もつれるものたち @ 東京都現代美術館


アレクサンドラ・ピリチ《パルテノン・マーブル》2017年(カディストでの展示風景)Photo: Ouidade Soussi-Chiadmi

 

カディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展
もつれるものたち
2020年6月9日(土)- 9月27日(日)
2020年3月14日(土)- 6月14日(日)
東京都現代美術館
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00-18:00 入場は閉館の30分前まで
休館日:月(5/4は開館)、5/7
企画担当:崔敬華(東京都現代美術館)、エロディ・ロワイエ(カディスト・アート・ファウンデーション)

 

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から開幕が延期となっているが、東京都現代美術館では、2016年から連携を重ねてきたパリとサンフランシスコに拠点を置くカディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展『もつれるものたち』の開催を予定している。

共同企画相手のカディスト・アート・ファウンデーションは、「作品を通じて現代の重要な問題を提起し、進歩的な社会の創造に貢献する」という信条を掲げ、世界各地でアーティスト、キュレーター、文化組織と協働し事業を展開してきた。東京都現代美術館との連携は、本展のキュレーションを手がける崔敬華とエロディ・ロワイエが共同企画した『MOTサテライト2017 秋:むすぶ風景』内の展覧会『ないような、あるような』(東京藝術大学 アーツ・アンド・サイエンス・ラボ、2017)にはじまり、昨年は本展出品作家でもある藤井光の個展『Les nucléaires et les choses』(カディスト、パリ、2019)を実現している。

一連の連携の集大成とも言える本展では、世界各地から集まった12人/組のアーティストによる人類学、考古学、歴史編纂を思い起こさせるようなさまざまなアプローチを通じて、人間の生活と不可分の関係を持ち、各時代や社会の流れによって異なる意味や価値、記憶を運んできた「もの」の存在に着目し、そこから生まれてくる新たな視点から現代の批評を試みる。

 


藤井光《Fukushima Cultural Property Center》2019年(参考図版)


ジュマナ・マナ《Cache (Insurance Policy)》2018-2019年(展示風景)Photo: Luca Guadagnini

 

また、本展は、先のドクメンタやミュンスター彫刻プロジェクトに参加したデイル・ハーディングアレクサンドラ・ピリチをはじめ、近年の国際展や映画祭で活躍するアーティストが多数含まれている点にも注目が集まる。オーストラリア先住民族のルーツを持つハーディングは、自らのコミュニティにおいて語られてこなかった歴史、とりわけ高齢となった母方の親族たちが同国のクイーンズランド州政府の行政下で経験した社会的、政治的現実に光を当てるインスタレーションなどを発表し、現代オーストラリアの統治システム、権力、行為者性に対する問題提起を行なっている。また、ピリチは歴史の編纂、意味の生成、見えない権力組織といったものを具現化するためのアクションやパフォーマンス作品で知られ、ミュンスター彫刻プロジェクトでもヴェストファーレン平和条約の場となった旧市庁舎を舞台にパフォーマンスを試みている。ハーディング、ピリチ、そして、ピオ・アバドリウ・チュアンカプワニ・キワンガジュマナ・マナトム・ニコルソンは日本初展示。また、日本国内での展示経験を持つソウルを拠点とするアーティスト・デュオのミックスライスは、近年、都市化やエネルギー開発によって移植された植物たちの軌跡を辿り、資本主義的な力に左右されるもう一つの存在に目を向けつつ、それらが自ら回復し進化し続ける力を見つめており、2016年には韓国美術家賞も受賞している。こうしたさまざまな地域で活動するアーティストによる、いくつもの現実や歴史が複雑に交差する現代を軸に、異なる時代、領域、視点を行き来する作品同士が、展覧会を通じて、「もの」たちの予期せぬ交わりやネットワーク、潜在的な親密さや緊張関係を垣間見せながら、私たちの内と外にある閉じた領域や、静的なシステムを開いてゆくための視座をもたらすだろう。

予定されていたいくつかのイベントは残念ながらすでに開催中止となってしまっているが、会期中には第59回MOT美術館講座として、出品作家の藤井光や福島県・双葉町教育委員会の吉野高光などをゲストに迎えた「核と物」上映会&トークや、キュレーションに焦点を当てた国際シンポジウム「場を創造するキュレーション」も予定している。

 

出品作家
ピオ・アバド、リウ・チュアン、藤井光、デイル・ハーディング、磯辺行久、岩間朝子、カプワニ・キワンガ、ジュマナ・マナ、ミックスライス、トム・ニコルソン、スーパーフレックス&ザ・プロペラ・グループ、アレクサンドラ・ピリチ

 


岩間朝子 スタジオでの様子(参考図版)

 

関連イベント
アーティスト&キュレーターズ・トーク ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から開催中止。
参加アーティスト(予定):トム・ニコルソン、ディル・ハーディング、アレクサンドラ・ピリチ、岩間朝子、藤井光、ミックスライス、ほか
2020年3月14日(土)15:00-16:30
会場:東京都現代美術館 展示室内(集合場所:展示室入口)

5人のパフォーマーによるアレクサンドラ・ピリチ作品「パルテノン・マーブル」
2020年3月14日(土)、3月15日(日)11:00-15:00 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から開催中止。
4月5日(日)、5月3日(日)、5月4日(月、祝)、6月6日(土)、6月7日(日)13:00-17:00
会場:東京都現代美術館 展示室内

担当キュレーターによる展覧会ツアー ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から開催中止。
2020年3月22日(日)14:00-15:00
会場:東京都現代美術館 展示室内(集合場所:展示室入口)

第59回MOT美術館講座「核と物」上映会&トーク
登壇者(予定):吉野高光(双葉町教育委員会教育総務課総括主任主査兼生涯学習係長)、藤井光(アーティスト)ほか
2020年4月18日(土)14:00-16:00
会場:東京都現代美術館 講堂
定員:200名(当日先着順)
※手話通訳付
国際シンポジウム「場を創造するキュレーション」(仮題)
2020年6月13日(日)14:00-17:00
会場:東京都現代美術館 講堂
定員:200名(当日先着順)

ガイドスタッフ(ボランティア)による展覧会ツアー、手話を使ったギャラリーツアーなどを含む詳細は公式ウェブサイトを参照

 


 

同時開催
オラファー・エリアソン
2020年3月14日(土) 未定– 6月14日(日)
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から会期変更。

ドローイングの可能性
2020年3月14日(土) 未定– 6月14日(日)
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から会期変更。

コレクション展
2020年3月14日(土) 未定– 6月14日(日)
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から会期変更。

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