フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると @ ワタリウム美術館


フィリップ・パレーノ《マーキー》2016年 Courtesy the artist and Esther Schipper, Berlin, Photo © Andrea Rossetti

 

フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると
2019年11月2日(土)- 2020年3月22日(日)
ワタリウム美術館
http://www.watarium.co.jp/
開館時間:11:00-19:00(水曜は21:00まで)
休館日:月(祝祭日除く)、年末年始(12/31-1/3)

 

展覧会それ自体をひとつのメディアとして捉えた革新的な試みや、ほかのアーティストや他分野の専門家、市民との協働による創作など、90年代より現在に至るまで同時代の表現の可能性を拡張してきたアーティストのひとり、フィリップ・パレーノ。ワタリウム美術館では、パレーノの新旧の代表作や過去に同館で発表した作品などを混えた展示構成を通じて、展覧会に訪れることが、空間的・時間的境界や感覚的経験を伴う唯一無二の体験となることを目指す。

フィリップ・パレーノ(1964年アルジェリア、オラン生まれ)は、展覧会を一連の出来事が展開していく「台本のある空間」というひとつのメディアとして捉え、展示の構築を制作プロセスの中心に据えることで、鑑賞体験を根本的に再定義してきた。光や音、プロジェクション、パフォーマンスといった動的な要素を積極的に取り入れた展示は、同じく動的な存在である観客と相互に依存しながら、常に変化し続けるものとなる。2013年にパレ・ド・トーキョーでひらかれた『この世の外ならどこへでも』は、同館の巨大な空間全体を根本的に変えてよいという自由を得たパレーノが、新旧の作品、音楽、光、映像などの各要素で展示空間を「編曲」し、建物そのものを、生きた、進化しつづける有機体へと変貌させた試みとして高い評価を受けた。パレーノの実践で欠かせないコラボレーションという側面において、ピエール・ユイグとともに日本のデザイン会社から「アン・リー」という架空のキャラクターを購入し、ドミニク・ゴンザレス=フォルステルら複数のアーティストにより作品制作を展開したプロジェクトや、ダグラス・ゴードンと共同監督した長編映画『ジダン 神が愛した男』などが広く知られる。また、2007年にはマンチェスター・インターナショナル・フェスティバル(MIF)で『郵便配達員の時間』のキュレーションをハンス・ウルリッヒ・オブリストとともに手がけるなど、その実践はキュレーションの領域にも影響をもたらしている。1980年代にグルノーブル国立高等美術学校(1983年〜88年)とパレ・ド・トーキョー附属造形美術高等学校(1988年〜89年)で学んだパレーノは、1990年の第44回ヴェネツィア・ビエンナーレでニコラ・ブリオーの企画したフランス館展示に参加。以来、7度のヴェネツィア・ビエンナーレ企画展への参加をはじめ、同時代を代表するアーティストのひとりとして国際的に活躍。近年も『H {N)Y P N(Y} OSIS』(パーク・アベニュー・アーモリー、ニューヨーク、2015)、『ヒュンダイ・コミッション・いつでも』(テート・モダン・タービンホール、ロンドン、2016)、『シンクロニシティ』(ロックバンド・アート・ミュージアム、上海、2017)、『タイム・カラード・スペース』(セラルヴェス現代美術館、ポルト、2017)、『フィリップ・パレーノ』(グロピウス・バウ、ベルリン、2018)など、数々の個展を各地で開催している。日本国内では、『共生にむけてのフーガ エゴフーガル:イスタンブールビエンナーレ東京』(東京オペラシティ アートギャラリー)、横浜トリエンナーレ2008、岡山芸術交流2016で作品を発表している。

 


フィリップ・パレーノ《吹き出し(白)》1997年 Exhibition view: A Time Coloured Space, Museu Serralves, Porto, 2017, Collection FRAC Grand Large — Hauts-de-France, Dunkirk Photo © Andrea Rossetti

 

「オブジェが語りはじめると」との副題が付された本展では、以下の作品群が展示空間に配置され、展覧会というメディアの現在進行形の開かれた可能性を提示する。そこには、漫画で使われる吹き出しのかたちをした風船が天井に張りついた《吹き出し(透明)》をはじめ、《ハッピー・エンディング》、《話す石》といった90年代より変化を遂げながら展開してきた作品だけでなく、ワタリウム美術館でヤン・フートのキュレーションでひらかれた『水の波紋展』(1995)のためにパレーノが制作した、氷でできた雪だるま《リアリティー・パークの雪だるま》。また、2006年の初制作以来、50以上ものバージョンがつくりだされてきた、映画館や劇場のエントランスに設置された白熱光が点滅する庇を参照した《マーキー》や、自ら指揮したフィラデルフィア美術館でのグループ展『花嫁のまわりで踊る』のために構想し、発表して以来、数度の変化を遂げながら、第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2017)などでも発表されてきた《花嫁の壁》、昨年のベルリンでの大規模個展の際に構想されたアイリスの模様を燐光性インクで印刷した《壁紙 マリリン》も出品される。

 


フィリップ・パレーノ《ハッピー・エンディング》2014-15年 Collection Philippe Parreno, Paris, Photo © Philippe Parreno


フィリップ・パレーノ《リアリティー・パークの雪だるま》1995年 Courtesy the artist and Esther Schipper, Berlin, Photo © Philippe Parreno

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