャラリーで発表していく。1997年の第47回ヴェネツィア・ビエンナーレで、《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に(Ever Is Over All)》(1997)と《わたしの海をすすって(Sip My Ocean)》(1996)のふたつの映像が重なり合うように投影したインスタレーションを発表し、プレミオ2000(若手作家優秀賞)を受賞。水色のワンピースと赤い靴を身につけた女性が、街を歩きながらシャグマユリ(クニフォフィア)の花の形をしたハンマーで、楽しそうに車の窓ガラスを次々と叩き割っていく様子がスローモーションで映し出される《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》は、美術におけるフェミニズムの記念碑的作品として、数多くの展覧会に出品されている。リストは2005年には第51回ヴェネツィア・ビエンナーレにスイス代表として参加、カナル・グランデ沿いのサンスタエ教会を舞台に映像や音楽を駆使した没入型の空間をつくりだした。その後もニューヨーク近代美術館(2008)、ニュー・ミュージアム(2014)、チューリッヒ美術館(2014)、オーストラリア現代美術館(2016)、ルイジアナ近代美術館(2018)などで大規模な個展を開催。日本国内でも資生堂ギャラリー(2002)、原美術館(2007)、丸亀市猪熊弦一郎美術館(2008)で個展を開催し、瀬戸内芸術祭やPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015でもサイトスペシフィックな作品を発表している。

 


ピピロッティ・リスト《わたしの海をすすって(Sip My Ocean)》1996年 © Pipilotti Rist. Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine


ピピロッティ・リスト《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に(Ever Is Over All)》1997年、クンストハレ・チューリヒでの展示風景 Photo by Alexander Trohler © Pipilotti Rist. Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

 

本展のサブタイトル「Your Eye Is My Island −あなたの眼はわたしの島−」はリスト自身によるもので、リストは活動初期から一貫して人間の眼を「Blood-driven Camera=血の通ったカメラ」と呼んでおり、「眼」はその創作活動における重要なテーマのひとつ。また、「眼(アイ)」と「島(アイランド)」のような韻を踏んだフレーズは作品名にも好んで使われる表現であり、「顔にあるふたつの円形はまるで海に浮かぶ島のようだ」という比喩として受け取ることで、そこにリスト作品の身体と世界が奇妙につながる感覚をみることもできる。近年は美術館の展示室をリビングルームのように演出し、身体を解放しながら作品鑑賞できる大規模なインスタレーション空間を手がけるリスト。本展では、観客は靴を脱いで、鑑賞を体験することになる。

なお、京都国立近代美術館では本展出品作品《イノセント・コレクション》のための透明あるいは白色の廃材の提供を呼びかけている。リストは廃材と映像を組み合わせた作品を数多く制作しており、その代表作として知られる《イノセント・コレクション》も、さまざまな用途をもって制作された容器や紙片が、ひとたび用途を失いゴミとして捨てられると、環境破壊の一因になってしまうという不都合な事実に目を向けた作品。応募締め切りは3月20日まで。詳細は公式ウェブサイトを参照。また、本展は2021年夏に水戸芸術館現代美術ギャラリーに巡回。

 


ピピロッティ・リスト《4階から穏やかさへ向かって》2016年 © Pipilotti Rist. Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine


ピピロッティ・リスト《色とりどりの幽霊》2020年(新作)© Pipilotti Rist.
Courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

 

 


 

巡回情報
2021年8月7日(土)- 10月17日(日)※予定
水戸芸術館現代美術ギャラリー
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/

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